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シリア人記者が語る内戦の真実「アメリカのミサイル攻撃の理由は、市民が化学兵器で殺されたからではない」

[2017年05月11日]

─つまり、アメリカがミサイル攻撃に踏み切ったのは市民への化学兵器使用という人道問題ではなく、イスラエルの安全保障が理由だったと?

ナジーブ 私たちシリア人は以前から「オバマ政権は化学兵器の使用は許さないけど、罪もないシリア市民が殺されるのは平気なんだね!」と皮肉を言っていたのですが、トランプ政権になってもその状況は全く変わらない。その証拠にアメリカのミサイル攻撃の翌日、攻撃を受けた基地から出撃したシリア政府軍機が、やはり国際法で「非人道的」だとして禁じられているナパーム弾を使って爆撃を行なったにもかかわらず、トランプ政権は何もしていません。

つまり、シリア政府軍とロシアによる爆撃で罪のないシリア市民が何十万人殺されようと、シリアの子供たちが非人道的な「たる爆弾」や「ナパーム弾」で殺されようと、アメリカにとって重要なのは「イスラエルの安全保障」であり、それを脅かす可能性がある周辺諸国の「大量破壊兵器」の存在でしかない…というのが本音なのです。

それはアサド政権を支援するロシアも同様で、彼らもイスラエルとの関係を重視している。アメリカによるシリアへのミサイル攻撃があったにもかかわらず、ロシアとアメリカの関係が劇的に悪化しなかったのも、両国が「イスラエルとの関係を重視する」という点では立場を同じにしていたからでしょう。私はこの問題で主要なメディアがイスラエルについて正面から触れないことをとても不思議に思っています。

─ちなみに、化学兵器の使用をシリア政府は一貫して否定し続けていて、一部では反政府勢力による「自作自演」ではないかとする見方もあるようですが…。

ナジーブ 化学兵器を使ったのがシリア政府軍であることは間違いないと思います。アサドはオバマ政権の時代に化学兵器を廃棄したと言われていますが、実際に化学兵器に関する査察を行ない、ノーベル平和賞を受賞した「化学兵器禁止機関」(OPCW)の代表も、少量の化学兵器がシリア国内に残されている可能性については否定していませんでした。

今回、化学兵器が使用された直前、アメリカの国連大使が「アメリカにとってアサド政権の打倒はもはや優先課題ではない」と発言したのですが、そうしたトランプ政権の姿勢が結果的にアサド政権を調子づかせ、化学兵器の使用に繋がった可能性もあると思います。

いずれにせよ、非常に厄介なのはトランプ政権が持つネガティブなイメージや世界で広がるアメリカに対する反感が、今話題に出た「化学兵器使用の自作自演説」のような「陰謀論」に繋がっているという点です。

「アラブの春」の唯一の成功例であるチュニジアですら、独裁者のアサド政権を支持するようなデモが起こっていることに私は大きなショックを受けたのですが、その背景にもアメリカやトランプ大統領への反感がある。

「横暴なトランプ大統領のアメリカ」と戦う相手は自分たちの味方だ…という単純な思い込みが安易な陰謀論に繋がり、現実の見方を歪(ゆが)めてしまう。それはトランプ政権のイメージがもたらす深刻な「副作用」だと思います。


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