事前の準備、メンバー構成次第では、もう少し戦えたと語るセルジオ越後氏

続出するケガ人の対応に追われただけ。采配以前の問題が多すぎた。

勝てばロシアW杯出場に限りなく近づけた最終予選のイラク戦は、1-1の引き分けに終わった。その直前のシリア戦で香川が負傷してチームを離脱。山口も足を痛めて欠場。故障明けの今野もベンチスタート。試合が始まってからも、井手口、酒井宏が相次いで負傷交代。久保も後半途中から足を引きずっていた。

相手はグループ下位ですでにW杯出場は絶望的。なんとしても勝ち点3を持って帰りたかったところだけど、ベストメンバーを組めず、負傷交代のアクシデントで切り札の乾を使うこともできず、内容的には負けてもおかしくなかった。むしろ、よく引き分けに持ち込んだ。それほど低調だった。

ただ、ケガやアクシデントは仕方ないにしても、試合に向けての準備、招集メンバーには大きな問題があった。

海外組は長いシーズンを終えたばかりで疲労がたまっているのに、ほとんど休暇も与えないまま合宿を開始。1日に2回練習するなど強い負荷をかけたと聞く。国内組にしても、今野などベストじゃない状態の選手を招集した。また、サプライズで初招集した加藤に至っては、中盤にケガ人が続出したにもかかわらず、イラク戦はベンチ外。なんのために呼んだのかな。事前の準備、メンバー構成次第では、もう少し戦えたのにという悔いが残る。

選手個々でいえば、久々にスタメン復帰した本田は、よくボールに触っていたし、右サイドでポイントになっていた。ただ、決定的な仕事は、先制点につながったCKと試合終了間際のシュートくらい。一番よかったときのプレーと比べると、やっぱり物足りなかった。また、新エースとして期待していた久保はシリア戦同様にキレがなく、今ひとつのデキだったね。

パッとしない攻撃陣の中では、大迫がよかった。先制点はもちろん、その後も前線で走り回ってチームに貢献した。最後はスタミナ切れを起こしていたけど、あれは仕方ない。

日本は依然としてグループ首位。でも、余裕はない。

守備陣では、ボランチに抜擢(ばってき)された井手口と遠藤が及第点。ともに今回の最終予選は初出場。攻撃面はともかく、持ち味の守備は安定していた。特に遠藤は、所属する浦和ではずっとDFとしてプレーしているのに無難にこなしていた。

失点の場面はみんな足が止まっていたね。吉田や川島の対応に問題がなかったとはいわないけど、あれだけ自陣でボールを回されたら、ああいうことも起こりうる。

日本は依然としてグループ首位。でも、余裕はない。勝ち点1差で2位にサウジアラビア、3位オーストラリアが迫っている。そして残り2試合は、この両チームとの対戦だ。

次のホームでのオーストラリア戦(8月31日)に勝てば、ロシア行きが決まる。でも、負ければ、最終節のサウジ戦(9月5日)はアウェーで、厳しい試合になるのは間違いない。やはり、オーストラリアに勝って決めたい。

8月末といえば、海外組は新シーズンが始まったばかり。本田や原口などはどこでプレーしているのかもわからない。コンディションにもばらつきがあるだろう。長期離脱中の長谷部の回復状況も気になる。国内組にしても、夏場の疲れが出てくる頃だ。だからこそ、今回の教訓を生かした準備、選手選考ができるかがポイントになる。

(構成/渡辺達也)