幻のカレーを求めて、カレー研究に勤しむマリーシャ

こんにちは! 季節の変わり目で、すっかり風邪っぴきの、旅人マリーシャです。しつこい咳に泣かされています。

そして併発しているのが旅の病。一度これにかかると厄介で、日本に帰国中はまるで発作的にどこかの国が恋しくなる。慢性化した、その病が悪化してくると、旅友のSNSを見ては誰かの旅に嫉妬してみたりする。

南米やタイで一緒だった旅友のレイコさんは今、インドにいた。「インドか…。あの絶品カレーが食べたいな…」。それは、西インドのゴアで出会った「チキンムグライ」いう名のカレーだった。

西インドのゴアで食べた幻のチキンムグライ

「ムグライ」というのは「ムガル帝国」を意味し、北インドの宮廷料理のこと。その特徴は、カシューナッツのペーストや、生クリーム、ヨーグルト、卵などの素材を使ったカレーで、宮廷料理だけあってリッチでまろやかなテイスト。

チキンに絡みついた甘味とコクのあるカレーに私は病みつきにになったのだが、日本ではチキンムグライというメニューを見たことがなく、幻の味となっていた。

「どうしてもあの味が食べたい…!」。そう思い始めるとその欲求は止まらず、北インド料理をうたっている店を探し出し、10軒くらいに片っ端から電話した。すると、面白いのは電話の先から返ってくる回答のこんな共通点だった。

日本人が電話に出るお店の多くからは「ウチでは扱ってません」と言われることが多く、なかなか見つからない。そしてインド人が電話に出るお店は、カタコトの日本語で「メニューニナイケドデキル」とか、中には「パターチキン、エビクリームカレート同ジ」とこじつけるツワモノもいる。

「バターチキンとは違うだろ!」と心でツッコミつつ、決して「ナイ」とは言わず、あるかもしれないと匂わすインドっぽさがなんだか微笑ましく懐かしく思った。

懐かしきゴアの街角

夢中で探す中、恵比寿の「ローカルインディア」というお店に「ポークムグライ」というメニューを見つけた。

ん? ポーク??? いきなり違うじゃん(笑)。けど、むしろ豚肉って珍しい。ムガル帝国はイスラーム王朝だったけれど、イスラム教といえば豚肉は不浄のものとして食べないし、ヒンズー教でも食べる習慣がない。これは絶対に食べてみたいが、果たして、どんなムグライが出てくるのだろう…?

人生初の“ポーク”ムグライに舌鼓!

ランチタイムに出向くと、優しい日本人女性に出迎えられ、店内は雨の日にも関わらず、お客さんでいっぱいだった。

そして人生初のポークムグライは、黄金色をしていて、まるで照明を浴びた女優のようにキラキラと輝きを放っており、思わず見とれてしまう。ついに口に運ぶと、肝心のお味は卵がふんわりとした口当たりで甘味があり、お肉が柔らかくてプリプリ~♪ 日本人の口に合うように調整されているのだろうか、ほんのり和の味を感じる。

ゴアで食べたものとは違うものだけど、ムグライのポイントとなる卵の混ざり具合の舌触りが似てるかな? 豚肉は意外だけれど(牛肉よりかはアリか・笑)、正直、かなり相性がよくて美味しい。また来ちゃうな、こりゃ。

ゴロゴロと大きな豚肉がいっぱいの黄金色に輝くポークムグライ

キッチンで働くのはデリー出身の方々でした。ランチタイムのお忙しい中、ダンニャバード(ありがとう)!

続いて見つけたのは、神谷町・虎ノ門にあるニルヴァナムというお店。土地柄か高級感のある雰囲気で、店内は広々としており、ニューデリー出身だという店員さんもベストをキチっと着て丁寧な接客をしてくれた。

メニューもそれに相応でドリンクからして美味しく、私の頼んだシナモンラッシーはスパイスとヨーグルトの甘味が絶妙に絡み合い、シルクのような滑らかさ。

いよいよメニューにあった「モグライチキン」を注文すると、まず漂う香りが只者ではない! 上品だけれども力強いスパイスの香りがする。また卵はポロポロではなくルーに溶け込んでいる様子で、香草やスパイスがそれぞれ主張がありながらもまとまっていてまろやか!

使っている素材などがよいのだろうか、これぞ宮廷料理だというような高級感のあるムグライに大満足。ゴアで食べたのはこんなに高級チックじゃないから別物だけど、ムガル帝国の皇妃になった気分でルンルンよ~♪

「モグライチキン」は高級店だけあって滑らかで上品なお味

ルンルン気分のムガル帝国の皇妃マリーシャです

ニューデリー出身の店員さん。セレブリティーな気分にさせてくれてダンニャバード!

本命!と思ったらネパール国旗が…

そして今度こそ本命!?…と、電話で「メニューニナイケドデキル」と答えてくれた上野・御徒町にある「カナ・カジャ」に向かった。

ところが、お店に入るなり目に飛び込んできたのはネパールの国旗! 電話で勝手にインド人と思った店主ダカルさんは、なんとネパール人だったのだ。しかしネパールは北インドと隣接しているし、彼はインドのムンバイで10年、韓国で4年、日本で9年もシェフを務め、アジア各国の食べ物を作ることができるという。

店主でベテランシェフのダカルさん。無理言ってムグライを作ってくれてダンニャバード

トムヤムクンスープなどバラエティ豊かなメニュー

メニューには各種のインドカレーとともに、モモを始めとしたネパール料理、なぜかタイ料理のトムヤムクンスープ、そして「にがうり玉子」という名でゴーヤチャンプルーまであった。

チキンムグライについて尋ねると「日本人にはこってりしすぎていてヘヴィーだからメニューには載せてない」という。なるほどね、それで日本ではあまり見かけなかったのか。

そんな中、わがままを言って今回特別に作ってもらうことに。登場したのは優しい黄色をしたチキンムグライ! パイスの効いたコクのあるナッツペーストのカレーの海に、大ぶりのチキンがゴロゴロ~♪ パクチーのトッピングも効いていて、そんなにヘヴィーに感じないし、むしろ食べやすい!

ゴアのものとは色からして異なるが、日本人経営じゃなくネパールの方がやっているからか、より旅をしていた頃を思い出す異国情緒ある味がした。礼儀正しいダカルさんのおもてなしに感動するとともに、ディナータイムなのにランチのようなセットメニューがあり、コスパも最強でした!

メニューにはないけれど特別に作ってもらったチキンムグライ。メニューに入れればいいのに

キッチンのみんなもネパールの方々でした!

こうして日本で食べたチキンムグライはどれも個性的で、ひとつとして同じものはなかった。共通点といえば黄色っぽい色であり、むしろゴアで食べた赤茶色のムグライが異色だったのかもしれない。

おそらく、日本にゴアで食べたあのチキンムグライはナイ(笑)!

しかし味に関しては、ナッツペーストと卵が入ることで近い感じがしたし、むしろゴアで食べたものより美味しかったかも。それを確かめるためにもう一度インドに行きたいと思う反面、日本でこれだけ美味しいムグライがあるのなら、もう行く必要はないかとも思った。

さて、スパイスで元気いっぱいになった私は、次は中央アジアを旅したいと思います! 今はビザを取ったり着々と準備中。少しお休みしますが、皆さん、また1ヵ月後に会いましょう~!

【This week’s BLUE】スパイスの効いた食後のチャイもまた絶品!(カナ・カジャにて)

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第163回「シルクロードの旅、開始! 美しき北京と中国人のマイボトル文化の謎」

 

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】