人の呪いは形がなく、目には見えません

“百獣の王”武井壮がインドに豪邸を購入。芸能人の月収や家賃などを明かすようなバラエティ番組は今も昔も多々あるが、それを見る目にはきっと、単純な羨望だけでなく悪意も含まれているはず…。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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母なる地球と自らの肉体をこよなく愛する武井壮さんが、このほどテレビ番組の企画でインドに行き、2600万円のマンションを購入したそうです。インドでエンターテインメント事業をやりたいとかで、近いうちにボリウッドに進出!?

ほかにも番組内で家賃は軽く3桁と明かしたり、3千万円以上もする高級車でロケに現れたりと羽振りの良さを惜しげもなく披露。幼少期の貧苦を語り、夢を売る仕事ですからと言い切る姿勢には爽快さすら感じます。

それにしてもなぜ、多くの芸能人が自らの月収や年収を明かすのでしょうか。稼ぎが良ければ称賛や憧憬の的になるけれど、それらの感情はたいてい、嫉妬とセットに。実入りがいいと知れれば、身近な人からお金を無心されたり、詐欺のターゲットにされたりとよけいな心配も増えるでしょう。

そんな武井さんには今、羨望のまなざしとともに、落ちぶれることを願う思いも向けられていることでしょう。人の呪いは形がなく、目には見えません。さて、“百獣の王”は見えない敵とどう闘うのか。武井さんなら、ひとひねりで仕留めそうな気もするけれど。

小島慶子(こじま・けいこ)タレント、エッセイスト。知人の男性に真顔で「小島さんは芸能人だから何億円も持っているのかと思いました」と言われたことがある。そんな人はごくひと握り。多くは翌月の仕事すら見えない自転車操業です。