最強のオカルト評論家・山口敏太郎氏

いよいよ夏直前! 夏に見たいものといえば、身も心もひんや~りする不思議なオカルト写真。

ということで、最強のオカルト評論家である山口敏太郎氏がオカルト界の「ウラ側」を語る!

* * *

―近年のオカルト界と、昔のオカルト界の違いってあるんですか?

山口 20世紀後半と、現在のオカルト界の大きな違いは「多様性」ですね。昔は「ツチノコ」や「ネッシー」みたいな大きなトピックで話題になっていたでしょう。それが今のオカルトはどんどん細かくなって、話題が多様化してきたように思います。

―それはなぜですか?

山口 インターネットの出現です。人々がいろんなところから情報を発信し、収集できるようになってきたことが、細分化した大きな理由のひとつですね。

―オカルト界も、雑誌やテレビ中心の時代から、ネットの時代に変わったってことですか?

山口 そう。僕が運営するオカルトニュースサイト『アトラス』なんかは、最高で一日9万アクセスビュー、最低でも3万、4万アクセスビューはいきます。

―それによって、人々のオカルトの見方も変わった?

山口 ええ。昔は、海外のジョーク記事を和訳して、そのまま日本のオカルト情報誌に載せていたんですよ。

―あ、そうなんですか?

山口 それを僕らオカルトファンは、純粋に信じていた。で、大人になって海外のもとの記事を読んで、初めて「あれ? これってネタじゃん!」と気づいたんです(笑)。

―ずいぶんテキトーというか、牧歌的だったんですね。

山口 まあ、数十年前は人々がオカルトに対してウブでしたよね。ユリ・ゲラーや宜保愛子(ぎぼ・あいこ)を信じていたんですから。でも、だんだんみんな「あれ? おかしくない?」って気づいてきた。で、90年代、オウム真理教事件にとどめを刺されて、「オカルトなんて存在しない」という時代がやって来ます。

―オカルト界にとって厳しい時代がやって来た?

山口 そうですね。そこで僕は約20年前、「嘘のオカルトは嘘だと一刀両断にしてしまう」というやり方を始めたんです。

「オカルト界の前田日明になろう!」と決めたんです

―そんなことをしたら、業界内でのバッシングはスゴかったんじゃないですか?

山口 そのとおり。でもほら、前田日明(あきら)が80年代、八百長疑惑のあったプロレス界を、どう立て直したかって、真剣勝負のプロレスをUWFでやったからじゃないですか。だから僕も、「オカルト界の前田日明になろう!」と決めたんです。

―プロレス界からヒントを得ていたとは(笑)。で、山口先生も勝機をつかんだわけですか?

山口 ええ、2005年に『本当にいる日本の「未知生物(UMA)」案内』(笠倉出版社)という本を出しまして。そこでUMAをボロクソに書いてやったんですよ(笑)。同業者には相当叩かれましたけど、高校生や大学生にバカ売れして。正直、儲かりました(キリッ)。

―素晴らしい(笑)。

山口 オカルトは、いかにリアリティを見つけるかにかかっているんですよ。例えば、瀬戸内で虚空太鼓っていう怪奇現象があって、毎年6月頃になると、海の彼方から太鼓の音が聞こえるっていうんですよ。で、あるときクジラの本を読んでいたら、クジラが死んでしばらくすると、体内にガスがたまると。そして、「ボン、ボン」と音を立てて破裂すると書いてあったんです。そこから、虚空太鼓はクジラの破裂音だと解釈できました。

―そこまで科学的に考察されているわけですか。

山口 オカルトに関係ないことを勉強していると、不意にオカルトの真相につながることがけっこうあるんですよね。いろんな学問の知識を使って謎を解いていくと、またその先に、さらなる謎が出てくるんです。

―終わりのない戦いですね?

山口 僕はオカルトをもっと知的な分野にしたいと思っています。オカルトを研究している人が変な人だと笑われるのが悔しいんですよ。本当は、他分野の知識も、ガセ情報を見極める情報リテラシーも必要なんです。

―最近取り組んでいる謎ってあるんですか?

山口 ええ。「ソロモン王の失われたアーク(聖櫃[せいひつ])」ですね。第2次世界大戦中に日本陸軍が探し回っていたといわれています。元軍部関係者に取材してもよくわからないので、今度、徳島へ掘りに行く計画を進めているんですよ!

―カッコいいっス(笑)。ちなみに週プレでやってみたいことはありますか?

山口 昔、荒俣宏さんの『日本妖怪巡礼団』って連載があったでしょ? 実は荒俣宏さんのまねをして今の僕がいるというくらい尊敬してるんです。だから週プレさんで、ぜひ山口敏太郎版の『日本妖怪巡礼団』をやりたいですね!

『週刊プレイボーイ』27号「このオカルト写真がガチでヤッベェ~!!!」では、UMA、ミイラなど、ミステリー写真を大公開しているので、是非ご覧ください!

(取材・文/鴨居理子 撮影/本田雄士)

●山口敏太郎(やまぐち・びんたろう)1966年7月20日生まれ、徳島県出身。作家、オカルト評論家。神奈川大学卒業後、日本通運入社。96年に作家デビュー。テレビ、ラジオなどに多数出演