“非常連組”は自分の立場を理解して、闘う意欲を見せていたと語るセルジオ越後氏

日本サッカー協会に謝らなければいけない。

ニュージーランド(NZ)戦、ハイチ戦が発表されたとき、僕はロシアW杯本大会に向けての強化試合の相手としてはレベル的に物足りないと指摘した(参照記事「スポンサー向けの単なるノルマ試合にしてはいけない」)。

それがどうだ。フタを開けてみれば、2試合とも接戦(NZに2-1、ハイチに3-3)。特にハイチ戦は、試合終了間際に同点に追いつき、引き分けに持ち込むのがやっと。プレーを見る限り、そんなに強い相手には思えなかったけど、日本もミスが多く“お付き合い”してしまった印象だ。

それでもスタンドからブーイングは聞こえてこないし、むしろハイチ相手に同点に追いついたときには拍手が起きて一番盛り上がっていた。僕の期待が大きすぎたと言われればそれまでだけど、終わってみればこの2試合のマッチメイクは協会のミスではなく、今の日本のレベルに合っていたと言うしかない。

ハリルホジッチ監督の采配も疑問だらけだった。「試合に出ていない選手にチャンスを与えたい」と言っていたけど、結局、GK中村、DF植田のふたりを使わなかった。中村はGKという特殊なポジションだから仕方ないかもしれないけど、植田は試すべきだった。同じCBの槙野を2試合フル出場させる必要はあったのかな。昌子と植田、鹿島のコンビを見たかったよ。

選手交代にしても、勝ちたいだけの采配。リードされると、これまでの主力を次から次へと投入するだけ。誰をどう生かして、どういうサッカーで得点を奪うのか、狙いや意図が見えづらかった。

この2連戦の前、メディアは「サバイバル」と煽(あお)っていたけど、選手によって温度差があったように思う。誰とは言わないけど、いつも代表に呼ばれている選手の中には「俺は大丈夫」と思っているのか、必死さの伝わらないプレーをする選手もいた。

闘う意欲を見せチャレンジしていた選手は…

逆に、杉本、小林、倉田、車屋といった“非常連組”は「ここで活躍しなければ、もうチャンスはない」という自分の立場を理解して、闘う意欲を見せていた。それぞれ空回りしていた部分もあったし、ベストメンバーがそろう時に先発を張れるかといえば難しいかもしれないけど、少なくともこの2連戦でチャレンジしていたよね。そこは評価したい。

なかでも目を引いたのは杉本だ。代表デビューとなった9月のW杯予選サウジアラビア戦では何もできず、今回のNZ戦でも結果を出したいという気持ちが強すぎて空回りしていた感じだったけど、ハイチ戦ではゴールを決め、ポストプレーも無難にこなしていた。

倉田の先制点も、クロスを上げた長友へ杉本がスルーパスを出したことで生まれた。ようやく代表でも自分の力を発揮できるようになってきた。大迫との交代時に「もっとやりたかった」という顔をしていたけど、僕も90分間見たかった。

ワントップとしては経験、実績ともに大迫に一日の長があるのは確か。特に、大迫はポストプレーがうまい。ボールがよく収まるので、周囲の選手もプレーしやすいんだ。でも、杉本は大迫よりもシュートへの積極性がある。得点のにおいを感じるんだ。タイプの異なるこのふたりをロシアW杯まで競わせたら面白いんじゃないかな。ブラジル、ベルギーと対戦する11月の欧州遠征にも連れていって、チャンスを与えてほしいね。

(構成/渡辺達也)