フリー写真素材サイト「ぱくたそ」の広報兼モデルの大川氏

「ぱくたそ」というフリー写真素材サイトがあるのをご存知だろうか。「使って楽しい、見て楽しい」というキャッチコピーを軸に、一風変わった写真を多く公開している。

サイトを覗いてみると、綺麗な写真がたくさんある中にちらほら変わった写真や不思議なキャプション。そしてこの写真、どこかで見覚えが…? 

そこで今、じわじわと話題になっているこのサイトを直撃、広報兼モデルの大川竜弥さんに話を聞いた。

* * *

―そもそも、ぱくたそってどんなサイトなんですか?

大川 2011年の5月に管理人の“すしぱく”さんが始めたフリーの写真素材サイトで、今年で7年目になります。他のサイトのように「風景」や「花」といった使いやすいフリー素材はもちろんですが、それとは真逆の「こんな写真もあるの?」「いつ使えばいいの?」というような素材も定期的に載せています。

そうすることで、多くの人に「あそこは変わっている」「面白い」と思っていただければと。おかげさまで、昨年12月には単月約400万ページビューを記録しました。最近だと星野源さん風の恋ダンスっぽい画像や、生産休止が発表されたピザポテトを皿に持った画像を載せたりしています(笑)。

―確かに他とは一線を画していて目に付きますが、いつからこんな写真を提供しだしたんですか?

大川 サイトが始まって1年ほど経った2012年以降ですね。当初はごく普通の写真のみを配布していたんですが、何か変わったことができないかなと思って、使う方にとって使いやすいのはもちろん、それ以外の方にも見るだけで楽しめるようなものにできればと思い、変わった写真を載せるなど今の方向性になりました。

―いわゆる綺麗な写真を扱うのが一般的なイメージですが、そこに面白さの要素を入れ込むのはなかなか勇気がいりそう…! 写真を説明するキャプションも独特ですよね。

大川 素材のテーマに関しては、管理人のすしぱくさんの案だけではなくモデル発案の企画もあります。「誰が考える」と特に決まっているわけではないんですよ。

キャプションはサイトが始まった当初からあって、本来の「使う用途をイメージしやすくするため」のものだったんですが、そこにプラスαでユーモアのあるものをつけ始めたんです。ただ単に写真を載せておくより、「bokete」(投稿者がお題として出される写真にひと言コメントをつけられるバラエティサイト)みたいなイメージで写真と言葉の組み合わせでクスッと笑わせられないかなと(笑)。

また、それによるSNSでの拡散狙いもありますね。僕が写ってる素材写真のキャプションは大体自分でつけてるんですけど、イチオシはこれです。ゾンビだから“腐乱”というのと雑貨屋さんのフランフランをかけています!

企業コラボ以外のものはギャランティが出ないんです

―確かに、随所に笑いの要素が…。そもそも、大川さんがぱくたそに参加されたきっかけって?

大川 2011年の年末頃、モデルを募集していて。その前までは普通の企業で契約社員として働いていたのですが、事故で仕事を続けることが難しくなってしまったんです。その時、「インターネットで何か大きいことをしたい」と思って、その場の勢いで応募したのがきっかけです。フリー素材として自分の顔がいろいろなところで使われて、ネット上で知名度が上がれば仕事として成り立つにかもって思ったのが大きいですね。

―ちなみにフリー素材モデルとしてのギャランティって…?

大川 基本的に僕を含めてモデルはもちろん、スタッフみんなボランティアです。企業コラボ以外のものはギャランティが出ないんですよ。モデルをやっている人の中には、最初の頃の僕のように「フリー素材として活躍することで知名度を上げたい」「何か他の仕事につながれば」という理由で始める人もいます。また、単純に興味があってやってみたいとか、ライターさんで、昔、ぱくたその素材を使っていて、サイトにお世話になったから」なんて方もいますよ。

僕は専業のフリー素材モデルですけど、皆さんは学生をやりながらとか会社員をやりながらという方も多くて、本業が別にあるからこそ、ギャランティがほぼなくても続けてくださってるのかなと。

―でも報酬がないってなかなか厳しいような…! カメラマンさんも同様ですよね?

大川 カメラマンも同様にクレジットは入れていますが、企業コラボ以外のものに関しては報酬がないんですよ。アマチュアもプロの方もいるんですけど、アマチュアだと、まず自分の写真を見てほしいとか、それで使ってもらえたらもっと嬉しいというような自己表現的なところで参加してくださっている方が多い印象です。

プロの方もぱくたそで撮っていて仕事に繋がったというケースが結構あるみたいで。報酬がなくてもそれぞれモチベーションを持ってやってくださっているなと感じています。

―報酬は派生しないまでも、撮影を行なうと機材や衣装などでお金がかかるのでは…?

