どんなサポーターがいるのか、全員を把握するなんて無理だと語るセルジオ越後氏

一部のサポーターによる騒動が相次いで起きた。

4月16日、JリーグのG大阪vsC大阪戦で、G大阪の一部サポーターがナチス親衛隊のマークを連想させる旗を掲げた。それを受けてG大阪の山内社長が謝罪し、次の試合から横断幕や旗などすべての掲出物を禁止。当該サポーターには無期限のスタジアム入場禁止処分が科された。

続く4月25日、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の水原三星vs川崎戦では、川崎のサポーターが旭日旗を掲げたことで、逆上した相手サポーターと小競り合いに発展。Jリーグ側は「旭日旗は政治的、差別的なメッセージを含むものではない」としたものの、アジアサッカー連盟(AFC)による川崎への処分が取り沙汰されている。※その後、AFCの大会で川崎がホーム開催の1試合を無観客試合とすることと、罰金15000ドル(約170万円)の重い処分が決定した。

2014年に浦和のサポーターが「JAPANESE ONLY」という横断幕を掲げた際には、Jリーグから無観客試合という重い処分が下された。それ以降、Jリーグと各クラブが再発防止のためさまざまな取り組みを行なってきただけに、こうした騒動が起きたのは残念だ。

ただ、身もふたもない言い方に聞こえるかもしれないけど、どんな集団でも、数が増えれば増えるほどよけいなことをする人間が紛れ込んでしまうもの。旗や横断幕じゃなくても、ひどいやじを飛ばす人もいる。こうした問題の発生を完全に防ぐことは難しい。

だから、今回の件で関係クラブの責任を問うのは酷だと思う。どんなサポーターがいるのか、全員を把握するなんて無理だよ。当該サポーターと話し合いの場を持ち、言い分を聞いた上で必要な処分を下す。それで十分。ごく一部の人間のせいで、スタジアム内の掲出物をすべて禁止するのは過剰反応という気がする。スタジアムの楽しい雰囲気が損なわれるし、大半のまっとうなサポーターが気の毒だ。ましてや無観客試合なんて必要ない。

周囲のサポーターが勇気を持って止めてほしい

もちろん、政治的、差別的なメッセージをスタジアム内に持ち込ませないための啓発活動は今後も続けるべき。

ただ、そもそも論になるけど、何をもって不適切な応援とするのか。何をもって差別的な表現とするのか。生まれ育った場所、環境、文化や習慣が違えば、考え方も受け止め方も異なるし、その線引きは極めて難しい。特にACLのような国際舞台ではね。

極端な例を挙げると、僕の故郷ブラジルでは、黒人選手が「アスファルト」「カフェ(コーヒー)」などと呼ばれていたり、イタリア系の選手が「マッカローニ(マカロニ)」と呼ばれていた。日系人の僕も「ジャパ(日本人)」といった具合だ。ほかの国なら全部アウト。大問題になるよね。でも、ブラジルでは蔑称ではなく、むしろ親しみを込めた愛称としてそう呼ぶ場合も多い。大事なのは、そうした国や文化などの違いを理解し、お互いに尊重し合えるかじゃないかな。それがスポーツマンシップというものだ。

今回、騒動を起こした人物は、今からでもそのことに気づいてほしい。自分たちの軽率な行動によって、楽しいスポーツの場にもかかわらず気分を害した人がたくさんいたこと、愛するクラブにも迷惑をかけたことをね。

今後に関していえば、もし同じようなことが起きた場合は、周囲のサポーターが勇気を持って止めてほしい。そういう行為を許さない雰囲気をつくってほしい。リーグやクラブ任せではなく、そうやってサポーターも一緒になって取り組んでいくのが理想だね。

(構成/渡辺達也)