(上)家電量販店やネット販売が中心の格安SIMだが、UQモバイルは「UQスポット」と呼ばれる販売店を全国に展開。親ブランドauの文字も。(下)UQ同様、ワイモバイルも全国に販売店を設けている。安さはもちろん、通信品質もキャリアと遜色ないことから契約数を増やしている。

安くて! 速くて! iPhoneもある! そんな三拍子そろったUQモバイルとワイモバイル、いわゆるサブブランドの勢いがとどまるところを知らない!

しかし、この状況に不満爆発なのがドコモの回線を使う格安SIM事業者だ。そこで、3大キャリアの争いから総務省と格安SIMを巻き込んだスマホ戦国時代の舞台裏に迫る!!

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「サブブランド」が絶好調だ。サブブランドとは、大手キャリアが展開している別ブランドのこと。auを運営するKDDIグループの「UQモバイル」ソフトバンクの「ワイモバイル」がそれだ。

どちらも単体での契約数の推移は明らかではないが、UQコミュニケーションズは今年1月に開いた説明会で、UQモバイルの新規契約数が「2016年10月以降、急速に伸びている」などとアピール。もう一方のワイモバイルも、親ブランドであるソフトバンクの今年3月期の決算短信で「スマートフォンでは特に『ワイモバイル』の契約数が順調に拡大した」と触れられていることからも、その好調ぶりは明らかだ。

この好調を支えているのは、もちろん、CMでも繰り返される「家族割でイチヨンパ」(UQ)、「家族なら、1480円にズキュン!」(ワイモバイル)という低価格。そしてお昼どきや夕方など、通信が混雑する時間帯でもサクサク動く、高い通信品質だ。

実際に家電量販店の店頭で聞くと、「大手キャリアの回線と同等の品質」を前面に出したセールストークが繰り広げられている。

「auと、ほぼ同じ速度で使えると思ってください。ほかの格安SIMより、ずっと快適ですよ」(UQ販売員)

「ソフトバンクの回線を使っているので、スピードも同じです。ドコモやauから乗り換えてもイライラすることはありません」(ワイモバイル販売員)

しかし、この状況に大きな不満を抱えているのが、MVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる「格安SIM事業者」だ。格安SIM各社は大手キャリア(主にドコモ)から回線を借り、再販することで低料金を実現している。そのため、利用者が集中する時間帯には速度が低下するという傾向が著しい。

もちろん多くの格安SIMはユーザーの増加に応じて回線を増強するなどして対応しているが、低料金との両立を考えると、あくまで“ギリギリの増強”しかできないというのがホンネ。通信業界に詳しいライターの佐野正弘氏は、次のように語る。

「ワイモバイルはソフトバンクの一部門であり、位置づけがやや異なりますが、UQはキャリア(au)から回線を借りて再販しているため、MVNO(格安SIM)と同じ土俵に立っています。そのUQが低価格で高品質のサービスを展開していること、そして大量のテレビCMを打てる資金があること、そしてauのほかのMVNOでは実現できない、iPhone6s以降でのテザリングにも対応していることなどから、MVNO各社はサブブランドに対して、親ブランドからのなんらかの優遇があるのではないかと疑いを持っているのです。

またUQに関しては、auとの家電量販店などでの販売連携についても不満が聞こえます。総務省ではこうした指摘を受け、優遇への懸念を示しつつ、監視を強めていく方針のようです」

◆『週刊プレイボーイ』31号(7月15日発売)「『総務省ドコモ組 VS サブブランド』スマホ主導権争いのウラ側!!』では、サブブランドの勢いをさらに分析。そちらもお読みください!

(取材・文・撮影/本誌「格安SIM」取材班)