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「TPP11」は不発に終わる? タフな対米交渉を乗り切れるカードとなるのは“甘い幻想”

[2017年05月20日]

「このカードがあれば、タフな対米交渉を乗り切れるというのは、甘い幻想にすぎない」と警告する古賀茂明氏

明日、ベトナム・ハノイで開催される閣僚会合で早期発効への一致を目指す、米国抜きの環太平洋連携協定「TPP11(イレブン)」。

日米交渉の有利なカードとして期待が高まる中、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、これは不発に終わるだろうと予測する。

* * *

環太平洋経済連携協定(TPP)を、11ヵ国で発効させようというアイデア――「TPP11」に一部で期待が高まっている。

トランプ米大統領が離脱を宣言したことで、3年もかけて交渉してきたTPPは空中分解状態となっていた。しかし、せっかくの多国間の枠組みを腐らせるのは惜しいと日本政府が音頭を取り、アメリカ以外の11ヵ国での早期発効の道を探り始めたのだ。

その思惑ははっきりしている。トランプ政権はTPPに代わる新たな枠組みとして、日本に二国間の自由貿易協定(FTA)の締結を迫っている。

この日米交渉はハードなものになるだろう。何しろ、トランプ大統領は二国間FTAのほうが「アメリカファーストになる。日本からもっと多くのものを得られる」と公言し、TPPから離脱したのだ。FTAの交渉ではTPPよりもさらにアメリカ有利のものを提案してくるはず。そこで日本政府は「TPP11」というカードで対抗し、対米交渉を少しでも有利に進めたいと狙っているのだ。

例えば、牛肉。実は、日豪間にはすでに二国間FTAがあり、豪州産牛肉のほうが米国産よりも関税が低い。そのため、日本国内で米国産のシェアが落ちている。「TPP11」が早期発効すれば豪州産牛肉の関税はさらに下がり、米国産がより不利になる。アメリカの生産者にとっては死活問題だ。

日米交渉にはまだまだ時間がかかる。トランプ政権の人事が遅れて通商政策を担当する主要ポストも定まっていないため、本格交渉スタートの時期さえはっきりしていない。その間にも日本国内では、米国産牛肉より豪州産牛肉が売れる状態が続く。

そうなれば、日本にも勝機が見えてくる。焦(じ)れたアメリカがTPPと同じレベルの関税率で日米FTA交渉を妥協してくる可能性がある。さらに、二国間交渉が長引けば、「離脱を撤回し、TPPに復帰したほうが早い」となって、トランプ政権がTPPに戻ってくることも期待できる、というわけだ。


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