(左から)松本恒雄国民生活センター理事長、長坂康正消費者行政担当政務官

地方創生の目玉として安倍政権がぶち上げた中央省庁の地方移転。その一環として7月24日、消費者庁の地方拠点となる「消費者行政新未来創造オフィス」が徳島県庁10階にオープンした。

記念セレモニーには徳島県知事も出席。職員が特定の机を持たず、席を毎日自由に選べる「フリーアドレスシステム」や、東京の本庁と徳島のオフィスを光ファイバーでつなぐテレビ会議の様子などが報道陣に公開された。

この移転で徳島市にやって来るのは消費者庁と国民生活センターの職員など約50人。なんともビミョーな人数だが、徳島県庁の鼻息は荒い。

「2008年に外国産ワカメが徳島・鳴門(なると)産と偽装して売られる事件が発生した際、徳島県は消費者側に立った省庁の必要性を訴え、そんな声が実って消費者庁が誕生しました。今は一部移転にとどまっていますが、消費者教育方法の研究などのテスト業務が順調に進めば、3年後をメドに全面移転となる可能性もある。県としてしっかりとサポートしていきたいと考えています」(徳島県新未来消費生活課)

ところが、消費者庁の反応はなんとも素っ気ない。

「あくまでもオフィスの『新設』であって、『移転』ではない。東京ではできない事業をやれる機能を持ったオフィスを新たにつくったにすぎません」(消費者庁担当者)

……この温度差はなんだ?

「国会への対応、食品安全の危機管理など、時間との闘いになるような事柄は東京でないとやれない。他省庁とのやりとりも、各省庁がばらばらの回線でやっているので、テレビ電話でつなぐというのも難しい」(消費者庁担当者)

「東京での活動が必要なら、消費者庁の東京支部を置けば済むこと。ほかの省庁も地方に移るようになれば、なんでもかんでも東京で、とも言っていられなくなるのでは」(徳島県担当者)

いくら聞いても、両者の溝は埋まりそうにない。

では、肝心の県民はどう感じているのか? 本誌記者が徳島市内で県民50人にアンケートを取った結果、「消費者庁に来てほしい」はわずか12人、残りは「来てほしくない」(8人)、または「どっちでもいい」(30人)だった。市内在住の20代女性がこう言う。

「東京から消費者庁職員が来るといっても、『島流しになった』みたいな気持ちでイヤイヤ来る人がほとんどでしょ? そんな徳島に愛着がない人たちがここで仕事をしても、成果は上がらないと思う」

どうも、消費者庁がはっきり言えない本音は県民に見透かされているようだ。

政府関係機関の地方移転に関しては、42道府県が誘致に名乗りを上げているが、徳島への消費者庁移転がポシャったら、ドミノ式に全部ずっこけたりして……。