Mary’s BloodのボーカルEYEさん(右)とギターSAKIさん。ガチなメタルをやっているとは思えないルックスも魅力だ

今、メタルが熱い!…かどうかはわからないが、常にコアなファンから熱烈な支持を受け、燃えたぎっている音楽ジャンル、それがメタルだ!

昨今流行りのシャレオツJポップなどアウト・オブ・眼中。血湧き肉躍るメタル道を突き進む女子たちがいる。日本メタル界のレジェンドSHOW-YAの妹分で、女性4人組バンドのMary’s Blood(メアリーズ・ブラッド)だ。

そのカリスマ性、パフォーマンスの迫力は図抜けているが、メタル女子にはメタル女子なりの苦労があるようで…。前編(メタル女子はつらいよ──ガチな若手実力派バンドMary’s Bloodの素顔)に続き、ボーカルのEYEさん、ギターのSAKIさんが語る!

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―ご家族はライブに来てくれたりもするんですか?

EYE 母親はローリング・ストーンズが好きで、私がメタルをやっていることに対しては「いいじゃん」みたいな感じです。父親は激しいものよりもフォークとかが好きなので、心配ではあったんですけど応援してくれてます。「うるさかった」というのがライブの感想の第一声でしたけど。

SAKI うちの親はMTV世代というか、昔のロックのビデオをコレクションしてて、その中にはハードロックもあるので割とオープンというか。でも、比べるところがデビカヴァ(デイヴィッド・カヴァデール=ディープ・パープルやホワイトスネイクに在籍したボーカリスト)だったりするんで、前のバンドの時はライブの途中で帰っちゃったりして。

「おまえんとこのボーカル、ヘタクソだな」とか言われて。18、19の女のコとデビカヴァを比べられても困ります(笑)。Mary’s Bloodのライブでは帰らないですけど。

EYE よかった…(笑)。

寺田恵子姐さんは「昔は女だけのロックバンドは世間に受け入れられず苦労した」と仰ってましたけど、そういった苦労は?

EYE 恵子さんたちの苦労に比べたら、苦労にならないと思います、マジで。恵子さんたちが道を切り拓いてくれたので、私たちはそれほど向かい風状態っていうわけでもないですね。

SAKI 「女子がメタルなんて」みたいなことを面と向かって言われることもなく。時代的にもガールズバンドが受け入れられやすいと思う。恵子さんたちはイベントに出るだけでも「女子バンドだろ」みたいに見下されたって話は聞きましたけど、今はそういうことはないので。

―今日はそんな恵子姐さんから、Mary’s Bloodに向けて色紙にメッセージを書いていただきました。

EYE え~、すごい! (読み上げて)「このステージは絶対無二のステージなり されば心身をあげてステージすべし」。

SAKI おお~、なんかちょっとプロレスっぽい。

このインタビュー前に、寺田恵子姐さんに書いていただいた色紙。達筆!

―(笑)。お好きな『エースをねらえ!』からの引用のようですが…。姐さんやSHOW-YAから学んだことは?

SAKI 学ぶことばっかりですよ。『NAONのYAON』では、あれだけの大きなイベントをひとりで頭から最後まで、リハもずっと見ているし。打ち上げでも、喋ってない人には自分から話しかけ、お酒が空いている人には注ぎに行き…。

EYE 他のメンバーさんもそうだけど、技術とかセンス以外の部分もスゴイよね。人としてでき上がってる。

SAKI 根性、根性、魂だよ。3月に秋田で一緒にやらせていただく機会があって、ステージ袖(そで)でずっと見ていたんですけど、音の出し方、まとまりが全然違う。気迫が他のバンドとは違うなって。

EYE アンテナの張り方が全然違うんですよ。演奏中はメンバー間で喋れないじゃないですか。でも、恵子さんはみんなのことをちゃんと見ている。その上でお客さんのこともちゃんと見ている。ここは盛り上げどころだっていうところではドラムのミッタン(角田美喜)さんが叩き方を変えたり、お客さんの集中力が途切れそうになった時は恵子さんが引っ張って空気を戻したり。自分たちはまだ、あのレベルには至ってないなと思って、すごく勉強になりましたね。

―真のエンターテイナーですね。

EYE 恵子さんは広いホールの一番後ろのお客さんまでちゃんと見てますから。まさに「心身をあげてステージすべし」ですね。

「変態みたいにマジマジと見ちゃったもん、恵子さんの筋肉を(笑)」

―姐さんはプロレスラーになっても成功したでしょうね。

SAKI ハハハッ! PVで神取(忍)さんと戦ってましたからね。

EYE 普通にハイキックかましてたよね(笑)。

―メタル女子は、常に全力投球が期待されますよね?

EYE 全力ですね。

―そのためには常日頃の鍛錬が欠かせないでしょう。技術を担保するのも鍛錬かと…。そういった日常はどうしているんですか?

EYE ダラダラしてますね。

―ええ!?

EYE お菓子食べながらダラダラしてます。

SAKI 練習はしますけどね。レッスンとか行くとイライラするんですよ。できない自分にイライラして、家に帰ってギターをベッドに放り投げたりします。で、ムシャクシャしてお菓子食べちゃったり。

ステージで全力を出し切るために日頃の鍛錬を欠かさない…と思いきや、「何もしてないです」とぶっちゃけるボーカルのEYEさん

―お菓子食べてもいいんですけど…ボーカルなんて特に体力が必要なんじゃないですか?

EYE う~ん、何もしてないです。これ、恵子さんに絶対怒られるな…(笑)。

―姐さんはジムで鍛えているそうですが…。

EYE 週に3回くらいやってますよね。怒られる~、これ!