大川 そうですね。amazonギフト券で寄付の募集はしていますが、正直、収益はそんなにないですし。広告収入だけだとサーバー代などのランニグコストがまかなえるかどうかくらいなので…。実は、僕もそうなんですけど、基本的にぱくたそで儲けてやろうって人はいないんです。むしろ、手弁当でやっている面もあるくらい(笑)。でも、収益がほとんどないからこそ、儲けを出したい大手企業が参入してこないので、個人運営でも大手サイトに飲み込まれることもなく運営していくことができているんです。

同じ悩みを持っている地方自治体とコラボ

―なるほど。そういう面を含めて、運営するメリットって他にもあったり?

大川 素早く動ける点でしょうか。時事ネタの早さは自信を持っています。よくあるのが、ネットサーフィンをしていて、話題になってるなというものを見つけたら、管理人のすしぱくさんに、「これ話題になってます。いけると思います」って提案するんです。その次の日、遅くても2、3日以内には撮って、早ければ翌日に出してます(笑)。

ネットのニュースは鮮度が命なので、1ヵ月や2ヵ月後だと、やっぱり古いって思われちゃう。厳密には話題になったその日に出したいんですけど、現実的には難しいので…。でも、1週間以内なら「もうやってくれたのか」って思ってくれるんですよね。

―先日もGW中に、一般の人がtwitterで投稿して2万リツイートと話題になった「高熱の体温計」と「微熱の体温計」の写真(「連休延長」「フリー素材」というハッシュタグをつけてつぶやかれ、上司に送れば「風邪をひきました」とズル休みに使えるというもの)のオマージュが、話題になった5日後には上げられてましたよね(笑)。

大川 あれもすぐに撮りましたね(笑)。また、時事ネタでじわじわ使ってもらえる系で狙ったのが壁ドンの写真。2014年の6月、話題になり始めた頃「壁ドン撮りましょう」と提案してその月に撮ったんです。その後はずっとダウンロードし続けてもらえていて、その年の流行語大賞に入ったりとか。同じ時事ネタでも長く使ってもらえるものもあったりしますね。

―アンテナをずっと張り巡らして暮らしているんですね。その他、印象的なお仕事は?

大川 ついにここまできたのかと思ったのは、千葉県のいすみ市とコラボした企画ですね。地方自治体と個人運営のサイトがコラボするってすごくハードルが高くて。やり始めた当初から考えると、年間の予算もきちんと割り振られているような地方自治体とフリー素材を作らせてもらうっていうのは考えられないことでした。

―それほど異例なことだった…?

大川 はい。なかなかない例だったんですが、営業をかける中でヒアリングをしていると、どの地方自治体も同じ悩みを持っていることがわかったんです。例えば、ホームページやパンフレットの写真で観光名所を載せていたりしますよね。あれはプロのカメラマンに撮ってもらっているんですけど、実は権利関係がいろいろ複雑なんですよ。

お金を出して頼んでいるけれど、使用期間が決まっていたり。自分たちの自治体の風景なのに、自由に使えないっていうジレンマを抱えてるんです。でも、フリー素材として観光名所や名産を撮っておけば、うちに載せておくことでPR効果もあるし、なおかつ自分たちでも気軽に使えると。

遺影もフリー素材にしてほしい(笑)

―いいことづくめ! そして、ぱくたそにもメリットがあると。

大川 例えば、観光名所だとしても、うちが個人的にお寺の敷地内などで写真を撮るのは難しいので、許可関係がクリアできればすごく相性がいいと思うんですよね。なので、これからは地方創生にもっと力を入れていきたいですね。

―なるほど! ちなみに、大川さんの今後の目標は?

大川 僕は死ぬまでフリー素材でいることですね。すしぱくさんには、僕の遺影もフリー素材にしてほしいと伝えています(笑)。

それは極端な例ですけど、おじいさんの役とか、歳をとらないと撮れないフリー素材も撮りたいなと。だから、死ぬまでやりたいですね。正直、大金が稼げるわけではないですが、お金儲けじゃなくても、覚悟を持ってやっている人にファンはつくと思うので、そういう人でいたいなと。

今でこそないですけど、無料だから「適当にやっている」と最初の頃は言われることもあったので…。僕だけじゃなくて、すしぱくさんや他のメンバーも一生懸命やっているので、これからもたくさんの人に喜んでもらえるフリー素材を発信し続けます!

―では最後に、週プレNEWSオリジナルのフリー素材を撮らせていただいても構いませんか?

大川 是非どうぞ(笑)。

* * *

ということで、嫌な顔ひとつせずリクエストに応じてコラボ写真を撮らせてくださり、フリー素材モデルの懐の広さを実感? 進化を続けるぱくたそが、ますます多くの人を楽しませる写真を提供してくれることに期待したい!

衝撃グラビアに釘付けのフリー写真素材集モデル

巨乳グラドルの下乳を中身が見えないかと試行錯誤する男性

せっかくなので、と仕事相手の女性に壁ドンする男

(取材・文/内田静穂[short cut])

●大川竜弥1982生まれ、神奈川県出身。フリー写真素材集モデル。モデル業の他、司会業や俳優、執筆活動などマルチに活躍。フリー写真素材サイト「ぱくたそ」で広報兼モデルを務める。