ストレッチと瞑想を組み合わせた「疲労回復」プログラムを体験。果たして記者の疲れはとれたのかー?

人のやる気を奪う“疲れ”。当然、日々の疲れは解消しておきたいところだが、 日本初の“疲労回復”を謳(うた)うジムがオープンした。

体を鍛えるジムは数限りなくあるが、疲れを取るとは一体、どういうことなのか。実際に体験し、話を聞いてみた。

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訪れたのは東京・千駄ヶ谷の「ZERO GYM」。普通のジムとは違い、トレーニング機器は一切ない。やたらオシャレな空間だ。そして何より、インストラクターの松尾伊津香(いつか)さんがキレイだ。

この日、体験したのは75分のプログラム。ストレッチから始まり、自重トレーニング、ヨガ・瞑想、そして脱力という流れだ。

開放感と高級感あふれるスタジオ

笑顔の素敵なインストラクターの松尾さん

「では、あぐらを組んで背筋を伸ばしていきます。背骨をひとつひとつ上へと積んでいくように。しばらくこのままリラックスしましょう」(松尾)という声でスタート。背筋を伸ばせと言われると胸を張りすぎてしまったり、骨盤が下がってしまったりするが、こう言われるとイメージが湧いて、わかりやすい。

しかし、猫背の記者にとってはこの体制をキープするのがツラい。背中と腰辺りの筋肉を引き締めていないと、すぐに背中が丸くなる。正直、リラックスどころではない。

ようやく解放され、そこからは10分ほど各部位の筋肉を伸ばしていく。この時、呼吸は「なるべくお腹から大きく吸いましょう」と腹式呼吸をするように指示される。BMI26の肥満体型だからなのか、この時点で若干汗ばんでいた。

スッと伸びた背筋のお手本。さすがキレイです

「脱力」プログラムで一瞬で寝落ち

そして、プログラムは自重トレーニングへ。腕立て伏せのような体制をキープしたり、よつんばいの状態で片手片足を上げたりと、体幹トレーニングのようなメニューが続く。

途中で休憩はあるが、はっきり言って運動不足の記者にとってはキツイ。ストレッチの時点では松尾さんにちょいちょい見惚(みと)れていたが、もうそんな余裕は当然ない。全身からじんわり汗が流れ、疲れを取りに来たはずなのに疲れている。先ほどのストレッチがツラかったこともあり「詐欺じゃないか」と内心感じていた。

リラックスしに来たはずなのに、なかなかハードだ…

10分ほどのトレーニングが終わり、次は瞑想の時間だ。目を閉じて姿勢を正すと早くなっていた呼吸も整っていき、積み重なった疲労からか頭はぼんやりして松尾さんの声だけが響く。「自分の欲や感情をコントロールし、今この瞬間に意識を向け、呼吸をまずはコントロールします…」

“お腹の風船”を意識して呼吸。吐く息では風船がしぼんでいくように…

「それでは、横になってください」と言われ、最後のプログラム・脱力。ここでは手と足を開き仰向けになるだけ。恥ずかしながら記者は一瞬で寝落ちしてしまった。

松尾さんの声で目覚めると、不思議なことにマッサージ後のような感覚。少し体はだるいものの、疲れてはいないのだ。寝てしまったせいか定かではないので、プログラムが終わり、松尾さんに聞いてみた。

―寝ちゃってスイマセンでした。抵抗する間もなく、気付いたら寝てました…。

松尾 半数の方は寝てしまいますね。これは、副交感神経が優位になって脳が緩んだ証拠です。いま頭がぼーっとしていると思いますが、それがまさに脳が緩んでいる状態ですよ。

―最初は疲れたんですけど、終わったら疲れが取れていて「あれ?」と不思議でした。

松尾 普段使わない筋肉や関節を刺激しているので、あまり運動をされてない方には、初めはきついかもしれません。翌日、筋肉痛になる人もいますよ。でも回数を重ねるごとに軽減されていきます。血流を一気によくすることで、溜まった老廃物が流れていく効果も期待できます。体には締めなけらばいけない部分と緩めなければいけない部分があり、それをストレッチとトレーニングで行なっているんです。

先に体を疲れさせ、脳を緩みやすくする

―トレーニングで体が疲れた後に瞑想をするのは?

松尾 いきなり「無」の状態や瞑想をするのは難しいと思います。だからプログラムでは先に体に集中させることで、考え事をしない状態にします。そのあと静寂の中で瞑想することで脳が緩みやすくなるんですよ。ですから、「ほぐす(ストレッチ)→流す(自重トレーニング)→緩める(瞑想)→抜く(脱力)」という連動性に意味があったんです。

―そうだったんですね。無の状態になったかはわかりませんが、ぼーっとして寝てしまったことは確かです。

松尾 集中しやすい環境を作っているので、雑念も消え、頭も休めたのだと思います。あとは正しいやり方でやることも大事ですよね。インストラクターが指導することで、力の抜き方や正しい姿勢の作り方、瞑想での脳の緩め方がわかるようになり、“自己整体力”も手に入れられるんです。

頭を下げるポーズも多いため、脳に血液や酸素が届きやすくなるそう

―なるほど、「疲れにくい体」作りにもなると。他にも効果はあるんですか?

松尾 ビジネスパーソンをターゲットにしているんですが、寝る前や休日にも仕事のことを考えてしまい、休んだ気がしないという声をよく聞きます。ZERO GYMで体の疲れと一緒に脳の疲れをとって、毎日の仕事のパフォーマンスを上げてもらえたら嬉しいですね。

―「詐欺じゃん!」とか思ってスイマセンでした! 今日はありがとうございました。

***ストレッチやトレーニング、そして瞑想など、ひとつひとつを行なう施設は存在するが、それを組み合わせることで“疲労回復”を目指した「ZERO GYM」。その効果を実証するエビデンスはまだ無いというが、確かにすっきりした実感はあった。

(取材・文/鯨井隆正)