中村剛也を師と仰ぐ“おかわり2世”こと埼玉西武ライオンズの山川穂高

やーまかわ やーまかわ やーまかーわ ほーたか

メットライフドームに響き渡る山彦(やまびこ)のごとき声援に乗って、グシャリと放たれたエゲツない弾道のホームランが飛んでいく。2017年後半戦。埼玉西武ライオンズの4年目、沖縄出身の大砲・山川穂高(ほたか)がついにその実力を発揮した。

ルーキーだった14年、西武第二球場の2軍戦で見た山川は笑顔と愛嬌(あいきょう)とパワーにあふれ、エラーをも笑いに変えて球場全体を明るくするような華を持つ選手だった。だが、チームの主砲・中村剛也(たけや)を師と仰ぐ“おかわり2世”は、2軍で2度のホームラン王を獲とるも、好不調の大きすぎる波に翻弄(ほんろう)された。苦悩と葛藤と愛するコーラを飲み干しながら、もがいてもがいてたどり着いた境地。新時代の大砲が思いを語った。

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―夏以降、すさまじい活躍。そして、球界でも屈指のすさまじい打球を飛ばしますね。

山川 よく辻(発彦)監督にも「おまえの打球は品がねえよ」って言われます(笑)。中村さんのホームランは下半身の回転で本当にキレイにアーチを描きますし、品があるんですよ。僕は手首でガシーン。でも、それでいいのかなって。

―バッティングフォームも以前は中村選手にうりふたつでしたが、昨年途中から完全に捨てましたよね。

山川 中村さんのことは学生時代からずっと好きで、追いかけてきました。打席に入る前のこういう(軽いモノマネ)ところからマネして。ものすごい数の映像も見ました。でも、今はわかるんですけど、僕とはまったくと言っていいほど違う。いくらマネしても、体の使い方が根本的に違うんです(下半身の開きの違いのモノマネ)。

ずっと追いかけてきたものなので、やめるのは勇気がいりました。ただ、このままじゃ打てない時に「中村さんのマネをしているから」と、言い訳にしてしまう。それがイヤで、思い切って変えることにしたんです。

―モノマネ、上手ですね。

山川 (ニッコリ笑って)中村さんだけです。

―今ではその中村選手をはじめ、浅村栄斗(ひでと)、メヒア、森友哉(ともや)…と、実力派の長距離砲がひしめく西武打線で4番を任されています。

山川 最初に4番を打った時は、中村さんがファームにいたので何も気にしませんでした。でも、今はフルメンバーで4番。光栄だし、めちゃくちゃ意識します。シーズン通じて4番を勝ち取ったわけではないですけど、「毎試合、4番を勝ち取る」というイメージで臨んでいます。

5番、6番だと気持ちは楽ですけど、正直悔しい。4番は厳しい攻め方もされますし、「打てないと負ける」というファンの方からの期待と重圧もあります。そんな中で毎日戦い、「明日の4番」を自分の力で勝ち取れている。それが自信になってきています。

「毎試合、4番を勝ち取る」というイメージで臨んでいます

―8月は打率.326、9本塁打、28打点と大活躍。打撃6部門でリーグトップとなり初の月間MVP、初の4番打者、そして9日には結婚もされて、盆と正月とエイサー祭りが全部来たような1ヵ月でした。

山川 気持ちの面では、やっぱり結婚が一番大きいですね。これで成績が落ちるようでは奥さんに申し訳が立たない。奥さんのために頑張るという意識が生まれたのは、とてつもなく大きいことです。

―ホームランを打つとステーキがもらえるとか。

山川 夕飯のメニューに、ステーキがポンと追加されるんです。めちゃくちゃモチベーションになってます(笑)。

◆この続きは『週刊プレイボーイ』42号にて掲載! また、21年の現役生活に幕を閉じた千葉ロッテマリーンズ・井口資仁も特集、そちらもお読みください!

山川穂高(やまかわ・ほたか)1991年生まれ、沖縄県那覇市出身。右投げ右打ち、身長176cm、体重100kg、実は俊足。守備位置は主に一塁。沖縄県立中部商業高校から岩手県・富士大学を経て、2013年ドラフト2位で埼玉西武に入団。ルーキーイヤーの14年と昨年にイースタン・リーグ本塁打王。昨年の後半戦では1軍で頭角を現し、出場49試合で14本塁打。今年も春先は出遅れたものの、7月に1軍再昇格すると、猛打爆発でチームの2位浮上に貢献。特技は書道(8段)と独学で覚えたピアノ

(取材・文/村瀬秀信 撮影/本田雄士)