東京・両国国技館で3日間にわたり行なわれたフェラーリ創業70周年記念の「グローバル・セレブレーション=祝祭」

イタリアのスポーツカー・ブランド、フェラーリが今年で創業70周年を迎えた。

これを記念し、同社は70もの「グローバル・セレブレーション=祝祭」を世界各国で開催。そしてこのほど、日本にもその機会がやってきた! 10月12日~14日の3日間にわたって行なわれ、1日目は「フェラーリ・エキシビジョン」と題し、東京・両国国技館に稀少な歴代車両40台の展示とセレモニーを開催。

2日目以降は、一般オーナーが所有するフェラーリ70台が両国国技館から静岡、愛知を経由し、三重・伊勢までを走る「エクスクルーシブ・ラリー」が開催されたが、今回は週プレNEWSも馳せ参じた初日「フェラーリ・エキシビジョン」の熱気に染まった様子をリポート!

両国駅のクラシカルな駅舎を出ると、早速、目の前の広場には7台の新型モデルがお出迎え。芝浦や六本木のショールームでしか見られないような神々しい「812 スーパーファスト」も、なんとも珍しいカラーリングをまとって目の前に鎮座。石畳の上に置かれたダークグレーの「GTC4ルッソ」なんて、最高にジェントルじゃないか…。

だが、さらなる驚きはまだこの先にある。舞い上がりそうになる気持ちを抑えながら国技館の入り口へ。

フェラーリの現フラッグシップモデル。「スーパーファスト」とは、60年代に作られた「550・スーパーファスト」にちなむ。FRレイアウトにV12を積む、伝統的なスタイルだ 812 スーパーファスト

70周年だけに、当然ながらフェラーリの気合の入れ様もハンパではない。そこがもはや国技にまつわる神聖な場所であることを忘れさせるほど、雰囲気まで「フェラーリ一色」に染まっている。まず入口に並ぶのは、1961年の「250GT SWB」から、2002年の「エンツォ」までの同社を代表する稀少なモデルたち。もちろん、すべてが赤でマブシイ!

60年代初頭の250シリーズを代表する一台。「SWB」はショートホイールベースの意。当時は日本に輸入されなかったものの、同タイプが63年の「第1回日本グランプリ」に海外から持ち込まれ、出場した。日本の地を初めて踏んだフェラーリともいわれる 250GT SWB(1961)

今となっては、「フェラーリといえば赤」というイメージもすっかり定着しているが、かつて市販のフェラーリには、同社生誕の地・モデナ市の色でもある黄色が主に与えられていた。レースを戦い続けてきたフェラーリにとって、赤(=ロッソコルサ)は戦闘の色なのだ。

その他にも、会場の周囲にはこれまでに特別制作された、ファン垂涎(すいえん)の超希少モデル3台(「SP1」、「Sergio」、「J50」)や、70周年事業のひとつである「Taylor Made」(歴戦の名車に着想を得た70種類のカラーリング、全350台の特別車)のフェラーリ5台を展示。さらに気分を上げて、いよいよ国技館の中に入ると…。

70周年を記念して作られた「Taylor Made」ライン。手前の「#65 Plein Air Pleasure=オープンエアの喜び」は、488スパイダーをベースに、オープントップの走行と空の一体化を表現した

薄暗い会場の正面には、70周年のテーマである“Driven By Emotion(情熱に突き動かされて)”の文字が。そして、神聖な土俵の上には、これまた神聖な「ラ・フェラーリ アペルタ」が、真っ赤なヴェールと光に包まれ鎮座していた。70周年を記念して210台が限定生産された、「ラ・フェラーリ」のオープンモデルである。

土俵上のアペルタがヴェールを脱いだ!

アペルタは先々月、フェラーリのお膝元・マラネッロで開かれたチャリティ・オークションで10億円を優に超える落札額がついたことでも話題となった1台。800馬力を誇るV12エンジンと120kWのエレクトリック・モーターを搭載し、最高出力はナント963馬力!! フェラーリのF1におけるテクノロジーも存分に注ぎ込んだ、まさに同社史上最強・最速のマシン、いやバケモノなのだ…。そんな感動もやまぬまま、いよいよセレモニーがスタート!

幕開けは、和太鼓の演奏と呼び出しから。静けさの中に響き渡る打音がなんとも心地よい。そこに、70年の歴史を振り返る特別ムービーが流れる。マラネッロ市街を走り去るフェラーリ最初の“作品”125S(1947年)が、最新のアペルタに変貌する演出がニクイ!

続いて 土俵上のアペルタがヴェールを脱ぎ、お披露目だ。壇上にあがったフェラーリ・ジャパン&コリアのリノ・デパオリCEOは「日本の伝統的な国技を行なう神聖な場所で、このようなセレモニーができることを大変嬉しく思う」と気持ちを述べた。

土俵にあがるラ・フェラーリ アペルタ

インテリアパーツには、軽量カーボンとスエードがふんだんに奢られている

そしてこの日は、フェラーリ・極東&中東エリアを統括するディーター・クネヒテルCEOも登壇。同社の歴史、70周年事業への取り組みを紹介するとともに「フェラーリを手に入れるということは、ただ高級スポーツカーを入手するということではない。まさに、夢の一部を手にすることと同意なのです」と、ブランドロイヤリティを改めて強調した。

デパオリCEOは、以前に国技館で相撲を観戦したことを機に、“ここ”を会場にしようと決心したとか。土俵上のフォトセッションでは、元・大相撲行司の木村庄之介氏が登場。カメラを向ける多くの報道陣を前に、木村氏からふたりへ特製扇子が贈与され、セレモニーは幕を閉じた。

右からリオ・デパオリCEO、ディーター・クネヒテルCEO、木村庄之介氏。扇子には、「フェラーリ ドリブンバイ エモーション セレブレーション」の筆文字が

世界各国で記念すべきアニバーサリーを祝い、次の時代へと進むフェラーリ。今や自動車テクノロジーの変遷は、かつてIT化の波が訪れた時と同じくらいにアップデートが目まぐるしい。だが、そんな時代でありながらも、常に優雅な落ち着きと品を備える――そんな最新のフェラーリを手にできるのは、限られた顧客のみかもしれない。

だが、それ以外の世の多くの人々にも感動と興奮を与えてきた伝統あるブランドとして、芸術品ともいえる珠玉のモデルたちをこれからも世に送り出してゆく使命は大きいはずだ。普段、フェラーリではない小さなイタリア車に乗っている記者(入社1年目です!)だが、いつかは乗ってみたい!という憧れを今また覚えた。

最新鋭も良いけれど、横置きのV8+ウェーバーキャブレターが乾いた音を奏でる70年代後半の308GTSもいいなぁ、なんて妄想を膨らませながら…。フィオラバンティがデザインした、小ぶりでグラマラスなボディは、赤ではなく深みのあるシルバーで。「あぁ、自分もいつかはその“情熱に突き動かされて”みたい!」とホンキで思ったのであった。