ホンダ モンキー(50cc) 今年で生誕50年。限定500台の「50周年スペシャル」モデルには、4万5333通の応募があった

日本のバイク業界が、大変なことになっている。ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキの四大メーカーのカタログを彩ってきた看板モデル、ロングセラーモデルが、1000ccオーバーから原付まで、排気量を問わず続々と生産終了しているのだ。

なぜこのような事態が起こったのか。バイク雑誌『タンデムスタイル』(クレタパブリッシング)の谷田貝洋暁(やたがい・ひろあき)編集長が語る。

「2015年に施行された『平成28年排ガス規制』の現行車への適用が、今年9月1日から始まりました。そのため、同規制の基準を満たせないモデルが、昨年あたりから少しずつ生産終了となっていたのですが、9月1日の規制適用開始を境に、各社が新たな生産終了モデルをどっと発表したのです」

だったらどのモデルも基準をクリアした改良版を出せばいいんじゃないの? ユーザー側はそう考えがちだが、ことはそう簡単ではない。今回の規制は、従来のものに比べてかなり厳格化され、例えば排ガスの中の有害物質については、一酸化炭素なら約5割、炭化水素なら約3割、窒素酸化物なら約6割、削減する必要がある。

さらには、燃料タンク内などで気化した燃料蒸発ガスの大気中への排出が基準値を超えてはならなくなり、故障を運転者に知らせるための車載式故障診断装置(OBD)も義務づけられた。これらの基準を満たすには当然、新たなパーツの追加や各部の設計変更を強いられる。

「こうした点をすべてクリアするとなると対応分のコストとして、モデルによっては10万円以上値上げされるでしょう。となるとメーカーとしては、そこまで高くなっても果たしてユーザーが今までのように買ってくれるのかという、冷徹な判断を迫られるわけです」(谷田貝氏)

ましてや近年あまり販売が振るわなかったモデルであれば、今回の規制を機に廃版にしてしまおうとメーカーが考えても不思議はない。

「また、クラシックでシンプルな外観や構造が売りのモデルの場合、規制に通るためゴチャゴチャと部品を追加してしまうと、魅力が損なわれてしまいます。あるいはホンダのモンキーのように、小さな車体にぎっしりパーツを詰め込んでいるモデルは、手を加えようにもスペース的にもう余裕がない」(谷田貝氏)

これらの理由で、熱心なバイクファンでなくても名前を知っていたり、よく街中で見かけたりしていたモデルまでが、歴史に幕を下ろすことになったのである。

◆『週刊プレイボーイ』39・40合併号「さらば、生産終了の国産名作バイクたち!!」では、新排ガス規制で姿を消している国内バイクメーカーの看板モデルを一挙紹介。そちらもお読みください!