子供ガイドのアベを雇い少数民族のマーケットへ!

ついにエチオピア最大の魅力「少数民族」に会うため、今日も朝5時から1日1本しかない長距離バスに乗り込んだ。

約80以上の民族がいると言われているエチオピア。特に南部に点在する村々では曜日によってマーケットが開催されているので、我々旅人はそこに行けば民族に会うことができる。

その中でも特に奇抜な“唇にお皿をはめ込んだムルシ族”が見たかった私は、まずはその拠点となる「ジンカの火曜マーケット」に狙いを定めた。

…と、その前に、途中のバスの休憩でコンソ族の村に寄ると、コーヒーでボったくられそうになりました。

「お会計はえっと10ブル…、いや100ブルだ! 100ブル!(約500円)」

はて? ここはスタバですか? ここの物価でそれはありえないし、100は言い過ぎ! ボったくるの下手すぎるでしょう(笑)。思わず笑ってしまい、別の店員にもう一度聞くと、結局、6ブル(約30円)になった。ホントにもうっ、油断するとすぐ欲を出してくるんだから!

全く読めないメニュー。コーヒーは10ブルかと思ったけど、なんだったんだろうか

コンソ族の特徴は、頭のバンダナと二段になったフレアスカート

そしてお昼過ぎにやっとジンカに着くと、宿スタッフのツアーの勧誘がしつこく、私はランチに行くからと言って外へ逃げ出した。

すると、10~12歳くらいの子供がなんと日本語で話しかけてきた。

「ねえ。ニホンジンでしょ? トライブ(民族)見に行く? 僕の名前はアベだよ」

アベ! でた、子供ガイド!! 私はこの子を知っていた。

実は、村のマーケットに行くには、観光客は基本的に現地ガイドを雇わなければいけないルールがある。入村料のやりとりや通訳、現地までの交通手段などを手助けしてもらうのだが、ジンカには子供ガイドがいると聞いていて会ってみたいと思っていたのだ。

こんなすぐに会えるとは運命的? なんて、観光客を待ち構えていたからだろうけど、アベは身長も同じくらいで親近感わくし、なんだか私はこの出会いにトキめいた。

取れかけの熊のアップリケの付いた、穴あきスウェットパンツをはいた少年アベ(少年アシベではありませんよ)

しっかり者でかわいいアベ

「アベって日本の名前だね。日本のエライ人と同じ名前だよ。アベもどこかの民族なの? 学校は? お母さんは?」

「僕はアリ族だよ。学校は朝行って、その後、ガイドをしてる。お母さんは家で妹の世話をしているよ」

アベは英語が上手で、観光客から学んだ日本語やスペイン語も少し話せたりと、なかなか優秀だった。

私が見たがっているムルシ族については、数年前、アリ族との抗争があって以来、ジンカの火曜マーケットに来なくなってしまったというが「でも、今日やってるカコマーケットならいろんな民族が来るし、たまにだけどムルシ族も来ることもあるから今から行く?」とナイスな提案。それに大人の勧誘と違って、嫌味がないのはなんでだろう。カワイイぜ。私は子供ガイドを雇うことにした。

早速、ミニバンを捕まえると、アベは集金係のお兄さんに「10ブルね」と即座に確認をとってくれた。やはりこういう時、自分で交渉するとぼったくられたりいちいち面倒だけど、子供とはいえガイドがいると安心だな。

ミニバンは混んでいたので「膝の上に乗る?」と聞くと、チョコンと座ってきた。やっぱりカワイイぜ。私はすっかりアベを信頼し、頼りにしていた。

カコマーケット

マーケットに着くと、青空の下では野菜や穀物、洋服やタイヤでできたサンダル、バケツ類やナイフ、それから携帯電話も売られている。

買い物をしている人たちはアベと同じで見た目に特徴のないアリ族が多かったが、そこで目に飛び込んできたのは…バンナ族! 赤土を練り込んだツイストヘアーやヘルメットをかぶった女性、派手なビーズの装飾を頭や腕に付けているオシャレな男性たち。

