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アメリカによる北朝鮮“空爆”や先制攻撃が「現実的には起こりえない」理由

[2017年05月18日]

また、別の思惑も考えられるという。

「北朝鮮に関しては事実上の後ろ盾となっている中国の動きがカギになる。その中国がより強い影響力を北朝鮮に行使するよう、圧力をかけることもアメリカの狙いでしょう。

アメリカ軍は4月13日、非核兵器としては最大の威力を持つ爆弾『MOAB(通称“すべての爆弾の母”)』をアフガニスタンでISとの戦いに使用しました。この行動が『北朝鮮へのメッセージ』かどうかについてトランプ大統領は明言を避けましたが、『(北朝鮮問題について)中国もとても頑張ってくれている』などと話していることからも明らかです。こうしたトランプ政権の動きに対応する形で、中国も少しずつ『北朝鮮への圧力』を強めています。

ただし、ここまで米朝の『挑発合戦』がエスカレートし、そこに中国からの圧力も強まれば、金正恩がそれをどう受け止め、どう反応するのかはわかりません。これはアサド政権にも言えることですが、北朝鮮の内部も決して一枚岩とは限らないからです。

僕はアメリカが証拠を示せていない以上、『シリア政府軍が化学兵器を使った』と断言できないと思いますが、仮に政府軍が使ったのだとしても、それをアサドが直接指示したのではなく、軍部の誰かが勝手に『忖度(そんたく)』したという可能性だってある。それは北朝鮮も同じで、どれほど金正恩の支配が強くても、内部の誰かが思いもよらない動きを起こすリスクを考えておく必要がある

アサドのシリアと金正恩の北朝鮮。これまでふたりの独裁者が権力の座に座り続けられたのも、彼らがアメリカやロシア、あるいはアメリカと中国といった大国間の対立や緊張を「栄養」にしてきたからだ。しかし今、その独裁者たちは化学兵器や核兵器で武装し、大国の手に余る「モンスター」へと育ってしまった。

もちろん大国にとって、そのモンスターたちのハシゴを外し、力ずくで倒すことは不可能ではないだろう。だがその結果、巻き添えを食うのは罪のない人々だ。

「シリア内戦のように、戦争が常に『大国のエゴ』だけで語られ、実際にその被害に苦しむ一般の人たちの視点で物事を考えない人が多すぎる」(中東情勢に詳しい同志社大学大学院・内藤正典教授)

戦争で国を壊すのは簡単です。しかし、その後に国を造るのは本当に難しい。国を壊した結果、以前よりヒドい状態になるという例を、僕はこれまで何度も見てきました」(伊勢崎氏)

大国の身勝手な理屈で、危ういバランスを保ってきた独裁国家の後ろ盾が、今まさに崩れ落ちそうになっている。「暴発」という事態が招く、最悪のシナリオが現実にならないことを願うばかりだ。

(取材・文/川喜田 研 撮影/岡倉禎志)

●伊勢崎賢治(いせざき・けんじ)
東京外国語大学教授。1957年生まれ。国連PKO幹部として東ティモール暫定行政府の県知事を務め、シエラレオネやアフガニスタンでは武装解除を指揮した経験もある自称“紛争屋”

●内藤正典(ないとう・まさのり)
同志社大学大学院教授。1956年生まれ。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。近著に『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(ミシマ社)などがある


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