16歳で競泳日本代表に選ばれ、東京五輪での活躍が期待されている今井 月(るな)

美しい泳ぎで観衆を沸かせる女性スイマーたちも世界水泳で躍動し大会も無事終了。

日本人では自由形とバタフライなど多種目に出場する17歳の池江璃花子や、今年ブレークした個人メドレーの大橋悠依(21歳)らに注目が集まったが、そのふたりに加えて今、日本女子競泳陣で頭角を現しつつあるスイマーがいる。16歳の今井 月(るな/豊川高校)だ。

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現在、高校2年生の今井は、大橋が銀メダルを獲得した200m個人メドレーでは銅メダルに0秒28差の5位と着実に進化を遂げている。

元々、専門にしていたのは200m平泳ぎで、最初に注目されたのが2012年ロンドン五輪翌年の日本選手権だった。当時、小6だった今井は、12年には50mと100m、200m平泳ぎと400m個人メドレーでその世代の日本新を連発。

初出場となった13年4月の日本選手権では、まだ中学生になったばかりで、小柄ながら200m平泳ぎのロンドン五輪銀メダリスト鈴木聡美や08年北京五輪出場の金藤理絵(16年リオデジャネイロ五輪優勝)と互角に戦って2分25秒14の好記録で3位。“東京五輪の星”と注目された。

だが、200m平泳ぎは上位のふたりや15年世界選手権で優勝した渡部香生子(かなこ)の充実で代表入りは極めて狭き門。それでも16年の日本選手権では200m個人メドレーで世界ジュニア記録にあたる2分10秒76を出して2位に飛込み、参加標準記録を突破しリオ五輪代表入り。五輪本番では準決勝で15位敗退という結果だったが、国際舞台での貴重な経験を積んだ。

そして、今年の日本選手権の200m平泳ぎは4位で代表を逃したものの、200m個人メドレーでは2分11秒51で大橋に次ぐ2位。リオに続く世界大会の出場を果たしていた。

その後、高校を練習のベースにしながら、早稲田大や東洋大の練習に参加し、自由形リレー代表選考会でもあった6月の和歌山県選手権では、自由形強化のために100m、200mにも出場するなど貪欲な姿勢を見せた。

さらに、6月からは「トップ選手に刺激を受けたい」と、萩野公介や大橋らとともに平井伯昌(のりまさ)コーチの下、高地合宿に参加して積極的にトレーニングを続け、今季世界ランキング8位になる2分10秒41を持って世界水泳に臨んだ。

その競技初日、予選は「1本目なので緊張したが、まあまあのタイムを出せた」と、平泳ぎと自由形で盛り返して2分11秒15のタイムで5位通過。リオ五輪金メダリストである地元ハンガリーのカティンカ・ホズの隣で3レーンを泳いだ準決勝は自己新の2分10秒15で7位通過と、2レースとも大橋を上回った。

平井伯昌コーチの下、高地合宿にも参加

日本記録、世界記録を目標に練習を続ける今井

「準決勝は、前半でホズに大きく離されるのはわかっていたので自分の泳ぎに集中しました。去年のリオでは準決勝でタイムを落として悔しい思いをしましたけど、今回はここでベストを出せたので次につながると思う。前半のタイムはもう上がらないので、後半頑張って2分9秒台を出すことを目標にしたいです」

こう話していた今井は、24日の決勝では準決勝を0秒45上回るタイム。平泳ぎはラップを落としたが、最後の自由形は全体4位の30秒76で泳ぎ切り、2分09秒99の自己新で5位入賞を果たした。

「高地で練習していたので、きついところで耐えられるようになっていたと思います。9秒台が出たのはよかったけど、2分9秒98が世界ジュニア記録(池江が保持)なので、それに届かなかったのが残念。(2分07秒91で)2位になった悠依さんがすごく速くてビックリしたけど、私も予選、準決勝、決勝と緊張がなくなっていい状態で、泳ぎも自分のプラン通りにできたかなと思う。収穫のある試合だったと思います」

タイムは銅メダルまで0秒28。彼女自身、「もう少し頑張ればメダルにも届いたと思って悔しくなってきた」とも話し、この先に向けては「200m平泳ぎも自分の専門として大切。200m個人メドレーも大切。両立できたらいいなと思います」と言って明るい笑みを見せた。

200m平泳ぎはリオ金メダリストの金藤が復帰する可能性もあり、今年は不調だったとはいえ渡部もいる。さらに今季、力を伸ばした青木玲緒樹が2種目で世界選手権代表になり、鈴木も復調の気配。ライバルが多い種目であることに変わりはない。

そんな激戦の中での挑戦も、今井にとってはモチベーションになっている。今回の世界水泳200m個人メドレー決勝5位という結果は、さらなる飛躍に向け、大きな励みになるものだったといえる。

(取材・文/折山淑美 撮影/中村博之 PICSPORT)