「近い将来、小池政権が誕生し、さらにその数年後には進次郎氏への首相禅譲というシナリオもありうる」と語る古賀茂明氏

都議選で自民に圧勝した直後に都ファの代表を退いた小池都知事。初の女性首相になる野心は燃えたぎっている?

そこで、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、小池都知事に伝授したい秘策とは――?

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東京都知事選挙で小池百合子都知事率いる都民ファーストの会(以下、都ファ)が歴史的大勝を収めたことで、永田町では「知事はそのうち国政に復帰し、首相の座を狙うのでは?」とささやかれている。

自民都連をわずか23議席に追い詰めた小池都知事の人気は非常に高い。本人は「知事の仕事に専念する」として国政進出を否定しているが、その言葉をうのみにはできない。今の都ファの勢いなら、国政新党を結成し(党名は「国民ファースト」になる?)、来年末までには行なわれる次の衆院選で20人前後の当選者を出すことはそう難しいことではないからだ。

都議選大勝→国政政党を結成して衆院選で勝利→国政復帰後に自公と連立→自公都ファ連立政権で首班指名ゲット→小池政権の誕生というシナリオは決して絵空事とはいえないだろう。

ただ、知事がそのシナリオを実現させるためには、どうしてもクリアしないといけないハードルがある。それは“都知事の辞め方”だ。

次の衆院選に小池知事が出馬することはありえないと言っていい。2020年の東京五輪の準備をサボタージュして国政に鞍替(くらが)えすれば、さすがの小池都知事も大批判にさらされる。「都議会の改革を断行する」という公約を果たすためには、最低でも1期、20年7月の任期までは知事を務めなくてはならない。

問題はその後の去就だ。小池都知事が7月24日からの東京五輪を見届けるために2期目も知事を続けるようなことになれば、首相への野望は潰(つい)えかねない。2期目の任期は24年夏まで。そのとき、小池都知事は72歳となり、首相の座を狙うには少し高齢すぎる。ここはやはり、20年7月いっぱいで都知事を辞し、国政に復帰して足場を固めたいはずだ。

小泉進次郎氏に知事職をバトンタッチしましょう―

そこで、小池都知事に秘策を伝授したい。もし、私が知事のブレーンだったら、彼女にこう進言する。

小泉進次郎氏に知事職をバトンタッチしましょう――。

進次郎氏は小池知事と並ぶ政界のスターである。20年7月の都知事選で進次郎氏を後継者として担ぎ出し、「ぜひ、次世代の若い人に都政を託したい」とツーショットで訴えれば、都民は反対しないだろう。それどころか、国政へと鞍替えする小池知事に惜しみない拍手を送る可能性すらある。小泉純一郎元首相も駆けつければ、マスコミの報道はさらに過熱するだろう。

すでに今回の都ファ大勝を受け、永田町では小池支持を打ち出し、小池新党の先駆け的な動きを隠さない政治家も現れている。日本維新の会を除名された渡辺喜美(よしみ)参院議員、民進党を出た長島昭久衆院議員、無所属で元神奈川県知事の松沢成文(しげふみ)参院議員などだ。小池知事の下には自民党を離党した若狭勝衆院議員もいる。

政党交付金をもらえる国政政党設立には5人以上の国会議員が必要だが、あとひとりで小池新党結成は可能だ。小池氏が表向き国政進出を否定し続けるなかで、先駆け的に国政政党創設を黙認するというやり方もある。

都知事就任で実績を積むことは進次郎氏にとっても悪い話ではない。近い将来、小池政権が誕生し、さらにその数年後には進次郎氏への首相禅譲というシナリオもありうる。小池都知事と進次郎氏の動きに要注目だ。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中