自民党「人生100年時代の制度統計特命委員会」の中心メンバーとして、少子化をチャンスにしたいと発信している小泉進次郎議員

“現代の魔法使い”こと落合陽一が、人類の未来を予言する『週刊プレイボーイ』本誌の月イチ連載『人生が変わる魔法使いの未来学』。

「もう人口減少を嘆くのはやめませんか? 人口が減ったって、やっていけるという自信が大切。将来に悲観する1億2千万人より、将来に自信と楽観を持つ6千万人のほうが強い」

昨年10月に東京都内で開催されたシンポジウムでそう語ったのは、将来の首相候補と目されている自民党の小泉進次郎議員だ。しかし、自信を持つといっても、いったいどうやって?

今回のテーマは、まさにその答えとなる「超AI国家戦略」の話。人とコンピューター(人機)が高度に融合する社会を実現できれば、少子高齢化は日本にとって本当に大チャンスになりうるーー落合陽一はそう言うのだ。

■「義手はカッコいい」と示したマイクロソフト

―最近、やけに「コンピューテーショナル・ダイバーシティ(計算機的多様性)」という言葉を多用してますよね。これってなんですか?

落合 僕の中では、日本の国家再興戦略のキーワードなんです。言葉で説明するより、まずこのアバターを見てください。6月に米マイクロソフト社が映像を公開した、「Xbox」の新アバターなんですが、この女のコ、片腕が義手なんですよ。今や、マイクロソフトのアバターは腕も脚も機械に置き換えることができるし、車椅子にも乗せられる。しかも、それがおしゃれでカッコいいっていう感じなんです

マイクロソフトが今年6月に発表した「Xbox」の新アバターでは、ユーザーが義手や義足、車椅子などを自由に選択できる(Xbox新アバターの紹介映像より)

―確かにカッコいいですね。

落合 今までは、腕が2本ある人が「標準」で、0本や1本の人は「障害」とされていましたよね。でも、AIで完璧に制御された義手があれば、腕の本数ってダイバーシティ(多様性)でしかなくなるんです。それこそ眼鏡をかけているか、かけていないか、くらいの感覚です。

このように、コンピューター(計算機)によって人間の視聴覚や体を動かす感覚、あらゆるものに関して「障害」という概念がなくなる。そして、これをダイ バーシティという言葉に置き換えるとすんなりいくんです。このとき、ものすごく重要なのが「人機融合」というイメージです。

人間の棋士と囲碁AIのタッグマッチを見ると、いつも人間側が足を引っ張る

―最近、パラリンピアンがカッコいいっていう感覚がかなり一般的に広がってきましたけど、これも人機融合の流れですね。

落合 まさにそうですよね。東京オリンピック・パラリンピックで、人々の古い意識は完全に更新されるんじゃないかな。テクノロジーとハイブリッドした人間がカッコいい、という感覚が普通になっていくと思います

―将来はオリンピックが前座になって、パラリンピックが一番盛り上がったりとか。

落合 というより、境目がなくなると思うんですよね。義足のランナーと、自分の足に機械の補助をつけて速くしたランナーが一緒に競う。絶対そのほうが面白いでしょ?

―ウサイン・ボルトは最後の生身のチャンピオンだった、みたいな。

落合 そうそう。もしかしたら“生身部門”も全体の中の一部門としては残るかもしれないですけど。

―車いすバスケなんかも、AI搭載の超高性能車いすになったら面白いでしょうね。

落合 ですよね。アルファ碁(Google DeepMind社が開発したコンピューター囲碁プログラム)が人間の囲碁世界チャンピオンに勝ったように、もはやあらゆるものには人間よりも効率的な道具が存在するんですよ。で、面白いことに、人間の棋士と囲碁AIのタッグマッチを見ると、いつも人間側が足を引っ張る(笑)。強いAI同士だとなかなか勝負がつかないんですが、人間側のばらつきが勝敗を左右するゲーム性になるんです。

◆後編⇒“現代の魔法使い”落合陽一が提唱する「少子高齢化ニッポン最強説」──ほとんどの問題は人機融合で解決する

(構成/小峯隆生 写真/時事通信社)

●落合陽一(おちあい・よういち)1987年生まれ。筑波大学学長補佐。同大助教としてデジタルネイチャー研究室を主宰。コンピューターを使って新たな表現を生み出すメディアアーティスト。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学大学院で学際情報学の博士号取得(同学府初の早期修了者)。最新刊は『超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト』(大和書房)