週プレNEWS TOP 連載コラム "本"人襲撃 日本の音楽シーンはむしろ活気づいている? バブル期から続く巨大音楽ビジネスの変革とは…

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日本の音楽シーンはむしろ活気づいている? バブル期から続く巨大音楽ビジネスの変革とは…

[2017年10月24日]

「メインテーマは『インターネットによる日本人のライフスタイルの激変』であり、『Jポップ』はサブテーマ。あくまで変化を説明する一例にすぎません」と語る烏賀陽弘道氏

過去20年で、日本ではCDの売り上げが3分の1に激減した。テレビなどマスメディアが国民的ヒットを生んできた従来の産業構造が、見る影もなくなりつつある。

だがジャーナリストで『「Jポップ」は死んだ』著者の烏賀陽(うがや)弘道氏は、産業構造の変革によって音楽は多様化し、現場はむしろ活気づいているという。日本各地の創作と表現の現場において、氏が見て聴いて感じたものとは一体なんなのか。

* * *

―「Jポップ」と聞くと、巨大な音楽産業の姿が浮かびますが、本書では愛知県の豊田大橋の下で開かれるフェスの人気の秘密や、東京のアナログシンセサイザーの見本市に見る若者の楽器演奏の趣向など、ミクロな観点からの切り口がとても新鮮でした。

烏賀陽 今回、この本を書くにあたって、まず「音楽が演奏されている場所に行く」「音楽を創り演奏しているクリエイターたちに会う」「彼らが居心地よく演奏する場所を訪ねる」といった「現場主義」を徹底したんです。レコード会社や有力プロデューサーから取材を始めて、「ヒットの公式」や「戦略」などと褒(ほ)める本や雑誌もあります。

が、そのような「トップダウン」の取材では今の音楽の本当の面白さは伝えきれないと思いました。私自身、16歳からずっとベースの演奏をしているので、ライブハウスなどの現場を見続けてきた。それに加えて、私の仕事は報道記者です。そこで培った現場・一次情報主義が、今の私の取材スタンスなんです。

―取材をされた現場の人の声は活気に満ちていて、たとえ無名であっても大いに興味を引かれました。

烏賀陽 12年前に岩波新書から『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業』という著書を出したときには、大手のレコード会社をもっと取り上げていたんですよ。当時は彼らが音楽産業の中心にいたからです。しかし今回はほとんど取り上げていません。今はインターネットがクリエイターとリスナーをダイレクトに結んでいます。レコード会社や販売店など「中間業者」が抜け落ちてしまった。

実はこの本のメインテーマは「インターネットによる日本人のライフスタイルの激変」です。「Jポップ」は、その一例、サブテーマにすぎません。私はJポップの衰退を良いとも悪いともジャッジしません。私が報告する事実を読んで、読者が判断してくれればいい。その意味でこの本は、10~20年後に読み返しても鑑賞に堪える「歴史の記録」になっていると思います。

―確かにインターネットの台頭が業界やリスナーに与えた衝撃は計り知れません。一方で、若者は「直接体験」にはお金を払うと指摘されていますね。

烏賀陽 現代を生きる人々はあまりに多くの複製物に取り囲まれていて、それが複製物であることすら忘れてしまっています。だからこそ、彼らは「実物」「一次情報」にすさまじく飢えている。野外フェス産業の急成長もそうした文脈で考えると理解しやすい。

私の友人は、夏に1ヵ月半かけてヨーロッパのEDM(Electronic Dance Music)系フェスを巡っています。EDMは制作段階からフルデジタルです。もちろんインターネットでいつでも聴ける。しかし彼女たちはそれに物足りなさを感じて「実物」を見に地球の裏側まで出かけます。


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