第7節のブルズ戦で、初出場・初トライを挙げたウォーレンボスアヤコ。日本代表の未来を担う選手たちが、サンウルブズで確実に成長している

満開の桜に囲まれた聖地で“日出(いず)る国の狼(おおかみ)”が歓喜に沸いた。

昨年から、世界最高峰の「スーパーラグビー」に参戦している、日本を本拠地とするサンウルブズ。1シーズン目は1勝しかできず、今年も善戦はするが白星に恵まれていなかった。

しかし、4月8日に東京・秩父宮ラグビー場で行なわれた第7節、優勝3回を誇る強豪ブルズ(南アフリカ)戦では、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ(HC)が掲げる「積極的に前に出る防御、キックを主体にしたスピードある攻撃」が機能。21-20で競り勝ち、今季初白星を挙げた。

2019年に日本で開催されるワールドカップ(W杯)に向けた強化として、今年のサンウルブズのメンバーは、大半が日本代表経験者および代表になりうる選手で構成されている。だが、ジョセフHCが「日本代表の選手は試合数が多い。ほかの国のベストな代表選手は年間、33試合くらいしか試合をしていない」と話すとおり、年間40試合以上をこなすこともある代表選手の出場数を制限し、休養を与えながら戦っている。

ブルズ戦でも、15年W杯組のSH(スクラムハーフ)田中史朗やFB(フルバック)松島幸太朗らがチームを引っ張ったが、今年からサンウルブズに加入し、南アフリカ遠征で成長した選手たちも躍動した。

前回のW杯で注目を集めた“海外出身選手”では、ニュージーランド(NZ)出身のCTB(センター)ティモシー・ラファエレがゲームキャプテンとして活躍した。大学時代、2部(当時)の山梨学院大でプレーするために来日し、現在はコカ・コーラに在籍する25歳。左足のキックとスキルに長(た)けた選手で、昨年11月には日本代表でもデビューを果たしている。山梨で初めて雪を見てビックリしたという青年は、ブルズ戦後に流暢(りゅうちょう)な日本語で「世界一のファンの前で勝ててうれしい」と破顔した。

新戦力となるサンウルブズのメンバーたち

また、同試合でデビューを果たし、南アフリカ代表選手を突き飛ばして先制トライを挙げた“若きナンバー8(エイト)”ラーボニ・ウォーレンボスアヤコも存在感を示した。「プロになれるのであればどこでもよかった」と、昨年からNTTコミュニケーションズでプレー。

現在21歳で、日本代表資格を得るのは2年後だが、その潜在能力はピカイチだ。フィジー人の父と、アイルランド人の母を持ち、出身地のオーストラリアでは高校代表にも選ばれている。好きな日本食はカツ丼。「食べすぎて少し太ってしまった」と話すが、日本でさらなるパワーを身につけつつある。

ほかにも、南アフリカ出身でライオンへアのナンバー8ヴィリー・ブリッツ(NTTコミュニケーションズ)や、学習院大出身のWTB(ウイング)/FB江見翔太(サントリー)らも遠征では出色の出来を見せた。特に成長著しいのが、25歳のHO(フッカー)庭井祐輔(キヤノン)。身長は174cmと小柄だが、体幹が強くタックルも強烈。すでにチームにはなくてはならない選手になった。

国際経験豊かな選手と成長した若手が“融合”するサンウルブズは、来年から南アフリカ勢ではなく、オーストラリア勢と戦う。スーパーラグビー参入の当初の目論見(もくろみ)どおり、個々の選手が国際舞台で経験を積み、W杯に向けてこれからも成長を遂げていく。

(取材・文・撮影/斉藤健仁)