アジアで苦戦していてはW杯で勝てないと語るセルジオ越後氏

勝てばW杯出場が決まるオーストラリアとの大一番、日本は浅野、井手口の若手ふたりが見事なゴールを決めて2-0で勝利した。

ケガから復帰したばかりの長谷部を運動量が少なくて済むアンカーに置き、運動量のある山口、井手口をその前に並べたのは大正解。そして、ワントップにボールが収まる大迫を置き、左右にスピードのある乾、浅野を使った。オーストラリアの“つなぐサッカー”を意識しての布陣だね。守備的ではあるけど、高い位置でプレッシャーをかけ、ボールを奪ってから速く攻める。その戦術がハマった。

大きかったのは、前半41分の浅野のゴール。あれで精神的にラクになった。もし、前半を0-0で折り返していたら最後の最後までしびれる試合になっていたと思う。

そして素晴らしかったのが、中盤の井手口と山口。Jリーグでの好調さをそのまま代表でも見せてくれた。そのふたりの運動量が落ちたら、オーストラリアに自由にボールを回されて苦しくなると心配していたんだけど、最後までよく走っていた。

特に井手口はこの試合のMVP。持ち味の守備以外にも、セットプレーで質の高いボールを蹴っていたし、体力的に苦しい試合終盤の後半37分にドリブルを仕掛けて豪快なミドルシュートを決めた。ニューヒーローの誕生といった感じだね。

予選突破はうれしいことだけど、いつまでも浮かれてはいられない。ロシアW杯本番まで1年もない。今の日本代表を分析すれば、ホームでオーストラリア相手に守備的に戦わなければ勝てなかったのが現実。アジアで苦戦していてはW杯で勝てない。

では、どうすればいいか。まず海外に出ていく試合を増やすこと。もちろん、スポンサーとの兼ね合いもあるし、国内での試合も消化しなければいけないけど、その場合でも世界のトップ10ぐらいの強豪を呼ぶべき。ベストメンバーじゃない中堅国を呼んでも強化にならないのだから。協会はそのために思い切った予算を組んでほしい。

選手個々でいえば、国内組海外組問わず所属チームでレギュラーとして活躍すること。最終予選をふり返ると、原口、久保、今野、大迫、井手口と日替わりヒーローは出てきて競争が生まれているけど、欲を言えばコンスタントに活躍する選手、真のスター、代表の軸になれる選手が欲しい。

彼らの中から出てくるのか、それとも本田や香川が復活するのか。誰でもいいから出てこないといけない。W杯出場はこれで6大会連続。出るだけじゃなくて、勝つことを目指して貪(どん)欲になってほしいね。

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(構成/渡辺達也)