来季、ホンダとタッグを組むトロロッソのチーム代表、トスト氏をパドックで直撃。96年にはラルフ・シューマッハのマネジャーとして来日。日本のレース界にも顔が広い

新生「マクラーレン・ホンダ」にとって3度目の、そして「最後」のF1日本GP(三重県鈴鹿サーキット、10月8日決勝)が終わった…。

その3週間前の9月15日、マクラーレンとホンダは今季限りでの契約解消を発表。マクラーレンは来季からルノーのパワーユニット(以下、PU)を搭載。一方のホンダはイタリアの中堅チーム「トロロッソ」と3年契約を結び、新たな挑戦を始める。

大失敗に終わったマクラーレン・ホンダの3年間とはなんだったのか? そして、トロロッソとの新コンビに「希望」はあるのか? 日本GPが開催されたスズカのパドックで、チーム関係者や外国人ジャーナリストを直撃した!

■トロロッソ代表はホンダの進化を確信

前編記事に続いて週プレの直撃インタビューに答えてくれたのは、来季からホンダとタッグを組む張本人、トロロッソのフランツ・トスト代表だ。

「なぜ、トロロッソはホンダと組むことを選んだのかって? それは我々が来季、ホンダが大きく進化すると信じているからだ。ホンダと組むことでトロロッソの今後にとってプラスになると確信していなければ、ホンダとの3年契約にサインすることなどなかったよ」

穏やかな口調でニッコリとほほえみながらこう答えてくれた。では、マクラーレンとの悲惨な3シーズンを見ているのに、なぜ心配にならないのか?

「それは今シーズン、特に後半戦にホンダの『着実な進化』を感じているからだ。確かにホンダは現在のF1の厳しさを過小評価し、F1復帰を間違った形でスタートさせた。その後は、時間との闘いのなかで負のスパイラルに陥りながら、もがき苦しんできた。F1の世界でも絶対にお金で買えないのが『時間』だからね(笑)。

だが、そうした苦労の成果が今、結果として目に見える部分以外でも少しずつ形になり始めている。少しずつ色づき始めた『果実』をほかのチームが待ちきれないのなら、それを我々が収穫しようと思ったわけさ。

もちろん、トロロッソはマクラーレンと比べればはるかに小規模なチームだが、チームの雰囲気はオープンで意思決定の判断も早い。F1では、よくチームの規模や予算の大きさがすべてを決めるかのように言われるが、もうひとつ大事なのが『効率的』にそれらの資産を生かす力だ。まさにそこがトロロッソの強みだと思っている」

トスト氏はそう胸を張る。

「それからホンダとのコミュニケーション面でも、我々はこれまでより良い関係を築けると確信している。私自身、以前はラルフ・シューマッハのマネジャーとして日本のレース界で1年を過ごした経験があるので『日本人独特のコミュニケーション』については、ある程度は理解しているつもりだしね。

例えば、彼らが『ハイ、ハイ』と言っても、それは決してイエスという意味じゃないとか、そういう微妙なニュアンスがわからないと日本人と一緒に仕事をするのは難しい(笑)。私の日本での経験をこの先、ホンダとのコミュニケーションにも生かしながら、1年後の鈴鹿で、我々がホンダをパートナーに選んだのは正しい判断だったと証明したいね」(トスト氏)

決勝レース前にマクラーレンのピットを訪れたホンダの八郷隆弘社長(右)。来季からのトロロッソへのエンジン供給、その胸中はいかに?

ペナルティの原因をつくったのもわれわれです

 

ペナルティで最後列スタートのアロンソは健闘するもポイント圏内にあと一歩届かず11位、バンドーンは14位という結果に終わった

■謙虚に一歩ずつ復活の歩みを!

マクラーレン・ホンダの「最後の鈴鹿」は、最後尾から追い上げたアロンソがポイント一歩手前の11位という結果に終わった。

「エンジン交換による35グリッド降格がなければポイント獲得を狙えるレースでしたが、そのペナルティの原因をつくったのも我々です」

レース後、ホンダF1の総責任者、長谷川祐介氏はそう悔しさをにじませた。

だが、依然として歯車は噛み合わないものの、トスト氏が指摘するとおり、ここ数戦、予選でも決勝でもようやく「入賞圏内」が現実的な目標として見えてきている。

もちろん、来季、新しいパートナーのトロロッソとこのまま順調に「進歩」を続けられる保証はないし、ホンダのPUもまだ課題は多いのも事実。それでも「F1撤退」をこうして土俵際でなんとか踏みとどまったのだから、この先は謙虚に一歩ずつトロロッソと「復活」に向けた歩みを見せてほしい。

もちろん、いきなり「優勝」なんて期待しちゃダメだろう。それどころか「表彰台」だって普通ならありえない。

でも、それがホンダの偽らざる現在地だ。まずはコンスタントに完走し、安定してポイント獲得を狙えるレベルを目指すことからしか「ホンダの復活」は始まらない。

(取材・文/川喜田 研 撮影/池之平昌信)

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