安倍政権にとって不都合なふたつのニュースとは? 古賀茂明氏が指摘する!

福島第一原発事故の教訓も忘れ、原発再稼働へとひた走ってきた安倍政権。

そんな政権と原子力ムラにとって「不都合な真実」となるふたつのニュースが埋もれてしまっていると、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は指摘する。

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とても大切なことなのに、メディアの報じ方のせいで埋もれてしまうニュースは少なくない。

「温室効果ガスの排出量 2年連続で減少」というニュースもそのひとつだ。

環境省が先月中旬に発表したデータによれば、2015年度の日本の温室効果ガス排出量は前年度比2.9%減の13億2500万tだった。

しかし、今回の新聞の報道では重要なことを報じていない。まず、温室効果ガス(フロンなどを含む)のうち、いちばん大事なCO2だけを見るとマイナス幅は3.4%と拡大する。さらに、電力などのエネルギー転換部門に限定すると、6.4%もの大幅減少だ。

そして、15年度の実質経済成長率はプラス1.3%だった。つまり、経済成長しても電力部門のCO2排出量が大幅に減少したのだ。これは極めて画期的なことだ。

思い出してほしい。安倍政権は福島第一原発事故の教訓も忘れ、原発再稼働へとひた走ってきた。その理由として主張してきたのが以下の3つだ。

原発が停止したままだと、

(1)電力不足になる。(2)電気代が高くなる。(3)CO2などの排出量が増え、昨年、閣議決定した目標(2030年度の温室効果ガスを、13年度比で26%減)を達成できない。

だが、原発事故以降、日本中のすべての原発が停止しても(1)の電力不足は起こらなかった。

また(2)の理由、原発はほかの発電方式に比べてローコストという売り文句も通じなくなってきた。近年、自然エネルギーが普及し、今やデンマークや中東、南米などでは、風力や太陽光発電のコストがkW当たり6円を切るというニュースが続いている。

安全対策や廃炉などに巨額の費用がかさむ原発の発電コストは上昇を続け、今や少なく見ても10円超。もはや原発はローコストどころか、ハイコストの代表だ。

北朝鮮有事の際の“原発リスク”

そして(3)の、CO2を排出しない原発なしには温室効果ガスを削減できないという主張も、環境省の最新データによって覆された。何しろ原発をほとんど止め、CO2を多く出す火力発電をメインにして経済成長しても、CO2の排出量が大幅に減っているのだ。

その要因は工場、オフィス、家庭などで省エネ化や自然エネルギーの普及が進んだためだ。これは安倍政権と原子力ムラにとって「不都合な真実」である。このニュースについて報道量が少ないのは、そのためなのだろう。

報道の少なさが気になるといえば、北朝鮮有事の際の“原発リスク”についてもそうだ。

この間、安倍政権は北朝鮮からのミサイル攻撃のリスクを声高にあおり、国民に「地下鉄に逃げ込め」と呼びかけた。一方、原発がミサイルやテロ攻撃されるリスクについては、だんまりを決め込んだままである。

まともに防御対策を立てれば、住民避難計画の作り直しはもちろん、核燃料プールの地下埋設や警備員の配備などを迫られ、原発再稼働ができなくなるからだ。

この安倍政権のダブルスタンダードを指摘する報道はほとんどない。経済成長しても温室効果ガスが減ったというニュース。そして北朝鮮のミサイル騒動ニュース。

このふたつのニュースから導ける結論はただひとつしかない。それは原発の再稼働は今すぐにやめることである。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。5月29日に新著『日本中枢の狂謀』(講談社)が発売予定。『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中