日産「リーフ」。航続距離400km、バッテリー容量40kWh、価格315万360円~。デザインを一新させ、航続距離が初代リーフの初期型と比べると倍に! 来年には、さらにバッテリー容量の大きいモデルが発売予定

世界初の量産電気自動車(以下、EV)として、2010年にデビューした日産リーフが7年ぶりにフルモデルチェンジ!

エンジン車からEVへの転換が世界規模で急速に進むかに見える今、日本を代表する最新EVの出来栄えはどうなのか? EV事情に精通するふたりの自動車評論家が本音で語る!

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日本では日産(と日産傘下の三菱)以外の自動車メーカーはいまだEVに「半信半疑」としか見えないのに、リーフはすでに2代目。まさに独走。あらためて考えると、これはスゴイことである。

累計30万台弱を売り上げた初代リーフは世界一売れたEVだ。ただ、発表時にゴーン社長(当時)が「16年度までにルノーと合わせて累計150万台のEVを売る!」とブチ上げたことを考えると、寂しい気がするのも事実。当時の日産は、リーフを年間20万台、16年度末までに累計100万台以上を世界中で売ろうともくろんでいたのだ。

そんなリーフについて、世界の自動車産業に詳しいジャーナリストの桃田健史(けんじ)氏は厳しい見立てをする。

「初代リーフは予想をはるかに下回る台数しか売れませんでした。普通の新型車の開発投資は100億円単位ですが、初代リーフに日産は約5000億円を投資したともいわれています。そんな社運をかけた初代リーフが約7年間で30万台程度では、まったく投資分を回収することさえできていないはず。それに今回のリーフは新型といっても、かなりの部分が初代の改良型でしかない。新型リーフは、いわば初代の名残のようなものでしょう」

■航続距離問題は大容量モデルで解決

ただその一方で、新型リーフには「実需を巻き起こす可能性がある」と語るのは、自動車評論家の国沢光宏氏。国沢氏は初代リーフを2台(+トヨタ・ミライも1台)購入しているEV通である。

「新型リーフは従来の24~30kWhより大きな40kWhのバッテリーを積んでいて、来年にはさらに大容量の60kwhモデルも出ます。

今回の40kWhの航続距離はカタログ値(JC08モード)で400kmですが、リーフに乗り続けてきた私の感覚でいえば1kWh当たりの航続距離は約7km。40kWhだと新品時で280kmくらいでしょう」(国沢氏)

ガソリンスタンドに行かない生活は一度味わうと戻れません

初代リーフのバッテリー容量は当初24kWhだった。

「初期リーフは実用車としてはてんでダメ(笑)。バッテリーが劣化した今では、頑張っても100kmに届かず、ヒーターを入れると60kmくらい。『電欠』が怖くて使えません」(国沢氏)

やはりバッテリーは劣化する。EVでは航続距離とともに、そこにも不安がある。

「EVのバッテリーは最初は劣化して容量が減っていきますが、ある程度まで落ちると安定します。私の経験では、だいたい新品時の75%くらいまで劣化すると、もうあまり落ちません。ですから、新車時から75%まで落ちた航続距離でも“使えるレベル”にあればEVは実用品になるということです。

そう考えると、40kWhの劣化時の航続距離は200km強という計算になりますが、それでも実用車としては微妙なところ。でも来年に出る60kWhなら、航続距離は新車時で420km、劣化しても300km以上になるでしょう。一度に300km走るなんてマレですから、もはや航続距離問題は解決するといっていい。

それに、リチウムイオンバッテリーは約1000回充放電が可能といわれていますから、バッテリー交換しなくても300km×1000回で30万km走れます。これならバッテリーが使えなくなる前に、車体の寿命のほうが先にくる。もっと言うと、バッテリーが大きくなると実際には“浅い”ところで充放電を繰り返すのでバッテリーはさらに劣化しにくい」(国沢氏)

続けて国沢氏は、自らの実体験を交えて新型リーフの可能性について語る。

「航続距離の心配がなくなれば、EVは本当に便利な乗り物です。何よりガソリンスタンドに行かない生活は一度味わうと戻れません。

新型リーフは初代よりパワフルになって、もともと速くて気持ち良かった走りも、さらに良くなりました。ボディ構造は基本的に初代のままですが、そもそも初代リーフは日産が社運をかけたクルマ。“万が一にもバッテリー事故は起こすな!”と、ボディは驚くほどしっかり造ってあって、ラリー参戦を含めてさんざん使い倒した私のリーフも、まだまだシャキッとしていますから」

『週刊プレイボーイ』41号(9月25日発売)「日産『新型リーフ』は世界EV戦争を勝ち抜けるか?」では、バッテリーの劣化や下取り価格の問題など新型リーフの課題に迫る。そちらもお読みください!

(取材・文/佐野弘宗)