ゆっくり、お部屋飲みとかいいですよねって、それくらいは簡単。
「椅子がないから、ここに座っていいですか?」
自分でもあざとい、と思う。
Sさんが目を伏せて「どうぞ」と口ごもって、それが可愛らしいなと思えたから、たぶん私は彼をちゃんと好きになれる。
「休みの日は何してるんですか?」
ベッドの近くで座る彼に話しかけると、一瞬だけ視線を向けた後に「ちょっと前まではラーメンの食べ歩きとかしてたけど、友達もみんな結婚しちゃってさ。最近は持ち帰った仕事してばかりかも」と、全然違うほうを見て、はにかんでる。
…じれったい。
これまでの男なら、このくらいですぐ次のアクションに移ってたのに。