御年80歳の大ベテランながら、小僧たち(週プレライター)を前にしてもとことん謙虚な姿勢。これぞ生けるレジェンド

「オッス! オラ悟空!」

現在の週プレ世代はこのお方の声で育ったといっても過言ではない。それどころか、今も毎週日曜の朝9時、わが子と一緒にテレビにかじりつき、悟空の戦いにワクワクしている方もいるだろう。

『ドラゴンボール』の孫悟空役などでおなじみの野沢雅子さんにインタビュー!

■高いプロ意識ゆえに今も仕事へは電車!

伝説、週プレに降臨! 『ドラゴンボール』シリーズ(86年~)の孫悟空役でおなじみの声優、野沢雅子さん。

数多くの東映アニメ作品に携わってきており、東映アニメ60年の歴史において50年以上も引っ張ってきたまさに“生けるレジェンド”なのだ!

―まず野沢さんと東映アニメ作品の出会いは?

野沢 1963年にスタートした『狼少年ケン』が東映作品のデビューですね。その後『ゲゲゲの鬼太郎』(第1・2作、68年~)の鬼太郎、『ドロロンえん魔くん』(73年~)のえん魔くん、『銀河鉄道999』(78年~)の星野鉄郎と主演を務めさせていただきました。

―いきなり話が脱線しますが、野沢さんは普段の声も悟空(大人版)なのですね!

野沢 今、『ドラゴンボール超(スーパー)』のアフレコ終わりなので、特にそうなのかもしれません(笑)。私はスタジオに入ったときから、もうそのキャラになりきっているタイプなので。だから仕事場にいるときは、普通に会話しているつもりでも男っぽいしゃべり方になっていたりするみたいです。

―いわゆる憑依(ひょうい)型の演じ方なんですね。

野沢 そうかもしれないですね。あとは電車に乗っているときに、人間観察をして役作りに生かしていますよ。

―え!? 今でも電車に乗られるんですか?

野沢 乗ってますよ~、いつも(笑)。プロとして遅刻は許されないことですから、車で渋滞に巻き込まれないように仕事場へは電車で行きます。

8分だけ遅刻して…それが今でも心残り

―すさまじいプロ意識の高さ! 今年1月31日に孫悟空役として「ひとつのビデオゲームのキャラクターを最も長い期間演じた声優」「ビデオゲームの声優として活動した最も長い期間」としてギネス世界記録に認定されたそうですが、“世界一”のプロ意識は伊達じゃない!

野沢 「私はギネスに載るまでやるから!」って冗談ではよく言っていたんですけど、本当に実現するとは思ってませんでしたね。これも何十年と、一度も現場を休まず元気に演じてきたおかげかもしれませんね。

―なんと! 「野沢雅子はデビュー以来、一度も仕事を休んでいない説」は本当だったんですね!? ということは…「野沢雅子は自宅が火事になっても仕事に来た説」も真実!?

野沢 ありましたね、そんなことが(苦笑)。アフレコの前日にご近所の家から出火して、私の家も全焼してしまったんですよ。だからその仕事の日は、警察から事情聴取を受けていて。急いでスタジオに駆けつけたんですけど、8分だけ遅刻してしまって、それが今でも心残りです。

―いやいや! いやいやいやいや! 自宅が丸焼けになった翌日に8分遅刻したって誰も怒らないですよ!

野沢 いえ、どんな理由があろうと遅刻は遅刻ですよ。

―お、男らしい…。野沢さん自身が“男前”だからこそ、悟空や鬼太郎や鉄郎のようなカッコいいヒーローを演じられるのかもしれない!

野沢 私の演じるのはカッコいいキャラが多いですからね。でもいただく役は悟空も鬼太郎も鉄郎も決して二枚目ではないんですよ。私、イケメンって演じたことなくて(笑)。泥くさく戦ったり、傷つきながら仲間を守ったりっていう“生き方”のカッコよさがあるキャラが多いんですよね。

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(取材・文/牛嶋 健、昌谷大介[A4studio] 撮影/下城英悟)

●野沢雅子(のざわ・まさこ)『ドラゴンボール』シリーズで孫悟空、悟飯、悟天の3役を演じる。ほかの東映アニメ作品では『ゲゲゲの鬼太郎』『墓場鬼太郎』の鬼太郎役、『銀河鉄道999』の星野鉄郎役などでもおなじみ。青二プロダクション所属