チームが苦しいときこそフロントが監督や選手の防波堤にならなければいけないと語るセルジオ越後氏

ひと言でいえばマンネリなのかもしれない。今季のJリーグ優勝候補に挙げられていた浦和が低迷している。

18節終了時点で9勝2分け7敗、首位C大阪とは勝ち点差9の8位。1-4で大敗した川崎戦(7月5日)後には、怒ったサポーターが選手バスの出口を封鎖。ペトロヴィッチ監督が出ていき、「ここから連勝できなければチームを去る」と発言した。続く18節の最下位・新潟戦ではなんとか逆転勝ちしたけど、やはり内容はよくなかった。

今季の浦和はとにかく失点が多すぎる。ここまで30失点は18チーム中5番目に多い。リーグ最少失点(28)だった昨季の数字を早くも超えている。

ここ数年の浦和のサッカーといえば、ボールをキープして試合の主導権を握り、細かくパスをつなぎながらチャンスをつくろうという攻撃的なもの。そして今季は、敵陣で試合を進める時間をさらに延ばそうとした。

でも、それがうまくいっていない。最終ラインをやみくもに押し上げては、その裏をカウンターで狙われ、簡単に失点を許している。何年も同じメンバーで同じサッカーをしているから、さすがに相手に研究されてきた。それに対して、ペトロヴィッチ監督が有効な手を打てていないというのが現状だ。

守備を固めてカウンター狙いというチームが多いJリーグにあって、ペトロヴィッチ監督の下、独自の攻撃サッカーを掲げる浦和の姿勢を、僕は高く評価すべきだと思っている。

でも、浦和は名門クラブだ。勝たなければ意味はない。ペトロヴィッチ監督は就任6季目。その間、獲得したタイトルは昨年のルヴァン杯だけ。いいサッカーをやっているけど、勝負どころの試合をことごとく落としてきた。よく「いい監督と勝てる監督は違う」というけど、あらためてサッカーの難しさを感じるね。

浦和に感じる一番の問題は選手のキャスティング

今の浦和に感じる一番の問題は、選手のキャスティング。毎年のように多くの選手を補強しているけど、戦力になっているのはほんのひと握り。主力は代わり映えしない。そして過密日程でも起用する選手はいつも同じで、交代もワンパターン。ほとんどチャンスを与えられないまま2、3年で移籍する選手も少なくない。

そうした状況を見るにつけ疑問に思うのは、毎年の補強は本当にペトロヴィッチ監督のリクエストどおりなのかということ。選手たちは仲良しに見えるけど、試合に出ている選手と、出ていない選手の温度差は大きいんじゃないかな。

浦和にはあれだけ多くのサポーターがいて、勝利を求めている。今すぐペトロヴィッチ監督を解任するかはともかく、今季もリーグ戦もしくはアジアチャンピオンズリーグで優勝できなかったら解任は当然だ。

とはいえ、低迷は監督ひとりの責任じゃない。浦和がタレントぞろいといっても、日本代表のレギュラー格はひとりもいないし、外国人枠も余らせている。それで何年も結果が出ていないのに、適切な補強なり監督交代なりのてこ入れをしないフロントにも問題はある。

ペトロヴィッチ監督をサポーターの前に行かせたのも理解不能。ベテランで責任感の強い阿部にもしばしばそうした役割を背負わせている。そもそも監督を選んで、続投させているのはフロントだ。チームが苦しいときこそフロントが監督や選手の防波堤にならなければいけないよ。

(構成/渡辺達也)