元お笑いコンビ「カリカ」、ピン芸人・マンボウやしろとして活躍。脚本・演出家の家城啓之さん

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回、女優・グラドルの片山萌美さんからご紹介いただいた第47回のゲストは脚本・演出家の家城啓之(やしろ・ひろゆき)さん。

元お笑いコンビ「カリカ」からピン芸人・マンボウやしろとして活躍、吉本の“ブサイク”芸人ランキングで3年連続1位となるなど異形キャラとしても知られるが、昨年7月に突然、引退。現在は舞台やコントを中心に脚本・演出の肩書きに専念する。

その経緯やお笑い芸人をめざした動機など20年のキャリアを振り返ってもらい、前回は実はモテていた?自身の恋愛事情まで話は広がったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―独特のオーラだったり醸(かも)し出してる何者かみたいなアングラ感が、芸大とか文化系女子を引き寄せてるのかと…。

家城 いや、でも本当に…なんですかね、もう歳なのかな…。なんにも無いんですよ、そういう気持ちが。服買うのも何年も買ってないですし、どこ出るにもなんにも気にしなくなって…。

―それは以前、噂になった超人気アイドルグループのメンバーとのね…あれに懲(こ)りて面倒になったとかは?

家城 それもないですね(笑)。もちろん、僕もモテたいってどっかで思ってたんですけど、仮に努力をすることで今よりも10%モテたら、10%楽しい人生かっていったら、10%リスクが高い可能性もあるなと思って。

―そのリスクまで想像してしまう?

家城 こっから先、死ぬまでに結婚する人がひとりいればいいかって思う反面、例えばキレイな奥さんってことは、職場とかで誘われてる確率が上がるって考えた時に、もう吊り橋みたいな生活じゃないですか(笑)。だから、結婚したらもう本当に黒頭巾で歩いてもらってぐらいじゃないと…。

―そこまで考えちゃってますか(笑)。イスラムの女性みたいな。

家城 考えてます。なんか、そういうのをすごいいろんなことで思うんですよね。カッコつけではなく、お金欲しくて仕事してたんじゃないはずなのに…その覚悟だって何年もかけてしたはずなのに、今思ってるのが僕、目の前に1億円置かれたら、うんち食うかもしれないんですよ。

―ええっと…(笑)。

家城 あんなに頑張って思考を決めたはずなのに、現ナマを目の前に見せられたら食うかもしれんって思った時に、自分が決めて生きているルールと別の枠に誘惑っていうのがあって。世の中には考えられないほどの誘惑が落ちてるんで、それをなるべくこっちに誘発しないようにすることが大事だなって。

―結婚の話からだいぶシュールな…そういう妄想を普段楽しんでるのもあるんでしょうか。それも舞台の脚本ネタになってたり?

家城 ははは(笑)。そういう登場人物はいます。そういう感じです、話作ってる時っていつも…。

―誘惑星人とかってね、惑星みたいな顔してる人間が次々出てくる話なんてありじゃないですか?(笑)

家城 誘惑星(笑)。そんなのが出てくるシュールな舞台とか、はい。でも、たぶんそういうところから話作ったりしてるのはそうですね。だから喋ってて今、興奮してるんですけど…その興奮状態がひとり、布団の中で行なわれているのがずっと楽しいんですよ。

―そういう時間が今は一番幸せだったり? 女のコと付き合うのもいろいろ経験していくと、どんどん求めるハードルが高くなってしんどいですしね。

家城 ありますね。女のコとデートしたり結婚したりっていうのは、もうこの先の人生でひとりいるんであれば、その人とは死ぬまで楽しみたいってだけです、はい(笑)。

「その時、泣きそうになったんです」

―なんか、それもちょっと蛭子(能収・えびすよしかず)さん的ですけど(笑)。

家城 あ、蛭子さんもそうなんですね。

―亡くなった最初の奥さんは初めてやらせてくれた女性で。結婚して毎日タダでやらせてくれるなんて、こんなありがたい女はいないって(笑)。

家城 ははははは(笑)。

―でも、ずっと手を繋いで寝てたのに、亡くなってから隣に寄り添って寝てくれる人がいないのが淋しくて、夜ずっと涙を流していたという…。

家城 なんか、男の勝手な感じもしますけど…ありがたいってちゃんと思えて、それは夫婦のいい形ですね。僕、動物同士も寄りかかってたほうがよく寝れるっていう話を聞いて、その時、泣きそうになったんですよ。しばらく寄りかかってないなとか思って。

