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『小島慶子 気になるあのヒト』──ノーベル文学賞作家・カズオ・イシグロさんの作品が投げかける答えのない問い──「忘れる」ことは救いか

[2017年10月18日]

読み終えてしばし自分の記憶をあれこれたどってしまいました

日系英国人の作家カズオ・イシグロ氏が今年のノーベル文学賞を受賞。受賞後のコメントでは交流が深い村上春樹氏の名も挙げていた。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

* * *

ノーベル文学賞の受賞が決まった英国人作家、カズオ・イシグロさん。長崎に生まれ、5歳のときに海洋学者の父親の仕事の都合で一家でイギリスに移住。イギリスで最も権威のある文学賞であるブッカー賞を受賞した『日の名残り』はアンソニー・ホプキンス主演で映画化され、日本でも『わたしを離さないで』がドラマ化されました。

最新作の『忘れられた巨人』はアーサー王亡き後のイギリスを舞台にしたファンタジーで、私が一番好きな作品。氏のテーマでもある記憶についての物語です。雌竜が吐き出す霧によって失われた記憶を取り戻そうとする老夫婦と騎士と少年の旅。夫婦は愛する息子の記憶をたどり、やがて思いがけない情景が蘇(よみがえ)る。人々から戦いの記憶を消していた霧が晴れたとき…。

読み終えて、しばし自分の記憶をあれこれたどってしまいました。忘れたままのほうがいいこともいっぱいある。でも、思い出せなくて、もどかしいことも。記憶だって単なる思い込みかも。

個人も国家も、受け入れ難い現実を忘れて生き延びようとすることがあります。それは正しいのか?という答えのない問いが残る、味わい深い作品です。

小島のひとり言
以前に見たアメリカの報道番組で「イシグロには日本人としての背景がある。幼い頃の部屋には、侍の甲冑が」と紹介された写真には、こどもの日の兜飾りらしきものが。日本ファンタジー強すぎ!

小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ、ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動する、日豪往復生活。近著に『ホライズン』(文藝春秋)、『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)など


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