遠征時も常に勉強道具を持参する張本。チェコ・オープンから帰国する機内でも学校の宿題をこなしたという

日本卓球界に現れた若き超天才。中学2年生の張本智和(14歳)が大記録を打ち立てた。8月25日のチェコ・オープン男子シングルス決勝戦で、元世界ランキング1位の“ドイツ卓球界の英雄”ティモ・ボルを下し、史上最年少でのワールドツアー優勝を果たしたのだ。

ここ1年の張本の活躍は目覚ましい。昨年12月の南アフリカ世界ジュニア卓球選手権を大会史上最年少で制したかと思えば、今年6月にドイツで行なわれた世界卓球では、2回戦で世界ランク6位の水谷隼を破り、ベスト8にまで駒を進めた。

世界各紙が「奇跡の少年」「一世紀にひとりの才能」とまで絶賛する張本の実力について、某テレビ局のスポーツ担当者もこう太鼓判を押す。

「最大の武器は天才的なバックハンド。技が多彩かつ非常に正確で、さまざまな回転の球を打てるんです。張本は今年から全日本代表チームに参加しているのですが、昨夏の時点で『張本が入ってきたらやばい(=自分の居場所がなくなる)。あいつはレベルが違う』と話す選手もいたほど。代表クラスの選手から見ても彼の実力は異常なんです」

そんな天才・張本の家庭はいわゆる卓球一家。母・張凌(リン)さんは元中国代表選手で、父・宇(ゆ)さんはジュニア日本代表チームにサポートスタッフとして帯同している。となれば、かつての福原愛のように幼少期から親子でスパルタ練習を重ねてきた…というストーリーをつい想像してしまうが、実際にはまったくそんなことはないという。スポーツライターの城島充(みつる)氏は、張本の幼少期のエピソードをこう語る。

「とても驚いたのですが、宇さんを取材した際に『小学校を卒業するまでは、一日2時間以上の練習をさせたことがなかった』と話していました。卓球は練習量が重要なスポーツで、一日6時間の練習を10年ほどこなさなければ、ひと通りの技術を習得することができないといわれます。

幼少期から頭角を現していた息子を見て、宇さんはもっと練習させたほうがいいと思ったそうですが、凌さんが『勉強を頑張ってほしいから』とそれを許さなかったといいます。いずれにせよ、本格的な長時間練習を始めたのは小学校を卒業し、東京のJOCエリートアカデミーに入った昨年4月からですから、本当に底が知れませんよ」

そんな張本の今後の目標は、年内の世界ランクトップ10入りと、2020年東京五輪での金メダル獲得だ。

「これからは研究もされて、勝つためのハードルはどんどん上がっていくと思います。ただ、張本は課題に対処するスピードがとても速い。今年の初め頃に弱点とされていた、フォアハンドのパワー不足もすでに克服しつつあります。研究されればされるほど、その壁を乗り越えて強くなっていくでしょうね」(城島氏)

東京五輪決勝の大舞台で「チョレイ」の雄たけびを聞かせてくれ!

(写真/時事通信社)