―(笑)そういう寂しさはあるワケですね。

家城 ありますね。家帰って、冬は特にフローリングが冷たいなとか。でも、その寂しいってのも、いろんな女のコと遊びながら彼女欲しいなって言ってるヤツと、彼女いなくても真面目に生活して、彼女できねえかなって思ってる人だったら、できる彼女が全然違うタイプになりそうだなと。

なんか、仕事も準備が大事だと思うんですけど、やっぱそういう待ち方じゃないかって、なるべく遊ばないで誠実に待ってようとは思ってますね(笑)。

―その境地に達した今の年齢なんですね。

家城 たまに風俗とか行きたいなって、それはいいよなって自分で風俗有りにしてますけど(笑)。なんか、だいぶ拗(ねじ)れてるというか、ルール決めるのがただただ好きなだけなんですかね。

―ちなみに、南海キャンディーズの山里亮太さんもゲストでお話したんですけど、どんどん闇が深くなってるらしく。売れて有名になったらなったで、寄ってくる女はみんな金目当てでしかないって…。

家城 ははは(笑)。本当に人を信用してないですよね。あんなに才能があって活躍して、お金持ってて不幸ってどういうことなんですか(笑)。本当に疑心暗鬼なんですよね。

でも自分の中で改革しようと思ったらできるんでしょうけど、たぶん人を信じたら自分の芸の速度落ちるとか、どっかでわかって引き返せないってのもあるからな…。

―それで山ちゃんは、だったら風俗でいいやって思いきや、今度はそいつらになんかネタを売られるんじゃ…って、また疑心暗鬼になってるそうです(笑)。

家城 終わりですね(笑)。だから、もう僕、顔も全然売れたいとも思わないですし。

―自分が役者として出るということも考えてない?

家城 出て楽しそうだったらありですけど、自分が演出して、いろんな役者さんとか芸人見て「あ、この人、スゴい達者だな」とか思うと、自分は得意技はあっても演者としてはそんな上手くないなと思った時期があって。

―それこそピンになった時も、その個性でオファーは多かったはずでは?

家城 ちょっとやらせていただきました。その時は自分がタレントとして知名度上げるためにも、ドラマとか出たら得だなと思ってましたけど。もう今は全く知名度ないほうが…本当に書くほうで名前が世に出てくれたらいいなと思いますし、タレントとしてはもう全く…はい。

「風俗の話も聞きたいです(笑)」

―自分が蜷川(幸雄)さんみたいなカリスマ演出家になるのとも違う? 芸人仲間も家城さんの舞台に多数出演してますが、コンビをやってた時の延長みたいな感じで、ただ一緒に作り上げていくのが楽しいとか。

家城 そうですね。物語の部分とかはやっぱり僕が一番理解してますけど、笑いの部分は皆好きにやってもらったり、アイデア出してもらったりとか。お芝居やるのは役者さんに一応全部聞いて作ってるのはあります。

―あとはキャスティングとかですかね? 自分の好きにできるのは。

家城 そう、だから『あまちゃん』なんか宮藤官九郎さんが大人計画の人いっぱい出したじゃないですか。で、僕らダウンタウンさんとかウンナンさん、とんねるずさんなんかを見て育った世代は、自分たちが売れて仲良い後輩をコント番組に出すっていう理想型があったんですよ。それが『あまちゃん』で「あ、ドラマ界でもこれできるんだ」って改めて知って、結構、衝撃的だったというか。

―売れっ子になれば、自分の引きで(笑)。

家城 自分が頑張れば、例えば「犬の心」って後輩とかいるんですけど、舞台一緒にやってたメンバーをいつかドラマに呼べたりするんじゃねえかって…。自分のためにっていうと、もうちょっと照れ臭い歳なんで、後輩のためだったら頑張れる気がするというか、やり甲斐ですかね。

―三谷幸喜さんもそうですよね。この役者がすごい面白いとか魅力あるんだって使ってた人が、どんどんあちこちで起用されていって。

家城 はい。僕の舞台でも昔から出てくれてる方とかいて「面白いから出てあげるよ」って、そういう人には恩返ししたい気持ちがありますね。もっと活躍の場をっていうか…偉そうですけど、それは思います。

―なんか、芸人の肩書きを下ろして、どんどん楽しそうじゃないですか?

