左から、桂ぽんぽ娘、春風亭ぴっかり☆、立川こはるの女性落語家3名が個性あふれる落語を披露

週プレ酒場ならではの女流落語会を!」と、新宿・歌舞伎町に集まったのは、AKB48一期生オーディションでも最終選考に残った女性落語家・春風亭ぴっかり☆に、少年のようなイケメン・立川こはる、下ネタ満載のピンク落語で芸能界でもファンを増やしつつある桂ぽんぽ娘(こ)という、落語界で今、話題沸騰中の面々。2006年に入門した同期の3人娘だ。

落語界は昔から男性社会ともいわれているが、最近では若い女性の志願者も増加。じわじわと女性落語家の活動場所も広がりつつある。そんな中でも、今回特にキャラクターの濃い女性落語家たちが東京・新宿の週プレ酒場に集結した。

会場が歌舞伎町のど真ん中ということもあって、堅苦しい雰囲気は一切なし。集まった客層も若い女性から往年の落語ファンなどとにかく幅広い。

複数人で出る場合、ネタが被らないよう事前打ち合わせをするそうだが、ピンク落語を操る桂ぽんぽ娘には必要なし!

先陣を切ったのは、春風亭ぴっかり☆。若い世代や落語初心者でも聞きやすい、新作落語『ナースコール』を披露。場を引っ掻き回す新人看護師「みどりちゃん」の大騒動を描いたドタバタ劇で、随所に「あ~、こういう空気の読めないモンスターな新人、職場にいるいる」と、どこか共感してしまう。

そして次に登場したのは、古典落語が強みの立川こはる。演目は、道楽の末、勘当されてしまった若旦那が突然、「俺は船頭になる!」と無茶を言い、止める女将の言うことを聞かずに客を巻き込んで川に飛び出してしまうという『船徳』という噺(はなし)。軽快な人物描写に観客もいつの間にか引き込まれ、会場の老若男女を爆笑の渦(うず)に巻き込んでいた。

最後は下ネタ満載のピンク落語でお馴染みとなっている、桂ぽんぽ娘。「似たような言葉がありますが、例えば“バス”と“ブス”。違うところは、バスに乗るのはお金がかかりますが、ブスにはタダで“乗れ”ます?」と冒頭から下ネタがさく裂! 唯一無二のぽんぽ娘節は誰にも止められず、『ミッションインポッしゃぶる?』といったオリジナルネタも満載で、30分間があっという間、ピンク落語の世界に客を引きずり込んでいた。

1時間半に及んだ週プレ酒場・女流落語家3人会は、大盛況の中、閉幕。イベント後、どうしても気になる「男社会の中での、女性落語家の本音」について話を聞いてみた。…この3人、とにかくマジでキャラが濃すぎます!

個性的な女性落語家の本音とは…?

閉幕後、三人に話を聞いてみると、三者三様、クセが強い~

落語界の風雲児こと、立川談志一門に飛び込んだ立川こはるさんは、なんと1年間も「女だと気付かれなかった」という。

「そもそも、立川談志が女性の落語家をそこまで歓迎していなかったんですが、入門の挨拶に行くと『よし! いけ!』と意外とあっさり許可が出た。拍子抜けですよね。でも実はショートヘアだったから女だとわからなかったみたいで、1年後に談志から『こはる! おまえ、女だったのか!?』って。

すでに1年間いたので、今さら入門を撤回するわけにもいかなかったようですが、談志からは『お客様の前に立つ以上、男女関係なく相手を喜ばせられるエンターテイナーとなれ』と言われました。…でも、もし最初から性別バレしていたら、今の“立川こはる”は存在しなかったかもしれません(笑)」

大学時代から落研にいたそう

こんな性別を間違われたことが功を奏した(?)ケースもありえないが、「落語家になる前は本気でAKB48を目指していた」という春風亭ぴっかり☆の例も…。

「元々、落語以外にアイドルやミュージカルも好きだったんですが、『劇場型で毎日、お客さんの目の前で踊るアイドルグループができるらしい』っていう話を聞いて、『何それ、面白そう!』ってソッコーで食いついたんです。でもその当時、私は24歳でオーディションは10代限定。だったらサバ読むしかないでしょ(笑)。

年齢がバレたらバレた時に考えりゃあいいやって。それで厚かましく7歳もサバを読んで最終選考まで残ったんですが、『17歳で~す』って言ったら、審査員の方に『キミ、24歳くらいに見えるよね』ってドンピシャで指摘されて落選しました…」

舞台を中心に女優業もこなす

AKB48一期生にはなれなかったものの、その後、春風亭小朝氏を師と仰ぎ、落語界でめきめきと頭角を現していく。

「いろんな経験が芸や落語家としての魅力にも繋がると思うんです。無駄な経験って絶対ない。師匠の春風亭小朝のように、枠にとらわれずに様々なジャンルで活躍できる落語家になりたいです」と意気込みを語ってくれた。

試練の末の「ピンク落語」

そして、下ネタ満載のピンク落語でじわじわと人気を集めている、桂ぽんぽ娘さん。大師匠の桂文枝をはじめ、多くの先輩方から「そんな話は女性がやるもんじゃない」「桂の名前が欲しいなら二度とやるな」と再三、忠告を受けまくってきたという。

普段から、ソッチのほうはお好きみたいです

「そのたびに『わかりました!』と言って、こっそりやり続けて。何を言われても言うことを一切聞かなかったら『こいつ、もう放っとこう』って呆れられたんでしょうね(笑)。

でも、私はこはるさんのように古典落語がうまいわけじゃないし、ぴっかり☆さんのように華があるわけでもない。じゃあ、自分の強みって何?って考えた時に、『私の自慢は性欲の強さだわ!』と。元々、コンプレックスックスの固まりだったけど、それを仕事にできるのは笑いだけだったんです」

まさに「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない」を地でいく彼女だが、

「でも、ある日、突然ホームページが削除されたら『ああ、ついに破門されたんだな…』って思ってください(笑)」

まさに三者三様。実力はもちろん、独特のキャラクターが光る女性ならではのニュースターたちが、今後さらに落語界を盛り上げてくれるはずだ。

(取材・文/青山ゆか 撮影/榊智朗)

立川こはる独演会 8月15日(火)、10月14日(土)。いずれも19時開演、東京・新宿文化センター小ホール。8月19日(土)は14時開演、兵庫・神戸酒心館ホール。チケットはすべて前売2000円/当日2200円。問い合わせはサンライズプロモーション(電話0570-00-3337)

ぴっかり夏祭り 8月19日(土)14時半開演。春風亭ぴっかり☆が主役を務め、ロバート・山本博、しずる・村上純が脇を固めた映画『耳かきランデブー』の先行上映もあり。東京・日比谷コンベンションホールにて。S席2500円/A席2000円。名古屋(8月24日)、大阪(8月25日)にも公演予定。問い合わせはカンフェティチケットセンター(電話0120-240-540)

●「桂ぽんぽ娘性誕38回記念 ~ぽんぽ娘38才!今日から熟女を名乗ります~」 8月24日(木)19時開演。愛知・男キモノ&BAR蛙屋にて。チケットは前売2500円。詳しくは、「桂ぽんぽ娘」オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/k-ponpoco/)にて