ドラフト後の会見で「やっとスタートラインに立てた」と語った清宮。日本ハムの育成システムがしっかりしているのは心強い

「自分を厳しく指導して成長させていただける球団に行きたい」

プロ志望宣言の際、そう語っていた清宮幸太郎。日本中が注目したドラフトでは、高校生としては史上最多タイの7球団競合の末、日本ハムが当たりクジを引き当てた。

将来のメジャー希望を公言し、ポスティング容認が入団時の条件になるとの見方もあったが、日本ハムならその問題もクリアされる。スポーツ紙デスクはこう言う。

「清宮にとって一番いい球団なのでは? 阪神や巨人ではマスコミに潰される危険性もありますし、何より日本ハムは提携するパドレスの育成システムを導入するなど、若手育成に定評がある。ドラフト前には『日本ハムが清宮側との面談をドタキャン』との報道もありましたが、実は栗山英樹監督は清宮の父・克幸氏と評論家時代から親交があり、日本ハムは非公式に接触済みだったようです」

ただ、もちろんこれでバラ色の未来が約束されたわけではない。名打撃コーチとして知られた野球評論家の伊勢孝夫氏が指摘する。

「確かに清宮君は素晴らしい素材ですが、技術的な課題がある。最も気になるのは膝、特に右膝の柔軟性が乏しいことです。今のフォームでもベルトあたりの高い球はホームランにできますが、低めのツーシームや鋭いカット系の変化球には柔らかく、それでいて強い膝の動きがないと対応できません。高校通算本塁打111本と実績は抜群ですが、現時点では“穴が大きい打者”でもあるんです」

そこで重要になるのが、清宮自身も言う「成長させてくれる環境」かどうかだ。

「この膝の柔軟性というのは教え方にもコツがあり、どの打撃コーチでも教えられるものではない。強いて言えば、清宮君と同じ右投げ左打ちの一流打者なら理解している感覚です。阪神前二軍監督の掛布雅之あたりが指導者なら面白かったのですが、さて、日本ハムのコーチがしっかり教えられるか…」

伊勢氏は言葉を濁しつつ、さらにこう続ける。

「忘れてはいけないのが、彼はまだプロで1本のホームランも打っておらず、ヒナにすらなっていない“金の卵”だということ。大きな夢を持つのは素晴らしいことですが、ポスティングを求めるならまず入ったチームで活躍し、貢献してから初めて口にするべきでしょう」

一方、受け入れる側の栗山監督は謙虚にこうコメント。「球界の宝を預かることになる。大事に育てなければと、うれしさより身の引き締まる思いです」

それにしても、同じく球界の宝といわれる大谷翔平はメジャー移籍が濃厚で、中田翔や増井浩俊も流出の可能性が囁(ささや)かれる日本ハム。ここで清宮を引き当てるとは、ホントに「持ってる」球団だ。

(写真/時事通信社)