39歳となる今季もその左足から放たれるFKが健在の中村俊輔

15歳・久保健英(FC東京)のJリーグデビューなど、若手に注目が集まっている今シーズンだが、ベテラン選手の活躍も例年以上に目立っている。

例えば前人未踏の50歳Jリーガー、カズこと三浦知良(横浜FC)が自身の持つJリーグ最年長得点記録を50歳と14日に塗り替えた偉業(3月12日のJ2第3節)が、国内のみならず世界中のメディアから絶賛されたことは記憶に新しいところだ。

その一方で、カズのようなアラフィフには及ばないまでも、40歳手前のアラフォー世代も負けていない。その筆頭株が、今シーズンから長年プレーした横浜F・マリノスを離れてジュビロ磐田に新天地を求めた中村俊輔、38歳である。

第10節を終えた段階で、俊輔は9試合にスタメン出場し、2ゴールをマーク。自身のトレードマークともなっているフリーキックも健在で、第3節の大宮戦では先制点となるゴールを決めてチームの今シーズン初勝利に貢献したばかりか、自身の持つ直接FKによるJ1最多得点記録を23に更新している。

さらに圧巻だったのは、第8節の王者・鹿島アントラーズ戦のスーパーゴールだ。相手クリアからのルーズボールを約20メートルの距離から得意の左足で放った弾丸ミドルシュートは、早くも今シーズンのベストゴール候補とも言われるほどのビューティフルゴール。来月24日で39歳になるとは、とても思えない鋭い一発だった。

ここまでの俊輔はこれらのゴール以外にも随所にベテランらしい頭脳的なプレーを見せており、若手が多いジュビロをけん引。その効果もあって、開幕前には多くの専門家が残留争いを強いられると予想されていた磐田だが、リーグ中位をキープしている。

地元サポーターも、かつて日本代表の10番を背負ってワールドカップに2度出場しているレジェンドが自分たちのチームの10番を背負っているとあって、俊輔の一挙手一投足に熱狂。ユニフォームの売れ行きも絶好調で、俊輔効果はビジネス的にも好影響を与えているようだ。

第8節、その俊輔の活躍で黒星を喫した鹿島でも、ふたりのアラフォーが元気にプレーしている。1998年に同期入団した小笠原満男と曽ヶ端準(ひとし)だ。

現在38歳のキャプテン小笠原と8月2日に38歳を迎える曽ヶ端は、かつてワールドカップにも出場した元日本代表プレーヤー。小笠原は1シーズン(2006-2007)だけイタリア・セリエAのメッシーナでプレーした経験があるものの、それ以外は曽ヶ端とともに鹿島ひと筋を貫く、いわゆるバンディエラ(移籍することなく、同じチームでプレーし続けるシンボル的存在。イタリア語の「旗頭」「旗手」)だ。

第7節のベガルタ仙台戦ではふたりが揃ってスタメン出場を果たし、J1での通算500試合出場という偉業を達成。現在、J1通算出場数の1位は今シーズンJ2の名古屋グランパスの元日本代表GK楢崎正剛(631試合)だが、通算19冠を誇る鹿島で500試合を達成したふたりは、大いに称賛されるべきだろう。

今シーズンは韓国代表GKのクォン・スンテが加入したことで、曽ヶ端のリーグ戦出場数は3試合にとどまっているが、小笠原はここまで8試合にスタメン出場。どの試合でも安定したパフォーマンスと絶対的なキャプテンシーでチームをけん引しており、まだまだ出場記録は伸びそうだ。

闘莉王はFWとしてゴールを量産!?

出場記録数ではこのふたりを上回る544試合を記録中の横浜F・マリノスの中澤佑二も、39歳とは思えないハイレベルなパフォーマンスを続けている。

しかも、昨シーズンは3年連続でリーグ戦の全試合フルタイム出場を達成し、今シーズンもここまで全10試合でフルタイム出場をキープ。ちなみに連続フルタイム出場記録については、昨シーズンに名古屋の楢崎が4年連続記録を逃したが、中澤は浦和レッズのMF阿部勇樹とGK西川周作とともに、現在4年連続の偉業に挑戦中だ。

連続出場記録は、怪我はもちろん累積警告というハードルを乗り越える必要があるが、DFの中澤は昨シーズンもイエローカードはわずか1枚。クリーンなディフェンスで守備ラインを統率する神業は、まさしく若手の見本といえる。長きに渡って日本代表の壁として君臨したベテランはまだまだ元気だ。

そしてもうひとり、今シーズンのJ2で話題の人となっているベテランも忘れてはいけない。アラフォー手前の36歳となった田中マルクス闘莉王だ。

闘莉王といえば、かつて日本代表のセンターバックとして2010年ワールドカップのベスト16進出に貢献したブラジル出身の帰化プレーヤー。昨シーズンは名古屋の降格危機を救うべくシーズン終盤に緊急加入したことでも話題を集めたが、今シーズンは京都サンガに新天地を求め、ここまで8試合出場7ゴールを記録し、J2得点ランキング2位タイに位置している。

もともと闘莉王の得点能力の高さには定評があったが、今シーズンは開幕からチームが大不振に陥ると、第8節の愛媛FC戦から布部陽功(ぬのべたかのり)監督がたまりかねて闘莉王をFWに抜てき。その期待に見事に応えて、なんとハットトリックまで記録し今シーズン初勝利に導いたのである。

闘莉王はその後もFWとしての能力をいかんなく発揮し、ゴールを量産。年齢を重ねてからプレーポジションを最終ラインから前線に変更するという、この超レアケースはサッカー界に大きなインパクトを与えている。

数年前なら30歳半ばで現役引退というのがサッカー界の常識とされていたが、昨今は様相がすっかり変わった。確かに若手の台頭も期待したいところだが、今シーズンのJリーグはベテランにも注目するとさらに面白い。

(取材・文/中山 淳 写真/アフロ)