『コノマチ☆リサーチ』のお兄さん役に抜擢された人気イラストレーター・岸田メル先生

今年4月からNHK・Eテレで放映されている『コノマチ☆リサーチ』に、お兄さん(ハジメ)役で岸田メル先生が出演する。

岸田先生は人気TVゲームシリーズの「アトリエシリーズ」やアニメ作品「花咲くいろはの」のキャラクターデザインを務めた大人気イラストレーター。また今年の3月末に発売されたTVゲーム「ブルー リフレクション 幻に舞う少女の剣」では監修を務めており、破竹の勢いで仕事をこなしている。

さらに、個性的なコスプレや変顔をすることでも有名で、特に謎の仮面を着け、両手に剣を持った画像はTwitterに投稿されるやいなや急速に拡散され、一躍話題となり代名詞的な存在となった。

そんな先生が奇抜なイメージとは相反する教育番組に抜擢されたことで、またまたネット上では大きな注目を集めているわけだが、そこで本人を直撃、Eテレ番組に出演するに至った経緯やあのコスプレの真相を明かしてもらった。

―今年の4月から『コノマチ☆リサーチ』のお兄さん(ハジメ)役に選ばれました。番組出演を決めたエピソードを教えてください。

岸田 『コノマチ☆リサーチ』は宇宙人のキャラクターと一緒に調べた街の営みを僕がイラストにして紹介する社会科番組です。僕が昔よく観ていて大好きだった「たんけんぼくのまち」や「このまちだいすき」に近い構成だったので、出演オファーが来た時は「ゲストでも嬉しいです!」と即答しました。

そうしたら「主演でお願いします」と返ってきてびっくりしましたね。でも嬉しかったので「僕でいいならいくらでもやります!」とお伝えしました(笑)。

―まさかの主役! ちなみにNHKがお好きだったんですか?

岸田 そうですね。僕はNHKの番組が大好きで、部屋で仕事をしている時は作業用BGM代わりに流しています。民放よりも落ち着いた雰囲気がよくて。あと大人になってからもEテレの教育番組を観続けていたので、NHKの番組に出演することはひとつの夢でした。

―今回、実際に出演されて、緊張などはしましたか?

岸田 いえ。実は過去にもNHKの番組には出演していますし、お芝居の経験もあるのでそこまで緊張はしませんでしたね。

―そういえば、俳優としても活動されていたんですよね。どういったきっかけで?

岸田 浅野忠信さんが出演した映画に衝撃を受けて、高校に入学してから演劇部に入ったんです。それからお芝居の魅力に魅せられて、卒業後も地元の劇団やタレント事務所に所属しながら23~24歳までズルズルと続けた感じです。

どんなことをするとネットで嫌われるか?

―なるほど、じゃあ演技面での心配はいらないですね! 逆に、番組で大変な点はありますか?

岸田 番組の最後にイラストを描くのですが、絵の中で使う漢字の書き順には、毎回苦労しています(苦笑)。小学生の子供たちに見せるわけですから、間違うわけにもいかず…だからいつも、漢字の書き順を勉強し直してから出演しています。

―それは大変ですね…。子供たちに見せるイラストという意味で他に何か気をつけていることは?

岸田 普段はゲームやライトノベルのキャラクターを描いているので、当然、子供向けの絵を描いていません。番組のテーマに同じことをやってもらうといった目標がありますから、描いてみたいと思わせる絵を描くようにしています。例えば、番組の内容にスーパーマーケットの仕組みを調べて、最後は調べたことをイラストにして紹介する企画があります。そこでは子供がイメージしやすい自由研究の課題のようなイラストを描くように心がけています。

―子供たちに見て理解してもらうって、大変そうですよね…。

岸田 そうですね。あと、普段はデジタルでイラストを描いているので、番組で描くようなアナログのイラストだと頭の切り替えが難しいですね。子供が描くことも意識して絵にしなければならないので、描く人物もデフォルメしなければいけません。

まぁでも、僕は適当に絵を描くことが得意なので、そこはあんまり苦労していませんが(笑)。自分が描くのが辛かったら、真似して描くのはもっと辛いと思うので、良い意味で力の抜けた絵を描けるようにしていきたいですね。

