2013年、アーセナル所属時に来日した際には侍のコスプレ姿を披露。マンガ『キャプテン翼』の大ファンでもある

Jリーグ待望のスーパースターがついに上陸を果たした! ドイツ代表130試合49得点のFWルーカス・ポドルスキ(32歳)--その素顔と活躍期待度をチェックする。

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J1・ヴィッセル神戸の新外国人選手、ルーカス・ポドルスキが待望の来日を果たした。

元ドイツ代表の32歳。同国内では絶大な人気を誇るスター選手のひとりだ。18歳にして名門ケルンでプロデビューを果たすと、その後バイエルン・ミュンヘン、アーセナル(イングランド)、インテル(イタリア)、ガラタサライ(トルコ)といったビッグクラブを渡り歩いた。また、19歳で初キャップを得た代表チームでは、13年間で49得点を記録。特に2006年と10年のW杯、08年の欧州選手権では、主力として八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍を見せている。

ドイツ在住のサッカージャーナリスト、中野吉之伴(きちのすけ)氏は、彼のプレースタイルをこう解説する。

「ポジションはトップかトップ下、もしくは左サイドハーフ。キックの技術が非常に高く、正確なシュートやクロス、一本で局面をガラッと変えてしまう決定的なパスを得意とします。若い頃はスピードあふれるドリブルも武器でしたが、絶対的な速さこそ多少衰えたものの、一瞬のスプリントで裏に抜け出す突破力はまだまだ健在。フィジカルコンタクトにも強く、相手DFを背負ってパスを受けたり、そこからターンしてシュートに持ち込むプレーもできます」

愛すべき人柄でもある。

いつも明るく、チームのムードメーカー的存在です。ケルンでは19歳で主将を任されたように責任感もある。3月に神戸入りが正式決定した際も、『残された期間の最後までガラタサライのためにプレーし、気持ちよくファンとお別れしてから出ていきたい』と当時の所属クラブへの忠誠心を示し、その言葉どおりシーズン終了まで手を抜かずプレーしました」(中野氏)

さらにこんなエピソードも。

「少年時代から将来を嘱望されていた彼は、ケルンへ入団する前、複数の有名クラブから誘いを受けていたのですが、ケルンというクラブの家族的な雰囲気が気に入って、進路を決めたのだとか。ネームバリューや組織の規模ではなく、自分が心地よくプレーできるかどうかを何より重視する選手なのです」(中野氏)

ポドルスキ本人がドイツメディアで語ったところによると、神戸と同時期に中国のクラブからオファーを受けていたが、交渉時の神戸側の真摯(しんし)でプロフェッショナルな姿勢に感銘を受け、日本行きを決めたのだという。なるほど、そこにはケルンを選んだときにも通じる彼のサッカー哲学が貫かれている。

移籍交渉を通じて、来日前から日本に好印象を抱いた様子のポドルスキだが、実はそれ以前から、彼と日本とをつなぐ縁がある。というのも彼、子供の頃からマンガ『キャプテン翼』の大ファンで、アーセナル時代はすね当てに日向小次郎のイラストをプリントしていたほどなのだ。その『キャプテン翼』を生んだ国でのプレーは、より彼のモチベーションを高めることだろう。

加入したハーフナー・マイクと共存できるのか?

■ハーフナーとの豪華2トップは機能するか

では、ずばり、ポドルスキは神戸にフィットし、Jリーグで活躍できそうなのか? サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が言う。

「もとより実力は折り紙つき。さまざまな国のリーグを体験し、いろいろな監督の下でプレーしてきた選手なので、Jリーグ特有のテンポの速いサッカーにも順応できるでしょう」

余談だが、ポドルスキは2歳のとき、家族と共にポーランドからドイツへと移住している。ドイツ国籍を取得した後も彼は自らのルーツに誇りを持ち、家族とはポーランド語で会話し、ポーランドの文化を大切にした。そんな彼の“ポーランド人気質”も、日本という国への順応にどうやらプラスに働きそうだ。

「ポーランド人は、ヨーロッパの中で一番、日本人的なメンタリティを持った国民なんです。自己主張こそ強いけれど、ただ我を押し通すのではなく、細かいことに気を使うし、協調性がある。例えばポーランドでは、電車が5分遅れただけで駅員が『申し訳ございません』とアナウンスします。そんなことは、ほかのヨーロッパ諸国ではありえませんよ。

車が来なくても信号が赤なら横断歩道を渡らずにずっと待っているし、雨が降るとみんなが慌てて傘を広げるところも、日本と一緒。ポーランド人なら誰もが同じ性格ではないでしょうが、国民性というものは確かにあります。だからポドルスキも、日本や日本サッカーにシンパシーを感じ、すんなりなじめるのではないかと思うんですよ」(後藤氏)

しかも今の神戸は、彼に頼らざるをえない状況にある。

「開幕早々、昨季リーグ得点王のFWレアンドロが負傷して長期離脱中。点取り屋不在で成績が低迷しているなか、神戸としては一刻も早くポドルスキをセンターフォワードに据えたいところです。FW渡邉千真(かずま)やFW小川慶治朗からのパスからゴールを決めたり、逆に彼らに点を決めさせるといった連携も、ポドルスキのプレースタイルなら難なくできるはず。年齢も年齢なので、彼には豪快なプレーより、巧みなポジション取りで相手の裏を突き、技ありの得点を決めるようなシーンを期待したいですね」(後藤氏)

ところで神戸には彼と時を同じくして、元日本代表のFWハーフナー・マイクが加入した。ポドルスキとセンターフォワードのスペシャリストであるハーフナーは、果たして共存できるのか?

「ハーフナーがセンターフォワードとして十分やれそうなら、ポドルスキをトップ下に回す。どちらもセンターフォワードがベストのポジションだとなれば、対戦相手や試合の時間帯に応じて、個性の違うふたりを使い分ければいいだけのことです」(後藤氏)

登録期間の関係で、ポドルスキがJリーグデビューするのは、ホームで行なわれる7月29日の大宮アルディージャ戦。久々にやって来た大物外国人の躍動を、括目(かつもく)して待て!

(写真/Getty Images アフロ)