バンナ族のおじちゃんが作った帽子をかぶってゴキゲンなマリーシャ

ピリピリと気を張っていたエチオピアとも、ついにお別れの時がきた。

酸っぱいインジェラの味、営業上手な子供ガイド、ちょっとがめつい少数民族(笑)。世界一周している中でも個性の強い国でした。

近年は中国の投資もあって経済成長が続いているけれども、2017年になる今もなお、アフリカ最貧国のひとつ(GDP統計)。まだまだ発展途上な部分も多く、TOKYOから来た私はちょっとした未来人のような感じで浮いていた。

そして南京虫対策でビニールに包まれて寝る私の姿も、またSFチックであったのだが、ある朝目覚めると、その日はなんと…2009年だった!?

B級SFっぽい? 睡眠時の南京虫対策は本当に毎日必死だった

実は、エチオピアには独特な暦がある。

私たちが普段使っている西暦(グレゴリオ暦)は、1年が365日で12ヵ月に割り振られているけれども、エチオピア暦ではなんと1年が13ヵ月あるのだ! 1ヵ月を30日として(30日×12ヵ月=360日)、残りの5日間を「13月」として数えているのだそうです。

これは宗教によるキリスト誕生年の解釈が違うことからきているそうで、そこには7、8年の差が生まれている。つまり、西暦2017年はエチオピア暦では2009年だということになるってわけ。

う~ん、我が国、日本でも和暦という日本固有の紀年法があるので、わりとすんなり受け入れられる気もするけど…(現在2017年は平成29年。私はこれをいっつも忘れちゃうもんで、書類とか書く時に面倒だな~と思ってる!)

しかし困ったことに、エチオピア暦の仕組みだと、年だけでなく月や日にもズレが生じ、非常にややこしい!

例えば、「2017年4月6日」のバスチケットを買った時、日付欄には「28/07/09」と書かれていた。当時、エチオピア暦についてよく知らなかった私はパニックを起こしたが、これはエチオピア暦で「2009年7月28日」を表していたのだ。

バスのチケット

ジンカ村の飲食店の壁にあった古いカレンダー

めくられてないけど今年のカレンダー

エチオピア時間では午前6時が0時

そして紛らわしいのは暦だけじゃない! 時間もまた独特な数え方で、「エチオピア時間」というのがあるのだ!

バスのチケットを今一度見てみると、出発時間は「11:00」と書いてある。エチオピアのバスは法律で夜の出発が禁止されているので、「11:00」といえば、お昼を想像するのが自然でしょう。

しかし、これはなんと早朝「5:00」のことなのである! おったまげー!

数え方はつまり、こういうことーーエチオピアでは1日のスタートとなる午前6時が0時。そこから午前7時が1時、8時が2時…とカウントされ、夕方18時が12時となるわけだ。

バスの時計を見て!23:24=早朝5:24のことなのよ!

実際に朝、バスに乗り込むと車内の時計は「23:24」と表示されていた。

なんだか、朝だか夜だかわからない非常に不思議な感覚に陥ったが、0時を過ぎると「コケコッコー!」と誰かがバスに乗せた鶏がしきりに鳴き始め、エチオピアの1日が始まるのを感じたのだった。

ちなみに、私たちの時間の数え方はヨーロッパ時間(インターナショナル時間)と呼ばれているのだが、それが使われている場合もあるので紛らわしく、マジでコンフューズ

静かなバスの中、鶏だけがしきりに鳴いているその空間はなかなかシュール

チキンはホリデーのご馳走。マーケットで売られている

そんなこんなでエチオピアの2009年を過ごした私だけど、そろそろ2017年の世界に戻らなければ…。

次の国へ行くために、まずは首都アディスアベバに帰ってくると、そこは村から帰ってきた私にとってすっかり都会に見え、まるでちょっと未来に戻ってきた気分。なんとか無事にエチオピアも終われそうだなと、「ホッ」としたその時だった。

敵が現れた!!

最後の最後で、少年スリに…

日中の人通りの多い中、バックパックを担いでバスを降りると、すぐに小学生くらいの少年2人組が私の後をつけてきたのだ。

村で出会った少年アベとは明らかに違う、寂しげかつ攻撃的な凄みを潜ませた表情(かお)のストリートチルドレンだ。彼らは私の前に本のようなものを広げて「マネー、マネー」と言ってくるのだが、もちろん私は「NO」と断る。バックパックを担いでいる時は身動きが取りづらいので「厄介だな、こりゃあ危ないぞ」と宿へ急ぐ。

すると突然、小さいほうの少年が私の左腕をグワシと掴んできた! その掴み方は尋常ではない力強さで、なかなか離してはくれない。

危機感を感じ、「触らないで!」とちょっと怒鳴り気味に言って腕を振り払ったが、今度はもうひとりが背中を思いっきり突き飛ばしてきて、私はコケそうになった。子供相手とはいえ怖かったが、少年たちのほうを向いて睨み合ったーー。その様子を見て笑っている女性もいたが、やっと「やめなさいよ」くらいの軽い感じで大人の男性に助けてもらうと、私は小走りで少年たちから逃げ出した。

アディスアベバのバス到着地。この付近で子供のスリに遭う

久々のドラクエ的状況に心臓をドキドキさせて宿に着くと、カメラを入れていたショルダーバッグの口が開いてるー!

「ああ! やられた! スリだったのか!」

左腕を掴まれたことに気をとられて、体の右側がノーガードになっていた時だろう。せっかくの旅の思い出が盗まれてしまったのではないかと愕(がく)然としたが、バッグを探ると運良くカメラは無事。盗られていたのは100円ショップで買ったミニライトと日記用ノートだけだった。

被害が少なかったので諦めはついたのだが、やっぱりアフリカの旅は甘くないぜ。

こうして最後の最後でアクシデントに見舞われた“2009年エチオピアの旅”を終え、デロリアン…ではなく飛行機に乗って、私はケニアへと飛んだのだった。

エチオピアのみなさんありがとう

第148回「ケニアのスラム街を抜け、絶景隠れ家ビーチを発見! 沈没寸前で現れた敵とは…?」

【This week’s BLUE】エチオピアにはサッカーユニフォームを着ている人がとても多かったな~。●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】