六本木と新宿歌舞伎町で営業する雑炊屋・お通

“酒のシメ”といえば、昔からラーメンが人気! こってりとしたものを食べて、ひと晩を締めくくりたい…という人も多いのでは?

そんな「酒のシメ=ラーメン」という常識を覆し、東京・六本木と新宿歌舞伎町には今、酒のシメにピッタリな“雑炊屋”が登場しているという。

「六本木店は17時から翌朝9時までの営業、歌舞伎町店では24時間営業を行なっています。2店舗とも、飲み会帰りやクラブ帰りに立ち寄ってくださるお客さんが多いですね。私自身、酒のシメとして雑炊を広めたいと思っているので、現状は嬉しい限りです」

静かに熱く語るのは、その雑炊専門店「お通」のオーナー・福原優一さん。実は創業56年目を迎えた老舗の雑炊屋なのだとか。

「ウチは元々、ひとりの女性が宮崎の繁華街で切り盛りする『バーお通』という小料理屋で、店のママが酒のシメに出す雑炊が評判だったんです。当時、私はそこでアルバイトをしていたのですが、そのきっかけも雑炊の優しい味に惚れたことでしたね」

惚れ込んで働き続けるほどの雑炊とは! では、福原さんはアルバイトから店のオーナーに?

「働き始めて4年目くらいでしょうか、店のママが亡くなってしまったんです。『もしあなたが店を継いだら、私の故郷の鹿児島にお店を出してほしい』『福岡の雑炊の名店“山”と勝負をしてほしい』と夢を託されていましたから、私が店を継いで、その鹿児島と福岡にも出店してきたんです。単身赴任でキツい思いをしながら、なんとかママの夢を果たすことができました」

そんな、いい話が…! そうして九州各地で“雑炊の名店”としての地位を確立、2010年夏には東京・日本橋に進出。ただ、九州とは違い、当初はうまくいかなかったそうだ。

「初めに出店した日本橋でも、行列ができたり、常連のOLさんがいたりと、“昼間は人気がある店”にすることはできました。ただ、やはり日本橋はオフィス街で、夜や週末は全くお客が来ないんですね(笑)。その後、西麻布に移転してみたんですが、土地柄なのか、固定客は来てくれても“いろんな人に雑炊を食べてもらえる店”とは言えませんでした」

西麻布ってオシャレなイメージだから、敷居が高く感じる人も多いのかも?

「そこで『昼夜を問わず、いろんな人が来る場所へ』と思い、2013年に歌舞伎町へ再移転したんです。実際、客層はだいぶ違いました。飲み会帰りの一般の方だけでなく、仕事終わりのホストの兄ちゃんやキャバクラのお姉ちゃんも“1日のシメ”に来てくれるんですよ。中洲でもそうだったんですが、やはり繁華街に店を構えるというのは大きいようで、売上としても先の2店舗とは天と地の差でした」

そして2015年には、繁華街・六本木に新店をオープン。こちらの売上も好調で、東京での営業は右肩上がりなのだとか。

「お通」の雑炊の魅力

では、そんな「お通」の雑炊の魅力とは?

「なんといっても“ダシ”が魅力です。かつおの名産で知られる鹿児島県枕崎のかつお節や国産のシイタケ、北海道産の昆布などで作る風味は、お客さんから『ホッとする』『癒し系の味』なんて言われますね(笑)。あと、お米以外に食感の良い“押し麦”を混ぜることで、普通の雑炊より消化しやすいものになっています。ラーメンでシメるより、二日酔いも防げると思いますよ」

こだわりのダシと、より消化しやすくなる麦入りのご飯。確かに優しく1日を終えられそう!

「他には、そのダシをベースにした“クリームソース雑炊”や“カレー雑炊”もオススメです。チーズや大根おろし、ウニなどのトッピングも28種類あるので、どんな人でもお好みの雑炊を楽しんでいただけると思いますよ」

もっぱら“酒のシメはラーメン”派の記者だけど、雑炊でシメる夜はどんなものなのか…。そこで、実際に“酒のシメ”として実食してみることに!

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取材を終え、六本木の街でひとり飲み終えた明朝4時、あらためて「お通」へ。だいぶ酔っ払って、足元もおぼつかなくなってきてますが…ヒック!

ハデなお客が多い店内で席につき、先ほど福原さんに教えてもらった“特に酒のシメにピッタリな雑炊”を注文! 福原さんの解説と、記者の感想を合わせて紹介しよう。

一番出る人気メニューは?

●とりニラ雑炊(とり雑炊+「ニラ」トッピング)…1,440円

「かつお節の効いたダシと、宮崎県産の鶏肉が絶妙に合うんです。ラーメンのような表現になってしまいますが、魚介系と動物系の“Wスープ”のような感覚が味わえると思います。“酒のシメ”としても、一番出る人気メニューですね」(福原さん)

鍋のフタを開けた瞬間、かつお節と卵の懐かしい香りに安心! 鶏肉も柔らかくて消化によさそうで、何よりご飯が見えなくなるくらいに盛り付けられたニラのシャキシャキとした食感がたまらない! 飲み会帰りの深夜に開いてるラーメン屋って、味の濃いスープがほとんどだけど、深夜にこの味が食べられるのは嬉しい!

●梅雑炊…1,050円

「大分県由布院産の梅干しを添えた、シンプルな一品です。最近はハチミツを使った甘めの梅干しが多いですが、ウチの梅干しは本当に上品な酸味があって、あっさりさっぱりとシメられると思います」

見た目はシンプルだけど、この梅干しがとにかくウマい! 薄口な雑炊がさらに進むし、一緒に添えられた水菜も相まって超さっぱり! 今日は完全に飲み過ぎたけど、こんなにサラサラ食べられるとは…!

●クリームウニ雑炊…1,940円

「値は少し張りますが、日本橋の洋食店から教わったホワイトソースと、こだわりのダシを合わせる“和洋の融合”を、是非楽しんでいただきたいです。上に乗るウニも築地の市場で毎朝仕入れる北海道産のもので、新鮮で濃厚。特に女性のお客様に人気ですね」

ウニも雑炊もとにかくクリーミィーで、いい意味で雑炊らしくない新感覚! 普通の雑炊がのどの奥に「流れ込んでいく」感覚なら、これは「溶けていく」ような感覚。酔っ払って気持ちよくなってからこのゼイタク感を味わえるなんて、最高じゃないか…!

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「喜んでいただけて何よりです! ウチの雑炊でシメれば、明日の朝もスッキリかと思います。私としても『ラーメンには絶対負けない』という思いでやっていますから、是非一度、お店に来ていただきたいですね」

翌朝、筆者は胃もたれもせずスッキリ起床! 確かに雑炊は“酒のシメ”にイケる新境地ということを実感。ラーメン派の人も確かめてみては!

(取材・文・撮影/アオキユウ[short cut])

●取材協力/ぞうすいの店 お通 六本木店住所/東京都港区六本木3-15-24 Bell六本木1F 電話番号/03-6455-5245 営業時間/17:00~翌9:00(L.O.翌8:30)定休日/日曜日