格安パック旅行の構造的な問題は解決しないまま、遅かれ早かれ同じようなことがまた起きるのだろうか

資金繰りに行き詰まり経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」の問題。

『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏が前編記事「「パック旅行の格安販売はかなりの無理ゲー」に続き、日本の旅行代理店業界が抱える“ヘンな構造”について指摘する。

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ホリ 倒産したてるみくらぶも旅行業協会が弁済してくれるのかな?

ひろ ええ。弁済業務保証金制度で1億2千万円までは弁済されることになっています。んで、この制度も旅行業協会に所属して、標準旅行業約款でお客さんと契約していないと適用されないんです。

ホリ そうか、そういう構造なんだ。業界団体に保護してもらうためには、標準約款に従うしかないってことか。

ひろ 実際問題として、単独でキャンセル料を変更しようとすると「保証金制度を自分で立ち上げて、保険会社と契約し、約款を作って、観光庁長官から承認してもらう」必要がある。

でも、それをやったからといってお客さんが増えるわけじゃない。むしろ一社だけキャンセル料が上がっているので、悪徳代理店として見られてしまうリスクもあるわけです。

ホリ となると、業界団体が変えていくしかないけど、いろいろ難しいんだろうなあ。

ひろ ええ。旅行代理店が業界を変えていこうとすると、お客さんから見れば不利な契約を推し進めているということになる。そうすると代理店離れが加速しちゃうんですよね。

今はネットを使えば海外旅行でもなんとかなるし、多少の語学力がある人は旅行代理店を使わないじゃないですか。ということで、格安パック旅行を主戦場にする旅行代理店は、かなりの無理ゲーって思うのです。

ホリ なるほど。

遅かれ早かれ同じようなことがまた起きる

ひろ ただ、格安パック旅行マーケットの規模はそれなりにあるので、広告を打ちまくって現金収入で回すとある程度の期間は自転車操業でいけるんですよね。

ホリ クレカ払いじゃなくて、現金払いオンリーならすぐ現金が入るからね。

ひろ しかも広告料の支払いって2ヵ月先とかだったりしますからね。なので、厳密には赤字なんだけど、現金はあるから倒産はしない状態はしばらく続けられる。

ホリ でも、それじゃ潰れるのは時間の問題だよね。

ひろ その時限爆弾がどんどん大きくなりますからね。てるみくらぶは、それが途方もない金額で爆発したというわけです。んで、根本的に解決するには、繰り返しますけど業界団体がキャンセル料を上げることなんですよね。

でも、大手代理店は高齢者とかに高額パックツアーを売っているので利益率が高いんですよ。なので、今のキャンセル料のルールのままでも大勢に影響はないし、むしろ「お客さんに優しい、高いけど安心」というイメージをキープしたい。

ホリ じゃあ、積極的には動かないよね。

ひろ ええ。だから、やっぱり無理ゲーなのかなと。だから今回の問題は、てるみくらぶの経営の問題だけじゃないような気がします。

ホリ 格安パック旅行の構造的な問題は解決しないままだから、遅かれ早かれ同じようなことがまた起きるかもね。

(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)

●堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『やっぱりヘンだよね』(集英社)が好評発売中

●西村博之(にしむら・ひろゆき)1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。著書に『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)ほか