顔見知りの知人男性による犯行が多いという強姦事件。※写真はイメージです

映画『それでもボクはやってない』が公開されたのは今から10年前のことーー。

痴漢冤罪の恐ろしさを描いた名作だが、今、それよりももっと怖い冤罪事件が増えているという。

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ここ最近、痴漢と疑われた男性が線路内へ逃走するというニュースが連日のように報道された。仮に、もし痴漢行為をしていなかったとしても、無実を証明するのはとても難しい。

そして、逮捕されてしまうと、警察の取り調べ(48時間以内)、検察へ送致されて検事からの取り調べ(24時間以内)、勾留(こうりゅう・最長10日間)、勾留延長(最長10日間)と、最長で23日間も留置されてしまうのだ。それだけに、痴漢を疑われると、全力で逃げてしまう人間が後を絶たない。

「でも、実は、痴漢冤罪よりも、もっと怖い事件があるんです。それが強姦(ごうかん)冤罪です」

そう警鐘を鳴らすのは、週刊プレイボーイ本誌で裁判傍聴コラムを連載していたフリーライターのJazzyさんだ。

強姦とは、「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫(かんいん)」(刑法第177条)すること。簡単に言えば、暴力や脅迫を用いて無理やりセックスをすることだ(13歳未満の女性に対しては、同意の上でも強姦になる)。

平成28年版の『犯罪白書』によれば、27年度(2015年)の強姦の認知件数は1167件となっている。

「一般的に、強姦というのは、夜道などで知らない男の人にいきなり襲われるという、通り魔的な行為だと思われがちです。しかし、実際の強姦事件は、顔見知りの知人男性による犯行がとても多いのです」(Jazzyさん)

実は無理やりのレイプ以外に、例えば以下のようなケースも多いのだ。仕事や趣味で知り合った女性と食事に行き、そのままベッドイン。男は幸せな時間を過ごしたが、後日、突然警察が自宅を訪れて逮捕。「同意の上だったのに…」と容疑を否認するも、起訴されて法廷で裁かれる…。

これまでに30件以上の強姦裁判を傍聴してきたJazzyさんによれば、「明らかに冤罪の可能性が高い強姦裁判もいくつかありましたが、私の知る限り無罪を勝ち取ったのはたったの1件だけです」とのこと。

強姦の裁判が冤罪を生みやすい理由

では、なぜ強姦の裁判は冤罪を生みやすいのか。Jazzyさんが続ける。

「性犯罪は目撃者がいないことが多く、被害者の証言が決定的な決め手になってしまうのです。ですから、性行為をした事実があるなら、強姦のデッチ上げは簡単にできると私は考えています。そのあたりが、冤罪を生みやすくしている理由ではないでしょうか」

強姦に限らず、日本では起訴されたら100%に近い確率で有罪になってしまう。性犯罪の解決に実績のある春田藤麿(ふじまろ)弁護士が解説する。

「一般的に、検察は『起訴されたら有罪になる』という高い確信を持って起訴しています。なので、事件の真偽はともかく有罪にできるだけの証拠をそろえているんですね。ちなみに、強姦の場合は、3年以上の有期懲役に処されます」

強姦は女性の心と体に大きな傷を負わせる重罪で、初犯でもほぼ執行猶予がつかない。しかし、これが冤罪だったとしたら…。考えただけでも冷や汗が出てくる。

『週刊プレイボーイ』24号「痴漢冤罪より怖い!! 強姦冤罪の実態」では、強姦冤罪のケースを傍聴をもとに紹介。こちらも是非お読みください。

(取材・文/浜野きよぞう)