オーストラリアに選手層の厚さを感じたと語るセルジオ越後氏

さすがの選手層の厚さを見せつけたね。コンフェデ杯(ロシア)決勝で、2014年ブラジルW杯王者ドイツが1-0で南米王者チリを破り、初優勝した。

今回のドイツはノイアー、クロース、エジル、ミュラーなどの主力をほとんど招集していない。若手主体のいわば“2軍”。レーヴ監督も大会前に「結果は関係ない」と話していたし、前評判は高くなかった。

それでも手堅い守備を武器に勝ち進み、決勝でも少ないチャンスを生かして先制すると、その1点を守って逃げ切った。ボール支配率は39%、シュート数はチリの21本に対して8本。試合の主導権は握られていたけど、若い選手たちが最後まで集中を切らさなかった。

もちろん、今回の守備を固めてカウンターを狙うだけのサッカーでは、来年のW杯本番で優勝するのは難しい。ただ、本来のメンバーがそろえば、また違ったサッカーを見せてくれるはず。また、今回の優勝で大きな自信をつけた若手の成長も期待できる。これまでコンフェデ杯王者が翌年のW杯で優勝した例はないけど、そんなジンクスを吹き飛ばすかもしれないね。

大会全体を通して見れば、大きなインパクトを残した選手、チームは現れなかった。ポルトガルのロナウド、ナニ、ペぺ、チリのビダル、サンチェスといった“おなじみの選手”ばかり目立っていた。優勝したドイツで目を引いたのは、キャプテンのドラクスラーとボランチのゴレツカぐらいで、全体的に地味な印象を受けた。

そんな今回の大会で気になったチームは、やはりW杯アジア最終予選で日本が次に対戦するオーストラリアだ(8月31日、埼玉)。

ドイツに敗れるなど2分け1敗でグループリーグ敗退に終わったものの、チリ、カメルーン相手に引き分けているのは不気味だね。W杯最終予選でもここまでグループ3位ながら4勝4分けと、1試合も負けていない。そのアジアよりも質の高い相手でも引き分けに持ち込めるのは力がある証拠だ。

試合内容では押されていても、ボール際はハードで、体を張れて、簡単には崩れない。ベテランが軸になりつつも、中盤のルオンゴ、ムーイ、ロギッチ、前線のユリッチといった若手、中堅が着実に成長している。また、試合ごとに少しずつメンバーを入れ替えながらもチーム全体のレベルは落ちない。選手層の厚さを感じた。

ただし、日本が勝てない相手だとは思わない。負けないサッカーは、裏を返せばなかなか勝ち切れないということ。また、試合が行なわれるのは8月末。日本の蒸し暑さには苦しむだろう。今回のW杯最終予選でも、サウジアラビア、タイと、暑さの厳しいアウェー戦では後半途中から足が止まっていた。ラクな相手じゃないけど、力の差はないよ。

対する日本のカギを握るのは、選手のコンディション。8月末といえば、ヨーロッパはシーズンが開幕したばかり。本田や長友、原口などはどこでプレーしているかわからず、コンディションにもバラつきがあるだろう。移籍しない選手にしても、新たなポジション争いがあり、今までと同じように試合に出られているかはわからない。また、国内組も夏の疲れがたまってくる時期。日本は決して選手層が厚くないので、各選手のコンディションの見極めが重要になるね。

(構成/渡辺達也)