W杯最終予選を戦う日本代表でのブレイクはまぐれじゃなかった!

今夏にもビッグクラブへ移籍か!? 今年1月、ベルギーのヘントに渡った日本代表FW久保裕也が絶好調だ。重要な試合でゴールを連発し、欧州1部リーグでの日本人最多得点記録を更新。

現地で本人に話を聞いてきた!

■久保本人が明かしたゴール量産のワケ

3月のW杯アジア最終予選の2試合(UAE戦、タイ戦)で2得点3アシストと大活躍し、日本代表の新エース候補となったFW久保裕也(23歳)が、所属クラブでも絶好調。今年1月にスイスのヤングボーイズからベルギーの強豪ヘントに移籍して以降、11得点とゴールを量産したのだ。

ただ、日本ではなじみの薄いベルギーリーグだけに情報が少なく、その活躍ぶりがどれほどなのかはいまいちピンとこない。そんなわけで、じかに確かめるべく筆者はベルギーへ飛んだ。

まず向かったのは、プレーオフ第4節のヘントvs オーステンデ戦。ヘントはベルギーの首都ブリュッセルから北西に約50km、電車で約30分の場所に位置し、約2万人収容のゲラムコ・アレナはほぼ満員となかなかの盛り上がり。

久保は、1トップ下の右サイドでスタート。ヘントは試合を支配しながらも相手に先制を許す苦しい展開だったが、敗戦の危機を救ったのが久保だった。73分に右からの低いクロスにうまく左足を合わせて同点弾を決めた。

このゴールは、ヤングボーイズ時代に決めた12点と合わせ、今季19点目となるもの。これにより、2015-16シーズンに18点を決めたハーフナー・マイク(デン・ハーグ)を抜き、欧州1部リーグに所属した日本人選手の1シーズン得点数(カップ戦を含む)で単独トップに立った。

続く5節のアウェー、ズルテ・ワレヘム戦。約1万人収容のワレヘムのレーヘンボーク・スタディオンの最寄り駅はタクシー乗り場さえないほどこぢんまりしていたが、さすがに優勝のかかったプレーオフだけにスタジアムの周囲は熱気にあふれ、ヘントにとっては簡単ではない試合になるかと思われた。

だが、ここでも久保がやってくれた。24分に右からのクロスを胸で押し込んでの先制弾。この久保の3試合連続ゴールでリードしたヘントが終了間際にも追加点を入れ、2-0で勝利。実に素晴らしい!

日本代表戦を含め、なぜこれほどハイペースでゴールを決めることができるのか? 久保本人を直撃すると、涼しい顔でこう答えた。

「チャンスに決められているから。それだけです。来たチャンスをしっかり決められているのが、結果が出ている要因だと思います」

ハデさはないが、シンプルかつ的確なプレーで、チャンスを逃さない。まさに〝必殺仕事人〟ともいえる働きぶりで、シュートを枠内に飛ばす技術の高さが光る。

「落ち着いて蹴れているから、枠にいっているんだと思います。ゴール前で焦っていないというのが一番の理由ですかね。言葉で説明するのは難しいんですけど、例えば強くシュートを打ってもDFの足に当ててしまえば意味がないし、GKのタイミングをずらすとか、DFが足を出してきたところを狙うとか、そういうのは意識しています」

個の力に関してはスイスより上だと感じています

スイスからベルギーってステップアップなのか!? 今年1月の移籍決定時には懐疑的な声も上がったけど、その後の活躍によって久保の市場価値は急上昇中だ

もちろん、ゴール量産についてはチームメイトや監督との相性も無関係ではない。また、スイスではゼロからドイツ語を学ばなければならなかったが、ヘントでは英語が問題なく通じるのも助けになっているという。

「チームメイトは皆優しく、ウエルカムで迎えてくれたのは大きかったですね。毎試合、メンバーやシステムが変わるので、そのなかで合わせていく難しさはありますけど、監督は常に先発で起用してくれていますし、信頼は感じます。だからこそ、その期待に応えたいんです」

スイスからベルギーへの移籍は果たしてステップアップなのかどうか、という疑問の声もあるが、久保本人はどう感じているのだろうか。

「レベルについてはよく聞かれますけど、ヘントはポゼッションを重視してボールを保持しながら崩していくチームですし、ヤングボーイズと比べても少し上というか、リーグ全体でもベルギーのほうが、特に個の力に関してはスイスより上だと感じています」

◆続編⇒来季の移籍は? ベルギーメディアが指摘したヘント・久保裕也の“問題点”

◆発売中の『週刊プレイボーイ』23号「U-20日本代表のブレイク候補たち」では、15歳の久保建英の他にも世界の大舞台でブレイクを期待したい逸材を紹介。こちらもお読みください!

(取材・文・撮影/栗原正夫 写真/アフロ)