都内で見かける機会の増えた「磯丸水産」(上)に戦いを挑む「豊丸水産」(中)と「四十八漁場」(下)

関東を中心に全国で154店舗を展開する海鮮居酒屋「磯丸水産」が元気だ。

実際の店舗数以上に“一点集中投下型”とでも言うべきか、ある特定の街を歩いていると「また磯丸、ここにも磯丸!」という感じで、やたらと目立つのだ。

特に新宿などは西口から歌舞伎町まで歩いただけで7店も見つかるほど。では、どうして急に店舗数が増えたのか。フードジャーナリストのはんつ遠藤氏はこう語る。

「なんといっても24時間営業の衝撃です。味が良い海鮮居酒屋は以前からありましたが、このご時世に24時間営業を前面に押し出したのには驚いたし、話題にもなりました。それに立地もいい。このふたつの条件がそろい、磯丸水産は客が入り、店舗も増えているのだと思います」

さらに「自分のテーブルで自由に魚や貝を焼けるのも新鮮だったのでは?」と続ける。

「個人経営の店などでは珍しくありませんが、チェーン店では画期的。磯丸で魚や貝を焼く楽しさを知った人も多いと思いますよ」

確かに、焼き肉屋で肉を焼くのは慣れているが、記者もほぼ初めての体験で新鮮。焼き加減がわからず、生焼けがちょっと心配だったりして…。

「食中毒を出したら倒産ですから、そこは店側も考えています。生で食べても大丈夫な食材を提供し、多少、焼きが甘くてもおなかを下すようなことはないでしょう」(遠藤氏)

そんな磯丸水産と店名からコンセプトまでそっくりなのが「豊丸水産」だ。磯丸に5年遅れて1号店をオープン。現在は36店舗を展開する。

「ただ、個人的に磯丸水産の対抗馬は『四十八漁場』ではないかと思っています。なぜなら、ここは網焼きこそありませんが、食材の産地や調理法にこだわっているからです。

もう一方の豊丸水産は、魚のほかに肉も提供していますが、食の情報が多く、舌も肥えている現代人にはいろいろ食べられる店よりも“専門店”のほうが信頼できるし、おいしく感じるのです」(遠藤氏)

客のニーズを的確につかめるかが勝敗を分ける。

(取材・文/井出尚志 渡辺雅史 高山 恵[リーゼント])

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