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常に一本を狙う日本柔道界の若き“象徴”──阿部一二三はどこまで強くなるのか?

[2017年09月14日]

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世界選手権の決勝を、袖釣り込み腰による一本勝ちで優勝を決めた阿部。大会後に「目標は東京五輪の金メダル」と宣言するなど、すでに先を見据えている

9月3日までハンガリーのブダペストで開催されていた世界柔道選手権。2020年の東京五輪への出発点となるこの大会で、男子66kg級の阿部一二三(ひふみ・日体大2年)が、初出場にして金メダルを獲得した。

早くから柔道関係者の間で“逸材”と評価されてきた阿部が、その名を全国に広めたのは3年前のこと。11月の講道館杯で、高校2年生として史上初の優勝を果たすと、わずか1ヵ月後のグランドスラム東京を最年少の17歳3ヵ月で制した。

その準決勝は、世界選手権3連覇を果たしている海老沼匡(まさし)を圧倒しての優勢勝ちで、自然とリオデジャネイロ五輪出場を期待する声が大きくなった。

しかし、相手に研究され始めたことで勝ちきれない試合が増え、15年の講道館杯は3位に終わる。代表選考に重要なグランドスラム東京に出場できず、翌春の欧州遠征にも選ばれなかったことから五輪出場は絶望的となった。

大きな目標を失うことになったが、阿部はその悔しさをバネに大きく成長する。昨年4月の選抜体重別選手権の準決勝で、リオ五輪代表に内定していた海老沼を相手に今度は一本勝ちを収めた。すでに代表選考が終わった後のことだったが、その見直しが議論されるほどの異例の事態に発展した。

阿部の強さを支えているのは、逆境を力に変える強靱なメンタルはもちろん、幼い頃から父親とのトレーニングで鍛えあげた体幹にある。本人も「それが今の柔道の土台になっている」と話すとおり、どんな体勢からも相手を持ち上げられるよう意識してきた。

得意技である背負い投げは、五輪3連覇を成し遂げた野村忠宏氏を参考にした。力に頼らず、より効果的に相手を投げることを徹底したことが、袖釣り込み腰や体落としといった別の投げ技の強化につながっているという。

常に一本を狙う柔道を志してきた阿部は、今年1月からのルール改正にもすぐさま順応する。男子の試合時間は5分から4分になり、さらに“有効”が廃止された。ポイントになるのは“技あり”と“一本”のみで、技あり2回でも合わせ技一本にはならない。

そんな一本を重視する新ルールに変わったばかりの、2月に行なわれたグランドスラムパリ大会を制し、世界選手権の最終選考会だった4月の選抜体重別ではオール一本勝ちで頂点へ駆け上がった。今回の世界選手権で4個の金メダルを獲得した日本男子は、チーム全体での対策が実を結んだといえるが、6試合で5試合を一本勝ちした阿部は、その象徴的存在だった。

それでも、「今回は80%。研究されてもその上をいく選手にならなければいけない」と、阿部はさらなる高みを目指している。かつて、投げ技を封じられた経験から、投げ技を警戒する相手には足技でポイントを奪う対応も見せた。さらに、日体大に入学してからは寝技もみっちりと練習を積んでおり、準決勝の袈裟(けさ)固めでの勝利につながっている。

今大会では披露されなかったが、本来の組み手とは逆の左の一本背負いや袖釣り込み腰も磨いている最中だという。東京五輪に向け、阿部がどれだけ進化を遂げるのか、今から楽しみでならない。

(取材・文/折山淑美 写真/中西祐介[アフロスポーツ])


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