8月25日の試合で5勝目を挙げたジョンソン。昨季、外国人投手として52年ぶりとなる沢村賞を獲得したエースが、日本一を目指す広島を牽引する

昨年に続いて117試合目で70勝に到達し、2位の阪神を大きく引き離して首位を独走するなど、1980年以来となるセ・リーグ連覇へ秒読み段階に入った広島。その視線の先にあるのは、クライマックスシリーズ(CS)と日本シリーズだろう。

しかし、8月に入ると勢いに陰りが見え始め、8月23日の試合では鈴木誠也が右脛骨の骨折で今季絶望となった。鈴木はここまで4番として打率3割、26本塁打、90打点(8月30日現在)と抜群の成績を残し、走塁や守備でも存在感を見せつけていた。

そんな鈴木の離脱が痛手であることは間違いない。ただ、打線に関しては、松山竜平や新井貴浩らが4番に入って活躍するなど現時点で目立った攻撃力の低下を感じない。そもそも、広島打線の最大の特長は“つながりのよさ”であり、1番から3番が攻撃の流れをつくることで、リーグ断トツの得点を挙げてきた。

なかでも、3番の丸佳浩は秀逸な働きを見せている。ランナーをかえすクリーンアップとしてはもちろん、チャンスメーカー、つなぎ役と変幻自在の活躍で、勝利に貢献し続けている。この丸が健在な限り、広島打線の勢いは簡単には止まらないだろう。

一方で、ポストシーズンに向けて心配なのは、8月の防御率が4点近い投手陣だ。先発陣では、7月まで負けなしだった大瀬良大地や、2年目で2桁勝利を達成した岡田明丈の乱調が目立つようになった。最多勝争いをする薮田和樹は好調を維持しているものの、3年目でブレイクを果たしたばかりで短期決戦の適性は未知数。そして、より深刻なのがリリーフ陣だ。

8月22日からの横浜DeNA戦で喫した“3試合連続サヨナラ負け”がリリーフ陣の不安を象徴している。チームの新守護神として活躍していた今村猛は22日の試合で8月3度目となる黒星を喫し、昨季の抑えだった中﨑翔太にその座を明け渡した。

ところが、ケガから復帰後は中継ぎで安定していた中﨑も23日、24日とリリーフに失敗。さらに、ピンチの火消し役を担ってきた中田廉は3試合連続の失点で2軍降格となった。エース格同士の投げ合いになるポストシーズンでは、打線が抑え込まれる可能性も高いだけに、リリーフ陣の不調は致命的となる。

不安が募るところにクリス・ジョンソンが復活

不安が募るところに、昨季の沢村賞投手であるクリス・ジョンソンが復活したことは明るい話題だ。今季は4月上旬に咽頭炎を発症し、復帰後の7月にも左太もも裏のケガで再度離脱。ファンの期待に応えられずにいたジョンソンだが、8月25日の中日戦で8回を2安打無失点と完璧なピッチングを披露し、44日ぶりの白星を挙げた。

来日3年目の助っ人は、昨年のCS、日本シリーズでも勝利を挙げている。勝ちを計算できるだけでなく、若手の多い投手陣にとっても心強い存在だ。また、ジョンソンの強みは長いイニングを投げられることにある。昨季は先発した26試合中、24試合でクオリティ・スタート(6回以上を投げ、自責点3以内に抑えること)を達成。7回、8回まで試合をつくってくれることで、リリーフ陣を休ませながら再調整することも可能になるだろう。

チームに戻ってきた頼れるエースが、33年ぶりの日本一を目指す広島の救世主となる。

(取材・文/谷上史朗)