―でも、EYEさんもすごい引き締まっているじゃないですか。

EYE 何もしてないからですよ。一応、気をつけてはいるんですよ。シャウトやハイトーンを出す時、喉だけで歌うと壊すんです。私は専門学校のボーカル科にいたので、発声の仕方とか、喉にいいもの悪いもの、食べ物から環境まで学んでいて、喉を維持するために何をしたらいいのかっていうのはわかってるので、最低限は気をつけているんですけど…最低限以上のことができない!

SAKI 恵子さん、普通の加圧トレでは効かなくなったから、もっとシンドイやつ始めたって言ってた。一番キツイ負荷でも足りなくなったって。

EYE 何してんの!? 恵子さんの胸筋を触らせてもらったことがあるんですけど、ヤバイです。ガチガチに鍛えるんじゃなくて、柔軟性もある。喉に筋肉をつけると硬くなってしまうので、肩や胸など周辺の筋肉を鍛えて、あとは腹筋背筋が大事になってくるんですけど、恵子さんは歌うにおいては理想的な肉体です。

もうアスリートですね。変態みたいにマジマジと見ちゃったもん、恵子さんの筋肉を(笑)。そんなお手本を見ておきながら、私は全然、筋トレしてない(笑)。

―姐さんは「酒とタバコは絶対やめない」と。だから、やってるんです。

EYE だから、やってる(笑)。本当にスゴイと思います。

―Mary’s Bloodの歌詞を見ると、宿命を背負って傷つきながら戦って、道を切り拓いていくみたいなメッセージの曲が多いと思うんですけど、それは自身を反映してる?

EYE それはあるかもしれないですね。曲ごとに主人公をイメージして作って、その人のことを歌っているんですけど、自分たちの置かれた状況と重なっているところは多いかもしれない。

メタルってジャンルはやっぱり「住みにくい」じゃないですか、ぶっちゃけ。街を歩いても聞こえてくるのはダンス系とか明るい曲で、そんなに重い曲は流れないから。住みにくいながらも、自分たちの意志を貫いていくっていうのが、曲の根底にあるかもしれないですね。

「昔は『宇宙征服』とか言ってましたよね」

慶応大卒の才女ながらオトボケな一面もあるギターのSAKIさん

―そのブレないところも「王道」だなって思いますよ! では最後に、Mary’s Bloodの野望は?

SAKI 昔は「宇宙征服」とか言ってましたよね。宇宙でライブとか。

EYE 日本制圧からの世界征服、銀河…なんだっけ、忘れちゃったな。

―忘れてるじゃないですか(笑)。

EYE 宇宙でライブできるかもしれないから、とりあえず火星か月の土地でも買っとくか。

―姐さんの夢は「ビルを建てること」ですから、その野望のほうがスケール大きいですね(笑)。メタルは「住みにくい」と仰ってましたけど、海外でも?

EYE 海外ではそんなことないと思いますよ。日本はちょっと頭がカタイというか、王道のコード進行があって、1分半でワンコーラス終わって…みたいな形が美しいとされている感じがあるけど、メタルってそこにハマらないんですよ。

でも海外の音楽にはそんなことは全くなくて、もっと自由。たぶん、どのジャンルも対等に共存しているんじゃないかな。だから、私たちは世界に出てパワーアップして、日本に戻ってくる…それが夢ですね。『FATE』っていうアルバムがヨーロッパで発売されたので、向こうでライブやりたいですね。英語勉強しないといけないな…。SAKIちゃんは喋れるんですけど。

―なんで喋れるように?

SAKI いや、なんとなく。

EYE SAKIちゃんは慶応大を出ているので。ライブの日に卒論書いてたよね。

SAKI 他のゼミの卒論は1万5千字とかなのに、うちのゼミは4万字だったんですよ。リハが終わっちゃ書き、ライブが終わっちゃ書き、やっと提出して、みんなに「おめでとう!」ってお祝いしてもらったんですが、留年しました。

―え、なんで!?

SAKI 単位を数え間違えてて、2単位足りなかったんです(笑)。卒業する気満々で袴(はかま)のレンタルも手配してたし、その時ちょうどアメリカツアーもあったので「卒業旅行代わり~」なんて言ってたんですけど、卒業できず、めっちゃ恥ずかしかった~。親にもめっちゃ怒られました。留年分の学費は払わないと言われて、自分で払いました。

―メタル女子はつらいよ(笑)。でも翌年卒業して、バンドに専念できたんですね?

SAKI はい。でも親には会社の内定は取れって言われて。父親が「おまえは人生を舐めているから、社会に認められる人間になったということを証明しろ」って(笑)。

―お父さん、デビカヴァと比較したり、なかなか厳しいですね(笑)。オチが留年の話になっちゃいましたけど、EYEさん、読者の皆さんに最後にひとこと!

EYE ツアーに遊びに来てください! 女性のみなさんもお待ちしてまーす!!

(取材・文/中込勇気 インタビュー撮影/本田雄士)

●Mary’s Blood(メアリーズ・ブラッド)2009年結成。2012年より現メンバー(ボーカルEYE、ギターSAKI、ベースRIO、ドラムスMARI)で活動。現在、ワンマンツアー『Raise the Flag Tour 2017』を全国展開。11/19(日)品川インターシティホールなど。11/25(土)『CLASSIC ROCK JAM 2017 & WORLD GUITAR GIRLS COLLECTION』出演や12/26(火)サポーターズクラブ限定ライブ『A Night at the KINEMA CLUB』開催も決定。詳細はオフィシャルHPにて