家城 楽しいですね(笑)。これ、ちょっと先の話なんですけど…もうパソコンとかネットがあることで打ち合わせも離れてできるじゃないですか? 原稿も台本も送れるし、僕、演出家もちょっとずつやめて、ゆくゆくは脚本だけで生活したいんです。

で、50代、60代は奥さんとふたりでタイに住んで、タイから原稿送って円を稼いでバーツで暮らすっていう、それをしたいんです。物価が違うんで、こっちで100万円稼げば、向こうは900万ぐらいですから。

―ははは。どんだけタイが気に入ってるんですか(笑)。

家城 よく芸人仲間とも行ってるんですけど(笑)。でも本当に年中暖かいし、人がゆるい感じもいいんです。それとやっぱり単純に物価安い、ご飯おいしいのと…あと、どこ行っても割と音楽が流れてるじゃないですか。

ディスコ音楽だったり、なんかタイ独自の。で、スゴい衝撃的だったのが、中島みゆきがダンスリミックスされてたんですよ。それがクラブでガンガン流れてて、すっごいカッコいいんです。そういう、なんかふざけた感じとか、昼間から皆ビール飲んでるしみたいなの含めて、全部好きなんです。

―では今度、知り合いの元風俗誌編集長を紹介しますよ(笑)。その人もハマって、リタイア後は「タイに住む」って、もう何年も年に2、3回行って着々、下準備をしてるんで。

家城 うわ、それ直属の先輩ですよ、僕のイメージでは(笑)。自分の行きたい道のだいぶ先を歩いてる方ですね。

―60歳過ぎぐらいなんで、家城さんと20くらい離れてるかな…。では今度、逆にこちらがお友達を紹介します(笑)。

家城 はい、是非! ちょっと風俗の話も聞きたいです(笑)。

次回のお友達は後輩芸人の…!

―ははは。いや、こんな話で締めるのも初めてですが(笑)。でも、ほんと舞台のほうも楽しみにさせていただきます。また片山さんにも出演してもらったりは…? 彼女も熱望してましたよ。

家城 いや、もう出てくれないんじゃないかと思って。なんか、前回のですごい僕のほうが負い目を感じてることがあって…。今思うと、なんかもうちょっとやり方あったなとか。

彼女も今もう『ハロー張りネズミ』とか出て、活躍なさってるじゃないですか。事務所の方も、グラビアの人が舞台に出るんじゃなくて、ちゃんと女優としてやりたいですっていう感じだったんで。僕の中ではもう出てくれないもんだと…。

―いやいや、彼女自身も家城さんをリスペクトしてるようですし、じゃなきゃ、こうしてお友達で紹介してくれませんから。

家城 だからびっくりしたんですよ、呼んでいただけて。なんだったら恨まれてるんじゃねえか?ぐらいに思ってたんで。ありがたいです。じゃあちょっと、また僕も片山さん呼べるように頑張ります。

ほんとカワイい方ですしね。で、意外と男っぽい…。稽古でダメ出ししてる時とか、やっぱ胸に目がいっちゃうし、顔カワイくてスタイルいいんで、ちょっと稽古しづらいなと思ってたんですけど。日が経つにつれて、全然エロを使うコじゃないし、男っぽいんで全然やりやすい、話しやすいなって。

―そう、サバサバして男前な姉御風というか。山口智子さんの路線でいけるような、同性にもカッコいいと思われる女優さんになれるのではと。

家城 はいはい。声も小雪さんにすごい似てて、女優さんとして絶対良い声だから。見た目もいいし、本当にあとはもうどんどんいろんなことをやるだけというか…。僕も出てもらえるよう精進します。

―是非、またコラボを楽しみにしています。前向きな話で終われてよかった(笑)。で、次に紹介していただくお友達が平成ノブシコブシの吉村崇さんということですが。

家城 はい。歳をとったら昔のように毎日一緒に過ごそうな!って言っといてもらえますか。

―そこも先輩後輩の『火花』的ディープなネタがありそうな(笑)。了解です。では家城さんともまた神保町界隈でお会いできればと。本日はありがとうございました。

●語っていいとも! 第48回ゲスト・吉村崇「(渡辺)直美を乗せると、やっぱりタイヤの減りが早いですよ」

 

(撮影/塔下智士)

●家城啓之(やしろ・ひろゆき)1976年生まれ、千葉県出身。97年に林克治とお笑いコンビ「カリカ」を結成。2011年のコンビ解散後は「マンボウやしろ」の芸名でピン芸人となったが、16年7月には引退を発表。脚本家、演出家としてラジオパーソナリティでも活躍。著書に「ブサイク解放宣言 - 見た目にとらわれない生き方のススメ」がある。12月7日から紀伊國屋ホールにて「THE YASHIRO CONTE SHOW」第2弾『ReLOVE』公演がスタート。チケット絶賛発売中