食通から絶大な信頼を集める、芸能界最強のグルメ王・寺門ジモン(ダチョウ倶楽部)

アマゾンでひっそり売られている、めくってもめくっても肉の写真ばかりのカレンダーがある。肉好きの通たちの間ではバイブル的な存在として崇められている、このカレンダーのタイトルは『MEAT JOURNEY』。

そう、このエッジの効きまくったカレンダーを作った人こそ、芸能界最強のグルメ王・寺門ジモン(ダチョウ倶楽部)だ。

つい先日、このカレンダーに出会い衝撃を受けた食いしん坊の記者はいても立ってもいられなくなり、新作カレンダーの発売シーズンでもないのに突撃取材を敢行した!

―お恥ずかしい話ですが、先日初めて、この肉だらけのカレンダーの存在を知り、感銘を受けまして。いろいろ調べさせていただいたのですが、すでに発売開始から4作目になるそうですね。少数ロットの自費出版だとか…。

寺門 変な時期にカレンダーの取材に来るなーと思ったよ(笑)。そう、確かに自費でやってる。だって出版社に企画を持ち込んだってやってくれないだろうし、企画を持ち込もうと思わない。

出版社が絡むと、こういった方向性のカレンダーは作りにくいんですよ。商売になると、出るのを遠慮する店もあるし、売らなきゃいけないから。日本中の書店に並んで、ホントに欲しい人じゃなくて、買わなくてもいい人が買って最後に捨てられたりするでしょ? そういうのイヤだなと思って(笑)。

これはね、寺門ジモンが1年間食べたお肉のバカみたいなカレンダーです。単に異質物を作ってるだけだから。あなた、異質を作るウザい人に取材に来ちゃったんですよ。これ、普通の人、作ります? そのお金があったら他に楽しいことするでしょ? 僕はこれが欲しいから作ったの。

―確かに「僕はこれが欲しいから作った」という気迫がビンビン伝わってきます。普段はこのカレンダーを仕事先などでプレゼントすることもあるとか…。

寺門 そう、名刺代わり! 嫌がらせです(笑)。海外旅行のお土産で良いものをもらったら嬉しいけど、このカレンダーは『何これ? 要らないよ!』と思うお土産と同じ。土田(晃之)君曰く「飾る場所がないカレンダー」です(笑)。

―ちなみに、寺門さんご自身は部屋のどこに飾っているんですか?

寺門 僕は置いてあります(笑)。部屋に置いて必要なことを書きこんでノートの代わりに使っているんですよ。自分のために作っているんだから、そういう使い方もありでしょ!

プロのカメラマンに美味しい写真は撮れない

―ホントに「飾る場所がないカレンダー」じゃないですか(笑)!

寺門 ところでコレ(日付部分にある小さなマークを指しながら)、なんだかわかります?

―クワガタのマークはわかりますけど…円形のは??

寺門 黄色いのは満月です。クワガタは新月で月がない状態の灯火採集が一番採れるんですよ。クワガタ好きの自分用のカレンダーという側面もあるんで、密かにそういう情報もしっかり入れ込んであります! これを見て、何も気づかない人には買ってもらわなくていいんです(笑)。

―名店の頑固おやじみたい(笑)! 肉の写真も大きく、二つ折りのカレンダーを開くと、なんとB3もありますね。いやらしい話、制作費は結構かかったんじゃないですか?

寺門 実はかかってないんですよ。だから年賀状を自分の写真で作るのと同じ感覚です。もちろんサイズが大きいから年賀状よりお金はかかってるけど、DTP以外は全部自分。テキストも自分で書いているし、写真も自分で撮ったものから選んでるし。

―全てを自身でやってらっしゃるとはビックリですよ。私なんか、年賀状ですら業者に発注してしまいそうになるのに…。さすがに写真はプロが撮っているのかと想像していましたが…。

寺門 写真は普段から引き伸ばしても大丈夫な画素数で撮ってるよ。実はね、プロを入れたら美味しい写真は撮れないんですよ。できあがった肉はその瞬間を閉じ込めることが大切で、照明を当てている間に肉の色が変わるからね。

仮にカメラマンを入れて、写真撮影の準備を整えて肉の写真をきちんと撮ったとすると、今度は普段、お店で見ている画じゃなくなってくる。本当のことにこだわると、普通に食べに行った時の明るさで見る肉を表現することが大事で、そういう理由から僕が行って食べた時のスナップ写真を使っているんですよ。

―そ、そこまでこだわっていたんですね。そんな中でも、美味しそうに撮るコツをひとつ教えてください!

寺門 ないです(笑)。「美味しく食べて!」と思って出した料理人の気持ちを、ただ写真に収めているだけなんですよ。そのことをわかっていたら、あまり汚くも撮らないでしょう。

例えば、8月に掲載してある『本とさや』さんの肉の写真だけライティングが違うでしょ。それはTVの収録中に撮ったからなんですけど、なぜ俺が収録中に撮るか知ってます? 普通、演者がいるロケ収録とは別の日に、お肉を撮るためだけにお店に行くんですけど、出てくる肉が違うんです。

もちろん良い肉なんですけど、質がちょっと落ちます。それは僕がいる撮影当日は様々な人間関係が重なって、ピン(ピンキリのピン)の肉が出されるからですよ。付き合いの長い店が多いから、僕が来るならとお店の人も生産農家の人もピンを選んでくる。それを俺はパチパチ撮る。だから、自然とおいしそうな画になるんです!

『月刊ウニ』を作ろうかなと思って…

―実に単純明快なコツだったんですね(笑)。つまり料理人や生産農家さんの“思いやり”までも写し込むわけですか!

寺門 毎回毎回、俺は食べ物を前にして思うことがあるんだけど、例えば、昨日はすごいウニを食べたんですよ。いい寿司屋が仕入れるようなやつ。それを居酒屋で食べられたんだから。それで『月刊ウニ』を作ろうかなと思って。ウニだけの本。とにかくすごいウニだったから、そこで撮った写真は『月刊ウニ』の表紙になるなぁと思ったり…。

あと『月刊アジフライ』も作れるよね。『月刊味噌汁』でもいいし…なんでもいいんですよ。「うまい」っていう感動があれば、アクションを起こしたくなるでしょ! そのくらいの感じでひとつずつ物事を見られるのに、みんな見てない。僕は見ているだけです。

ちなみに、カレンダーの後ろのページでは、書き込めるスペースを設けてあります。実際に食べた店の名刺や写真を12ヵ月分貼ることができるようになってて、「うまい」っていう感動を大事にしてもらって、あなたの2017年の肉メモリーを作ってください、と。

●後編⇒家畜商の資格まで持つ寺門ジモンが語る“赤身肉ブーム”の本質 「売るための言葉に踊らされちゃいけない」

寺門ジモン(てらかど・じもん)1962年生まれ、兵庫県出身。ダチョウ倶楽部で活躍するほか、『寺門ジモンの取材拒否の店』(フジテレビ)などTVや“旨い”を追求する会員制グルメサイト『食べマスター』にて、あらゆるグルメ情報を発信している。https://www.tabemaster.jp/ また、4月28日(金)にネイチャージモン主催の「ネイチャートークライブVol.36」が、東京・原宿アストロホールにて開催! 前売り予約、詳細は太田プロHPまで。http://www.ohtapro.co.jp/live/8933/

(取材・文/渡邉裕美 撮影/鈴木昭寿)