―すごい。いろいろと気を遣っているんですね。では、次にインターネット上でのコミュニケーションについてお聞きします。岸田先生はアンチが少ない印象があるのですが、何か注意していることがあれば、教えてください。

岸田 僕は昔から「2ちゃんねる」をよく見ているので、どういうことをするとネットで嫌われるか、なんとなく肌で理解しているつもりです。あんまり書き込むことはないですが、いろいろな板をROMって(見て)いますし、自分のアンチスレにも目を通したりしてます。

自分が客観的に見て、嫌だなあとかムカつくなあとか、そういういうことを言わない、くらいでしょうか…。それでも、僕もそれなりにちょくちょく叩かれてますよ! そこまで激しくはないので助かってますが。

最終的にはもう死ぬしかないんですよね

―先生をイケメンと讃えるファンもいます。そういった反応はどう受け取っていますか?

岸田 イラストレーターとして初めて顔出しをしたのは「アトリエシリーズ」関連書籍の撮影です。僕は元々、役者をやっていたから顔出しに抵抗感がなくて。当時はイラストの雰囲気や名前もあり、僕を女性だと思っていた人が多かった(苦笑)。だから、そのギャップみたいなもので言ってもらえてる気がします。

でも根がクソオタクだし、自分の顔もそこまで好きじゃないのでなんだか居心地が悪くて、ぶち壊したくなって変な顔したり変な恰好したりしてるわけですね。もっとイケメンだったらこんなことせず正統派イケメン絵師として活動したかったです。

―いい意味でファンの期待を裏切っていますね(笑)。

岸田 単純に悪戯心や照れ隠しですよ。僕ぐらいのインターネットをやっている世代は「探偵ファイル」や「侍魂」のようにネットで悪ふざけしている人たちが多かった。今ほどネットを見ている人が多くなかったし、限られた人たちが小さなコミュニティで文学的なジョークなどを言って競い合う文化があったので。

僕はそういうのに憧れていていたので「きれいな絵を描いているイケメンイラストレーター」と言われるのはつまらなく感じて。それで変な格好をしてネットで公開してみたら取り返しがつかなくなり…(苦笑)。

―取り返しがつかないとは?

岸田 変な格好をするとみんな喜びますが、1回やると次を期待されるんです。期待されると宿題をやっている感じで億劫になってしまう。それに同じこと繰り返しても寒いじゃないですか。メディアに出た時も「今日は剣を持っていないんですか?」なんて言われたりして…(笑)。

それでTwitterに「同じことやりたくないのでネタ振りするのはやめて」とオブラートに包んで書いてみたら「自分でやっておきながら弄(もてあそ)ぶなとは何事だ」と叩かれて(苦笑)。でも、今は興味を持ってくれたらなんでもいいかな。

―面白さを追求していくと、要求する側も過激になっていく傾向がありますよね。

岸田 みんな不感症になってしまうので、やる側もお客さんを飽きさせないためにパフォーマンスが過激になっていく。極端な例えですけど、過激なパフォーマンスが行くところまで行ってしまうと、最終的にはもう死ぬしかないんですよね。

お客さんが求めるものは限度がないので、誰かを傷つけたり自分を追い詰めたりしないようにどこかでブレーキをかけないと。ちょうどいいところで、面白くてバカなことをやっていきたいですね!

●後編⇒コスプレや変顔でも大人気のイラストレーター・岸田メルが向き合う“作品のオリジナリティ”とは?

(取材・文/高橋アオ)

■岸田メル(きしだ・める)1983年9月3日生まれ。雑誌・ライトノベルなどのイラストはもちろん、アニメやゲームのキャラクターデザインも数々手がける人気イラストレーター。現在、NHK・Eテレ『コノマチ☆リサーチ』(毎週水曜9:10~)にお兄さん(ハジメ)役で出演中!○キャラクターデザイン・監修を務めるゲーム「ブルー リフレクション 幻に舞う少女の剣」が絶賛発売中!! その他、詳しい情報はオフィシャルホームページまで Twitter【@mellco】

【岸田先生の変顔コレクション】