ロボネコヤマトは、4月17日より神奈川県藤沢市の限定地域で実用実験を開始した。対象エリアとなるのは鵠沼海岸1~7丁目、辻堂東海岸1~4丁目、本鵠沼1~5丁目である

今年4月からIT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)が物流大手ヤマト運輸と組み、自動運転による将来の無人配達を見据えた「ロボネコヤマト」の実用実験を始めた。そこで、本誌でおなじみの自動車ジャーナリスト・小沢コージが仕掛け人の島宏氏を直撃!

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―ロボネコヤマトは、いったい何ができるんでしょうか? というか、そもそも「ロボネコヤマト」って名前がスゴいと思うんですよ。まさにどハマりのネーミングで、一瞬にして自動運転時代の宅配をイメージできます。これはどなたの発案で?

中島 私です(笑)。って言っちゃいけなかったかなぁ? まぁ、確かにお遊びっぽいネーミングだし、「ヤマト」の名前が入っているので実験で問題が起きたらご迷惑をおかけするかとも思ったんですが、やっぱりわかりやすいんですよね。「ロボット配送」じゃわかりにくいし、そもそもゴロが悪いので。

―確かに。

中島 だから各方面に「お願いですから名前はロボネコヤマトにしてください」と言い続けてきました。

―それは大正解です。で、話を戻しますがこのロボネコヤマトって具体的には何ができるんですか? ロボットのネコが運転をするわけじゃ?

中島 ロボットのネコはいません(笑)。代わりに黄色と黒のツートンの専用宅配カーがありまして、後ろのスライドドアを開けると中に専用保管ボックスが備わってる。現時点では、無人運転ではなく有人運転ですけどね。

―で、ロボネコがやれることは?

中島 2種類です。ひとつは「ロボネコデリバリー」といって、ヤマト運輸の荷物を宅配します。もうひとつは「ロボネコストア」。近隣レストランやショップの買い物代行。

―利用法は?

中島 どちらもスマホやPCを使ってユーザーにオペレートしていただくもので、まず宅配のほうから言うとクロネコメンバーズのアプリで、アナタに荷物が来ているかわかります。

回転ずしみたいなイメージ

―そこまでは今のサービスと大差ないですよね?

中島 そう。ただし、今までは家のポストにアナタ宛ての不在配達票があったら、それを見て「翌日の何時から何時まで」と2時間程度の枠から再配達時間を指定していたと思いますが、ロボネコデリバリーは10分単位で配達時間を指定できる。

―なるほど。ユーザーと宅配業者のムダのないやりとりが可能になると。

中島 10分単位の時間指定は相当に便利で、お互いの待ち時間がなくなります。

―今までのシステムではできなかったんですか?

中島 できないというより、やっていませんでしたね。だからハード的な違いとしては、将来の自動運転を見越していることを除けば、運転手は運転に専念し、荷物のやりとりはユーザーにやってもらうシステムになっただけです。

―じゃあ、今よりむしろ面倒くさいじゃないですか!?

中島 そのとおりです。逆にユーザーの手間は増えるので、ホスピタリティでは既存のヤマト運輸のほうが高いんですよ。ロボネコは、自分で玄関の外に出なきゃいけないし、家の前がクルマの止まりにくい道だと、そこまで行かなきゃいけない。

―その代わり欲しいときに欲しい場所で受け取れるわけですね。回転ずしみたいなイメージですかね? 常に近隣をグルグル回るロボネコがいるから、時間があればさっと受け取れる。

中島 そういう感じです。

『週刊プレイボーイ』23号(5月22日発売)では、ロボネコヤマトは人手不足を解消できるのか、無人運転化の見通しなどサービスの全貌に詳しく迫る!

(取材・文/小沢コージ 撮影/本田雄士)(c)Robonekoyamato Project

●中島 宏(なかじま・ひろし)株式会社ディー・エヌ・エー執行役員オートモーティブ事業部長。2009年4月、執行役員に就任し、HR本部長、新規事業推進室長などを歴任。現在、執行役員オートモーティブ事業の統括を担当