彼らは必ず木の椅子を持ち歩いているのが特徴で、疲れたらそれに座り、時には枕にもなるらしいけど…彼らにとってはスマホを持ち歩くよりも便利なんだろうな(笑)。

バンナ族の持っている木の椅子・枕。なんだか時代劇に出てくる、高い枕を思い出した

買い物に夢中のバンナ族

タイヤでできたサンダルは丈夫だよとすすめられた

とりあえず誰かに話しかけてみようと、座り込んでいる女性たちに近寄ると「ネックレスちょーだい、腕時計ちょーだい」と私の持ち物に興味津々。

それはあげられないけど、5ブル(25円。撮影チップの相場)払うから写真撮らせてよとアベに通訳してもらうと、断られたり渋々撮らせてくれたり、時には笑顔をくれたりと様々だった。

座り込む女性たちと絡むマリーシャ

ヘルメットをかぶったバンナ族

民族少年。バンナ族とハマル族は似ているというけどどっちかな

アベ、まさかの仕事放棄?

それから小さな小屋にある、一応「バー」と言われているところへ行くと、人々が「チャカ」と呼ばれるローカルビールを飲んでいた。

「おまえさんも飲んでみい」と、ココナッツみたいな丸くて大きい器を差し出してくれたが、入っていたのは茶色というか灰色の怪しい液体。お腹が心配だったけれど、舐めるようにしてひと口だけいただいた。

酸っぱい! インジェラに続き、またもや発酵した味で、ついでにぬるいし、砂のようなものがジャリジャリしている。しかしせっかくのおもてなし! 私は作り笑顔で「コンジョ(グッドの意味)! コンジョ! コンジョ! 根性!」と、もうひと口。

アベはそれを見ながらニヤニヤしていたが、私が酔っぱらいの男に絡まれると「クレイジーだ! もう行こう!」と助けてくれた。やるな、アベ。

ローカルビール「チャカ」

ずーっと後をついてきていた子供たち

結局、ムルシ族はいなくて心残りだったけれど、アベのおかげで楽しいマーケットツアーができた。

しかし、帰りのミニバンはアベがいるにも関わらず、なかなか乗せてもらえなかった。子供ガイドだから舐められるのか、100ブルと高値を言われたり邪険に扱われる。そういえば、子供ガイドが低料金でガイドしてしまうため、それを良く思っていない大人ガイドがいたり、対立があるなどという話を聞いたことがある。

もしかしたら、そういったことでアベは乗せてもらえないのかもしれない。悲しそうな顔をしているので、私はちょっと気を遣って優しく尋ねてみた。

「アベ? 疲れた? 大丈夫? このミニバンはいくらだろうね?」

すると、アベはもう声を出さず、お手上げのポーズ。さすが、子供! ついにここで仕事放棄(笑)。結局、値段のわからないミニバンに乗り込むと、20ブルだったのでホっとしていたら、今度はタイヤがパンク…。やれやれ。

ハプニングが起きながらも無事、ジンカに戻ると、アベは別れ際を惜しむこともなくガイド料を握りしめて消えていった。

アベにとっては私はたくさんの観光客のひとり。きっとすぐに私のことを忘れてしまうんだろうな。そう思うと少し寂しい気がしたけれど、私は彼がガイドで本当によかったし、何しろカワイくて癒された。

緊張感が抜けなかったエチオピアで、やっとすごく楽しいと思えた時間だった。アベだって、いつかは大人ガイドになるし、いつまでもカワイいってわけにはいかないだろうけど、大きくなっても純粋な気持ちを忘れずに良いガイドに育ってほしいな。

いつかまたアベに会いたい。インジェラのように甘酸っぱい1日を思い返しながら、私は今日も南京虫避けのビニールに包まれ『ツイン・ピークス』スタイルで眠りについた。

定番スタイルにさらに銀シートをひいてみました。完璧

第146回「唇のお皿が大きいほど美人! ピン札しか受け取らない“気高き”ムルシ族のド迫力っぷりとは…」

【This week’s BLUE】カコマーケットの外にある小売店で買い物をするバンナ族たち

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】  instagram【marysha9898】