各選手が所属クラブでアピールをしてほしいと語るセルジオ越後氏

東京五輪世代が貴重な経験を積んだ。5大会ぶりに出場したU-20W杯で、日本はグループリーグを突破。続く決勝トーナメント1回戦で、ベネズエラに延長戦の末に0-1で敗れたものの、最低限のノルマはクリアしたといっていい。

ただ、延長戦で敗れたベネズエラ戦の結果は仕方ないとしても、欲を言えばグループリーグ3戦目のイタリア戦(2-2)は最後まで勝ち点3を目指して戦ってほしかった。相手はコンディションが悪く、後半に入ってからは極端に運動量が落ち、自陣に引いて守るだけ。ボールを奪っても攻めようという意識はなかったからね。

確かに、引き分けでもグループリーグを突破できたのだから、無理をして攻める必要はなかった。でも、積極的に攻めればチャンスはつくれたと思うし、選手交代のカードを一枚も切らなかったのは理解不能。それこそ久保(FC東京U-18)を切り札として使ったら面白かった。イタリアに勝ち切れば、さらに大きな自信を得て日本に帰れただろうから少しもったいなかった。

選手個人で目についたのは、DF中山(柏)とMF堂安(G大阪)のふたり。

主将の中山はCBとしての対人能力を備えているのはもちろん、相手にプレッシャーをかけられても、慌てずにゲームを組み立てられる冷静さが光った。ボランチの選手にボールを預けられ、彼が攻撃の起点となる場面も何度も見られた。まるでひとりだけオーバーエイジの選手が交ざっていたような感じ。

左利きというのも大きな魅力だ。現時点でもA代表で十分通用すると思う。W杯最終予選のイラク戦(6月13日)に向けて招集されたCBの選手たちと比べても、吉田以外の選手と差はないよ。

メディアは15歳の久保を持ち上げすぎ

グループリーグで3得点の堂安は、賢いプレーをする選手だね。ボールを持ったらすべて自分で勝負するのではなく、周りにいる選手をうまく使って、パス交換しながら仕掛けていた。視野が広くサイドチェンジのロングパスも出せる。

それでいて、常にゴールに向かう姿勢を見せた。エースの小川(磐田)が2戦目のウルグアイ戦で負傷離脱したことで、自分が得点を決めなければという気持ちを強くしたのだろう。それがプラスに働いた。

今大会での活躍を受け、モナコなど海外のクラブが、堂安の獲得に興味を持ったという報道も出ている。個人的には移籍は時期尚早だと思うけど、国際舞台で活躍して関心を持たれるのは素晴らしいこと。G大阪に戻ってもアピールを続けてほしい。

大会開幕前も開幕後も、メディアは15歳の久保ばかり取り上げていたけど、やっぱりちょっと持ち上げすぎだったね。彼は雰囲気を持った選手だし、時折光るプレーを見せたけど、特別な活躍をしたわけじゃない。スポーツニュースで、彼のプレー映像ばかり流していたことには違和感を覚えた。そういった注目のされ方は本人のためにならないよ。

今回、日本は決勝トーナメント進出を果たしたものの、世界との差はまだ大きい。選手たちも実感したはず。3年後の東京五輪に向けて、その差をどう埋めていくのか。まずは各選手が所属クラブでアピールをしてほしい。

また、東京五輪は開催国なので予選が免除される。日本サッカー協会も、今回の結果に慢心することなく、積極的に海外遠征を組むなどこの世代の強化に力を注いでほしい。

(構成/渡辺達也)